都立高校の「地毛証明書」に関する調査結果について
★記者会見する(左から)とや英津子、池川友一、米倉春奈、原田あきらの各都議(2021.2.22)
★都立高校の「地毛証明書」に関する調査結果について
★資料1〜10
都立高校の「地毛証明書」に関する調査結果について
2021年2月22日
日本共産党東京都議会議員団
社会からみて明らかにおかしい校則や生徒心得、学校独自のルールである理不尽な校則が社会的に注目されています。
日本共産党都議団は、子どもの権利と人権を守る視点から、都立高校の校則改革を求めてきました。2020年3月に「都立高校における校則の全校調査結果について」を発表し、同月に予算特別委員会で行なった「ツーブロックはなぜダメなのか」という質問には大きな反響がありました。
同じ質疑で、人権尊重の立場から課題のある指導として「地毛証明書」(「地毛届」など他の呼び名もある)を取り上げました。都教育長は「提出は任意でございます」と答弁しましたが、私たちのところには事実上強制されているという声が寄せられています。
愛知県は、生まれ持った性質について証明を求めることは適切でないと「地毛証明書」の見直しをすすめ、多くの学校でなくなりました。佐賀県など他県でも見直しの動きが広がっています。人権尊重の理念と、生来の姿を証明させる「地毛証明書」は、任意であったとしても、相入れないと考えます。
以下、都立高校の「地毛証明書」についての調査結果を報告します。都立高校の校則が、人権が尊重され、子どもの意見を踏まえたものに改善されることを期待します。
【調査方法】
都立高校(全日制177校)の「地毛証明書やそれに類する書類、地毛証明について生徒・保護者に説明する書類」を、2020年8月に情報開示請求し、入手・分析ました。
【調査結果】
1、「地毛証明書」のある学校は79校、うち「任意」と明記されていたのは5校
(1)都立高校(全日制)177校中、頭髪に関する規定がある学校は150校(84.7%)でした。
(2)「地毛証明書」の提出を求めている学校は79校(全体の44.6%)で、79校のうち「任意」だと明確に記されていた学校は5校(6.3%)にすぎませんでした。
2、「地毛証明書」等に記載されている内容と問題点
(1)明らかに任意でないと判断されるものが多数
都教委は提出は任意だといいますが、明らかに任意でないと判断されるものが多数ありました。「任意」とあっても事実上強制していると判断されるものもありました。
そもそも任意であれば、後述のような、頭髪規定に違反したら地毛証明を無効とする、地毛証明書が許可制、色番号を登録させるなどの必要はなく、これらの学校もとうてい任意とは考えられません。
- 『カラースケール』5を超えている入学予定者は…入学式までに改善してきてください」「地毛届提出予定者は…入学式に提出してください」と、黒染めするか、地毛届を提出するかの二択しかない。(一方で、この学校は提出は「任意」と明記している。)【資料1】
- 後から申請する場合に、入学当初に申請しなかった理由を詳細に記入させる。【資料2】
(2)髪を加工した場合に地毛証明を無効とし、指導対象とするもの(22校)
地毛証明書の提出後に染髪やパーマなどの加工をした場合、地毛証明は無効とする学校が少なからずありました。無効となれば、黒染めにするなどの指導の対象となる可能性があります。都教委が、生来の髪については黒染めにさせる指導はしてはならないとしていることにも反しています。
- 「申請後、一度でも加工(染色や脱色、パーマなど)をしてしまった場合は、頭髪届そのものを失効し、以後は黒染等の頭髪指導の対象となりますので、ご理解の程よろしくお願いいたします。」【資料3】
- 「申請後、染毛、パーマ、ツーブロック等の加工が施された場合、この申請は無効となります」【資料4】
- 「地毛証明書発行後に、染髪行為や地毛が変色することがあった場合、証明書の効力が失効することに同意します。」
(3)生来の髪でいることが許可制や「お願い」になっているもの
生来の髪でいることは当然の権利であり、許可されたりお願いをしたりするものではありません。
- 「本届は現状頭髪が地毛状態であること生徒指導部に届け出て登録・認可を得るためのものです。」【資料5】
- 「上記の生徒の頭髪の色は生来(生まれつき)のものですので、頭髪指導にあたっては配慮をお願いいたします。」
(4)「地毛証明書」が学校の指導に従う「誓約書」になっているもの(7校)
地毛証明書を提出する生徒のみが、校則の厳守や指導に従うと誓約させられるのは理不尽です。生徒が校則について意見を言ったり変えようとしたりすることを封じるものです。
- 「染髪・パーマ等をしないことを誓い、校則を厳守し高校生活を有意義に過ごすことを誓います」【資料6】
- 「届出に反して、染色・パーマ等、頭髪に加工を行った場合は、学校の指導に従うことを約束します」
(5)写真の添付を求めるもの
生徒がウソをつくかもしれないという前提で管理しようとするもので、問題です。都教委は、写真の添付は「真に必要な場合とする」としていますが、一律に求めていると判断される学校もありました。
- 「上記生徒の頭髪は添付写真の通り、加工(染色、脱色、パーマ等)をしていません」【資料7】
- 「地毛の色の確認のため、幼少時と中学3年時の写真の添付をお願いいたします」
(6)カラースケールで髪の色をはかり、登録するもの(12校)
生来の髪の色を登録させることは、肌の色を登録させるのと同じく人権侵害です。なかには髪の根元、表面、毛先と細かく色番号を記入している学校もありました。
(7)過去に染髪やパーマをしたことがないか問うもの(6校)
地毛証明書を、生まれてから1度も髪を加工したことがないことの証明としている学校がありました。入学前のことまで証明させることは不適当と考えます。
- 「本生徒の頭髪は、今まで一度も染色、脱色をしたことのない生来の頭髪であることを証明します。」【資料10】
- 「私は、頭髪に関して、今まで、染髪・パーマその他の加工を1度も行ったことはありません。」
- 「以前に一度でも人工的な手を加えたことがある場合は申請出来ません。」
(8)その他
提出期限を過ぎたら提出を認めないものや、添付書類に「医師等による証明書」を例示している学校がありました。
以 上