文教委員会 若者の文化芸術活動への支援について とや英津子都議(練馬区選出)
2019年10月31日都議会文教委員会での、とや英津子都議の質問です(速記録より)。
高校生や若者の美術館料金の引き下げや、若手アーティストの支援などについて質問しました。
若者の美術館料金の引き下げについて
○とや委員
次は、文化芸術の振興について伺います。
初めに、若者が文化芸術に触れる機会をふやす取り組みについてです。
この問題は、第三回定例会の代表質問でも取り上げさせていただきました。私たちはこの間、いろいろ話を伺ってきたんですけれども、私自身も、美大の教授、あるいは美術館の学芸員さん、また、若い方々にもご意見を伺って、文化や芸術振興の大切さについて、改めて感じているところです。
その中で美大の教授がおっしゃっていたのが、先日の第三回定例会の質問でも少し触れましたが、美術に触れ、豊かな感性を育てることが、考える力をつくり、生きる力につながる、若い人ほど美術館を訪れてほしいということでした。
子供たちに美術に触れてもらおうと、多くの美術館で小中学生向けの教育プログラムに力を入れてくださっています。
一方で、小中学校がとても忙しくなって、美術館のすぐ近くにある小学校でも、先生にぜひ美術館に来てくださいと声をかけたら、授業などの時間がびっしりでといわれてしまったというお話もありました。
全体として、美術館に来るのは年齢の高い方が多く、若者はとても少ないというのが特徴です。特に高校生から二十代ぐらいの若者はなかなか行けなくて、現代美術館などは若手アーティストの育成に力も入れているし、写真美術館も比較的若い人が多いと思うんですけれども、もっともっと広く若者が美術館に行きやすくする取り組みが必要ではないかということでした。
そこで、改めて、若者が芸術文化に触れる機会をふやすことの重要性について、都の認識を伺います。
○古屋文化振興部長 東京都議会第三回定例会で知事が答弁しましたとおり、若い世代が芸術文化のすばらしさに触れ、自国の文化はもとより多様な文化の価値を理解するとともに、豊かな感性や創造力を育むことは大切であると考えております。
○とや委員 若い世代が芸術文化のすばらしさに触れて、豊かな感性や創造力を育むことは大切だというご答弁でありました。ここについて、私たちと生活文化局の皆さんの認識は一致しているというふうに思います。
東京都の都立美術館、博物館には、上野の東京都美術館、清澄白河にあります東京都現代美術館、両国の江戸東京博物館、恵比寿にある写真と映像専門の写真美術館、そして、江戸東京博物館の分館のたてもの園、そして庭園美術館があります。
最近まで大規模改修で休館していた美術館もあるので、通年開館していたときの数字でお願いしたいんですが、これらの美術館、博物館の常設展や企画展などの展覧会の直近の入場者数、また、昨年度の常設展の観覧料収入について、主な館ごとの実績を伺います。
○工藤文化施設改革担当部長 通年で把握できる直近の観覧者数でございますが、江戸東京博物館が平成三十年度の常設展で約九十一万人、二十八年度の特別展が約五十九万人、それから、東京都写真美術館は、平成三十年度の常設展、約十二万人、企画展が約十一万人、東京都現代美術館は、平成二十七年度の常設展が約十三万人で、企画展が約四十四万人でございます。東京都美術館は、平成三十年度に開催しました藤田嗣治展やムンク展などの特別展、約百六十四万人でございます。
また、昨年度の常設展の観覧料収入につきましては、江戸東京博物館が約二億九千万円、写真美術館が約三千七百万円でございます。
○とや委員 江戸東京博物館の常設展と特別展合わせた来館者数、百五十万人。そして、写真美術館は二十三万人だと。現代美術館は五十七万人。都美術館は常設展はありませんので、企画展だけで百六十四万人とのことでした。
江戸東京博物館は、小中学校などの社会科見学もありますから、常設展の観覧者が多いのかなと思います。
写真美術館は常設展の観覧者が多いということで、日本の美術館の常設展が、特別展を見に来たときに一緒に見るというイメージがあるので、ちょっと意外だったんですが、収蔵に力を入れて、テーマを定めて作品を定期的に入れかえて見せることができているということで、大変重要なことだと思いました。
東京都美術館は、今ご答弁で紹介いただきましたような、世界的にも大変有名な作品の展覧会も開催しているということです。
私、藤田嗣治が好きなんですけど、どの館もさまざまな角度から多彩な展示をされていて、すばらしいことだと思います。
これら都立の美術館に、ぜひ若者に足を運んでほしいと思っています。そのときに魅力的な展示や、若者が見たいと思うような展示がもちろん第一なんですが、同時に、足を運びやすいという点では、観覧料が決定的だということです。
各美術館は、既に自主的に若者が来やすくする取り組みをされています。三定の代表質問でも取り上げましたが、東京都美術館ではムンク展、また、ことしのクリムト展で来館者が比較的多くない開催時期の中盤時期に、高校生や大学生などの観覧料の無料の期間を設けました。
この期間の高校生や大学生などの一日当たりの観覧者数は、通常の期間の二倍を超えたと聞きました。私の知り合いの高校生も、この期間を狙って二つの展覧会に行ったそうです。ぜひこれらの取り組みを都としても後押ししてほしいと思います。
同時に、都立の美術館の通常の観覧料がどうなっているのかといいますと、例えば現代美術館ですが、常設展の場合、一般が五百円、大学生等が四百円、六十五歳以上の高齢者、高校生、都外の中学生が二百五十円です。都内の中学生と小学生以下が無料です。高校生でも一般の半額を支払わなければなりません。都立はどこも割引率ではこうした設定になっています。
それで、私、ほかの美術館はどうなっているのだろうかということで調べました。国立の美術館、博物館、西洋美術館や近代美術館などですけど、高校生や十八歳未満は無料です。大学生は一般の半額で二百五十円でした。他県の県立美術館も調べましたが、兵庫県立美術館を初め、高校生は無料のところがかなりあることがわかりました。
東京都文化振興条例の第十条では、都は、青少年が豊かな人間性を形成し、創造的文化活動の担い手となることに資するため、青少年に対し広く文化に接するための機会及び場を提供する等必要な措置を講ずるよう努めるものとするとなっております。
青少年とは十八歳未満だということですが、文化振興条例では、高校生も中学生以下と区別することなく、広く文化に接するための機会及び場を提供するのに必要な措置を東京都は講じてください、努力してくださいとなっているわけです。
文化振興条例の趣旨を踏まえるなら、高校生も中学生以下と同様に観覧料を無料にすべきだと思いますが、いかがですか。
○工藤文化施設改革担当部長 高校生の観覧料につきまして、一般の半額となっており、さらに免除とすることにつきましては、その趣旨、目的、効果等を踏まえた検討が必要であると考えております。
○とや委員 趣旨、目的、効果等を踏まえた検討が必要だというご答弁でありました。問題意識は持っていらっしゃると受けとめたいと思います。
国や他県でも、高校生はかなり無料にしています。無料にすることで来館者がふえたという実績もあるわけです。ぜひ前向きに検討をお願いしたいと思います。
それから、特別展ですが、これは一般料金が千六百円、大学生千二百円、高校生八百円など、常設展よりも観覧料が高額な場合が多くなっています。
国内各地、あるいは海外から作品を持ってくる、運搬してくるわけですから、費用もかかると思いますが、やはり見る方からすれば、特にお金のない若者たちにとっては二の足を踏んでしまう金額だったりするわけです。
大学生や高校生、また中学生以下の割引もそれぞれで、中には小学生でも観覧料が必要な場合もあります。
そこでお聞きしたいんですが、特別展の観覧料はどのように決めているのか。また、大学生以下の観覧料の一般料金からの割引率も展覧会によってそれぞれ違いますが、その理由をお尋ねします。
○星見委員長 少し大きな声でご答弁お願いいたします。
○工藤文化施設改革担当部長 一般に特別展につきましては、東京都歴史文化財団と民間企業等が共同で主催しておりまして、観覧料につきましては、その主催者が判断するものでございます。
○とや委員 主催者それぞれの判断ということです。歴史文化財団と主催者が判断して、先ほど申し上げた、紹介したムンク展、あるいはクリムト展で、高校生、大学生等の無料期間を設けると、さまざまな工夫はしていただいているということですが、ぜひ特別展についても、若者が見やすくするために都の後押しがあるととてもよいのかなと思っています。
例えば東京都の条例と規則で、障害者の皆さんは無料だったり、高齢者は毎月第三水曜日は無料になっていて、毎月第三土曜日、日曜日は家族連れは無料だと決まっていて、特別展にも適用されています。第三水曜日などは大変混雑するので、気をつけてくださいということを、ホームページで注意書きが書かれています。若者に対してもこうした後押しがあるとよいのではないかなと思います。
条例では常設展の料金の上限が決まっていまして、都内中学生と小学生は無料です。でも、高校生は一般の半額です。条例上の料金は、例えば現代美術館の場合、一般は一千百二十円、六十五歳以上の高齢者と高校生、都外中学生は五百六十円。大学生の区分はありません。一般と同じ料金です。
実際の観覧料は、指定管理者である歴史文化財団と都が協議をして決めて、全体的にもうちょっと低廉な料金になっているわけですが、特に大学生など若者に対しては一般と同じ料金で、条例上は、はっきりいって若者に優しくない料金体系になっているということです。
ぜひ東京都として、若者の文化芸術振興の姿勢を示して、取り組みを強化していただきたいと思います。都として、高校生や大学生、専門学校生、さらに学生でない若者の観覧料引き下げなどの取り組みを充実することを求めますが、いかがですか。
○工藤文化施設改革担当部長 展覧会の観覧料を減額免除することにつきましては、その趣旨、目的、効果等を踏まえた検討が必要であると考えております。
○とや委員 さっきと同じ答弁なんですが、趣旨、目的、効果等を踏まえた検討が必要だということで、これも問題意識は持っていらっしゃると前向きに受けとめたいと思います。
若者の文化芸術の振興は、観覧料だけではないのはもちろんです。若者の感性を刺激し、想像力を引き出し、心を豊かにするさまざまな支援、取り組みが求められていますが、やはり文化や美術にアクセスしやすくするという点では、料金の問題は大きな位置を占めていると思います。
昔は高校を卒業すれば、もう世間的にも大人と見られて、就職する若者もたくさんいて、ほぼ正社員で安定した収入と生活を得ることができる人が多かったです。それが、寿命が伸びたり、社会の変化があったりで、若者といわれる期間も長くなって、若者支援の必要性が強く意識されるようになったのも最近のことです。そうした意味では、新しい挑戦でもあると思いますが、積極的に取り組んでいただくことを強く要望しておきます。
若手アーティストの支援について
ここからは、若手アーティストの人材育成について幾つか伺っていきたいと思います。
ここまでの質問で、東京都がさまざまな努力や工夫をして、若い人たちが芸術文化のすばらしさに触れる機会をふやす取り組みをしているということがわかりました。これから社会に出る若者たち、あるいは自分の技術も磨いて自立したいと切磋琢磨している若手アーティストを応援することが求められています。
都の人材育成の取り組みについて伺います。
○工藤文化施設改革担当部長 若手アーティストの人材育成といたしましては、都立文化施設では、新人音楽家を発掘し、育成支援を行う東京音楽コンクールや、次世代の若手演奏家をサポートする芸劇ウインド・オーケストラ・アカデミーなどの取り組みを行っております。
また、映画作家やプロデューサーを目指す若手の人材を育成するタレンツ・トーキョーにも取り組んでおります。
○とや委員 東京都の歴史文化財団の事業計画という冊子を拝見させていただきました。確かに人材育成には取り組んでいると思うんですが、今まで質問してきた、芸術文化に触れる美術館に来館者をふやすためにどうすればいいか、そうした取り組みと比べると、人材育成はこれからなのかな、もう少し充実する必要があるんじゃないかなと思っています。
今、若手のアーティストが施設を借りて、例えば都立の文化施設において活動できる環境が欲しいという声が上がっているわけですが、ライブやコンサート、展示会などで活用する場合の補助や支援はどういうふうになっているのかお答えください。
○工藤文化施設改革担当部長 若手アーティストの創作活動を支援するトーキョーアーツアンドスペースにおきまして、個展開催の機会を提供する公募プログラムを行っているところでございます。
○とや委員 この公募プログラムについてもちょっと拝見させていただきましたが、年間六人ぐらいだということなので、ちょっと少ないんじゃないかなと思います。
若手アーティストが新しい音楽をつくっていきたい、多くの人に自分の感性を披露し、その道で生きていきたいと思っても、ファンがつく前に挫折せざるを得ない状況があります。
その大きな要因の一つが、ホールや会場の利用料金の高さです。ライブハウスなどを借りれば、売り上げを店と折半しなければならない。あるいは公立の会場は、都立でも収益事業ということで、とても高い利用料金を払わなければならないということがあります。
若手芸術家やアーティストなどが利用する場合、会場使用料が高くて使えないという声に応える必要があると思います。
一方で、都立施設の中で比較的安い小ホール、江戸東京博物館、丸一日借りて二万円というところがあるわけですが、こうした形で会場使用料を安く設定することが必要ではないかと思いますが、いかがでしょう。
○工藤文化施設改革担当部長 東京都の公の施設の利用料金は、受益者負担の適正化を図る観点から、人件費、維持管理費、減価償却費、この三つを合計した原価に基づいて適切に設定をしておりまして、江戸東京博物館についても同様でございます。
○とや委員 江戸東京博物館なんですが、知事が認めた場合として減免制度がありますが、今のところ実績がないというふうに伺いました。若い人たちがより低廉な料金でコンサートやライブなど表現する場を保障するためにも、こうした制度を利用する、また、公立、民間問わず、都内の施設については補助金を出すなどして支援していただくことを強く求めておきたいと思います。
私、最後に申し上げたいんですが、ことしの夏、新潟、大地の芸術祭、越後妻有アートトリエンナーレの調査に行きました。この芸術祭は二〇〇〇年から始まったものなんですが、三年に一度開催され、舞台となっている越後妻有地域、新潟県の十日町市や津南町の地域をいうんですが、大地の芸術祭の里と呼んでいて、二〇一五年は約五十一万人の来場者数を記録し、約五十億の経済効果や、雇用や交流人口の拡大をもたらしたという取り組みでした。
大変すばらしいと思ったんですが、このプロデューサーの北川フラム氏は、一人一人が芸術祭に寄せる思いはそれぞれだったといっていて、日本が百五十年かけて、あるいは戦後七十年かけてやってきた近代化やグローバル化、経済が進んだ現在、私たちがどう生きるかを考えながら、芸術祭づくりをしてきたとおっしゃっています。アートを通じて現代人が生きる上での空間や社会的つながり、労働、人間の尊厳などにも思いをめぐらせているとおっしゃっています。
大地の芸術祭は、芸術祭を通じて文化とか国の違いを超えて、これからの社会や地域のあり方を考えるヒントを探すような動きも出ていると報告されていらっしゃいました。
越後妻有を舞台にした作品を見る中で、多様性を認め合って成功させてきた祭典を見て、私、本当に感動いたしました。
東京でも、都民が文化芸術に親しむ機会をふやしていく、あるいは参加することで、そこから得られる効果はとても大きいと思っています。
一方で、ここで一言申し上げておきたいんですが、大変危惧するようなことも起きています。あいちトリエンナーレの一部として企画された表現の不自由展・その後が、公開後三日間で中止になりました。表現の自由は憲法二十一条で保障された国民の権利です。この権利が侵害されていることにとても懸念があります。
この間、都美術館でも作品が撤去されることがありましたが、多様な表現の機会を保障するのが公的機関の責任であります。都の文化振興を担う生活文化局として、若い人たちが芸術に触れる機会をさらにふやし、自由に表現する場の保障、多様な文化を認め合える場として、文化芸術を捉えることができるよう支援していただくことを強く要望して、私の質問を終わります。ありがとうございました。