都立高校における校則の全校調査結果について
★記者会見する(左から)斉藤まりこ、とや英津子、米倉春奈、池川友一、里吉ゆみ、原のり子、原田あきらの各都議(2020.3.5)
都立高校における校則の全校調査結果について
2020年3月5日
日本共産党東京都議会議員団
1. 校則等の調査に至る経過
社会からみて明らかにおかしい校則や生徒心得、学校独自のルールである「ブラック校則」が社会的に注目され、批判が集まっています。実際に、不合理な生徒指導で傷ついている生徒がいます。日本共産党都議団にも、「生まれつきの髪の色を染めてくるか、切らないと授業を受けさせない」と言われたなど、相談が寄せられています。
かつて、都立高校は自由な校風で、服装も頭髪も自由な学校が多いのが特徴でした。ところが、2000年代から制服を導入し髪の毛の染色禁止など外見にかかわる校則等を設ける学校が増え、今では大半の学校でこうした規定が存在しています。
私たちは、都議会の質問でも校則や生徒指導のあり方について、問題提起を行ってきました。今回、改めてその実態について調べるために、都立高校186校、都立中高一貫校(後期課程)5校の全191校の「校則」(注1)と「生徒指導内規」(注2)について、情報公開請求を行いました。
2. 調査の結果、明らかになったこと
191校中184校から「校則」と「生徒指導内規」(どちらかのみも含む)の開示がありました。内訳は、全日制課程171(注3)、定時制課程50、通信制課程3の合計224課程(注3)です。「生徒指導内規」の多くは黒塗り(一部非開示)で開示されました。
以下、調査で明らかになったことについて順不同で記します。
① 肌着・下着に関するもの
- 肌着や下着の色の指定などの規定がある学校は少なくとも9校あった。肌着や下着を規定した場合、確認することが必要であり、人権侵害にあたる可能性が高い。
(例)「ワイシャツの下の肌着は白を着用」「肌着は白無地」「アンダーウェアは白の無地とする」
② 頭髪等に関するもの
- 頭髪について学校の判断でダメとしていたり、不可抗力によるものについても認めないとしているものがある。また、都教委が任意としている「地毛証明書」の提出が任意とは思えない規定がある。
(例)「学校がふさわしくないと判断した頭髪はNG」「ドライヤーによる色落ち」「プールの塩素剤等による、目立った脱色の場合」「黒髪の定義はカラースケールNo.3〜No.5までとする」(内規)「生まれつき髪の色が明るい生徒は『地毛届』を提出させる」(内規) - カラーリップの禁止、整髪料の禁止、眉毛の手入れ禁止など、細かく禁止事項を規定している学校が少なくない。
- アクセサリーについて、「預かる」という規定の学校が多い中「取り上げる」という規定を設けている学校がある。
③ 特別指導に関するもの
- 特別指導において学習権を保障しているのか疑問な内容がある。また、特別指導の手順等については、ほぼ全ての学校で開示文書が黒塗りになっている。
(例)「原則として、出席日数に関しては『欠席』、授業に関しては『欠課』とする」
④ 学校外の活動に関するもの
- 学校外の活動について細かく規定し、校則等で縛っている学校がある。
(例)「旅行、キャンプ、海水浴、サーフィン、スキー、スノーボード等は、事前に目的、目的地、日程、同行者の状況について、所定の用紙に記入の上、保護者から担任を通して生徒指導部に届け出ること。…終了後、学校に連絡すること」「校外の団体に加入し、または行動に参加する時はHR担任または生活指導部に相談して行う」
⑤ 人権や多様性に関すること
- 制服についても男女で明確に分けている学校が多い一方で男女の区別なく書いてある学校もある。学校にあらかじめ決められたもの以外は「異装」としている学校がある。生徒の交友関係について規制する内容がある。
(例)「男女交際は節度を保ち、公正明朗であること」「以下の行為は厳禁 不純異性交遊」「やむを得ない事情がある場合、異装を許可することがある」(内規)
3. 子どもの参加のもと常に積極的に見直すことが必要
「校則」は、「学校が教育目的を達成するために必要かつ合理的範囲内」で制定されるものであり、「絶えず積極的に見直さなければなりません」とされています(文科省「生徒指導提要」)。「校則」や「生徒指導内規」は、もとより学校で策定されるものですが、その策定過程には子どもの意見、保護者や地域の声もしっかりと踏まえる必要があります。
日本共産党都議団は、以下の点について改善が必要だと考えていますが、高校生、学校関係者、保護者のみなさんをはじめ今後とも意見交換を重ねていきます。
- 下着の色の指定をはじめ、人権侵害にあたるもの(またその可能性があるもの)については、東京都教育委員会がイニシアチブを発揮して改善する必要があると考えます。
- 校則の中で「男子」と「女子」で別れて記述されているものや生徒が日本人であることが前提となっているものが多くあります。多様性を尊重し、誰もが自分らしく生きていくことができるという視点から見直しを行うことが必要だと考えます。
- 学校外の活動については、学校の「校則」で規定を設けることが必要なのか、検討する必要があります。
- 服装や頭髪などそのほかの規定についても、本当に必要で合理的なものなのか、社会から見ておかしくないのか、時代にあっているかなどの視点から各学校で議論し、積極的に見直すことが重要です。
その際、子ども(生徒)の参加を保障し、子どもが意見を表明する機会を確保する仕組みが必要です。また、子どもたちが、どうしたら校則を変えられるのかを明確にすることも必要です。 - 校則には明記されていないものを「生徒指導内規」に細かく規定し指導している例がありました。人権や学習権の侵害になりかねないものがあることも含めふさわしいのか見直すことが必要です。また、生徒指導の基準も公開すべきだと考えます。
- 岐阜県や大阪府、都内でも世田谷区(中学校)などが「校則」をホームページで公表しています。「校則」を公開することは、進路を選ぶ中学生の参考にもなり、また社会の目に触れることになることから、各学校のホームページでの公開を進めることが必要だと考えます。今回入手した「校則」については、日本共産党都議団のホームページで公表する予定です。
以 上
★都立高校における校則の全校調査結果について(「注釈」・「参考」あり)
★各都立高校の校則(2020.7.13公開)