2018年第4回定例会に提出した文書質問
2018年第四回都議会定例会
文書質問趣意書
提出者 和泉なおみ
質問事項
一 公有地の拡大について
一 公有地の拡大について
Q1 「公有地は都市計画の基礎」といわれ、西ヨーロッパの諸都市では公有地の拡大が図られてきました。フランスの首都パリでは市域の60%が公共用地として確保されています。ドイツでは人口100万人以上の都市では40%以上が市の所有地となっていると聞きます。スウェーデンなど北欧諸国では4割から5割の土地はそれぞれの自治体の所有だといわれています。これと比べると東京の公有地は18.3%(平成27年度土地所有・利用概況調査報告書:国交省 土地・建設産業局)に過ぎません。
特に戦後、高度経済成長期に急速に市街化が進んだ周辺区部は、まちづくりを進める上で公有地の拡大は切実なものがあります。
まちづくりのための周辺区部地域における公有地の拡大について都は、その意義をどのように考えていますか。
Q2 かつて葛飾区は、工場の数では大田区に次いで都内第2位を占めるほどの工業集積地でした。しかし、近年は工場の移転・廃業が相次いでいます。葛飾区の工場集積は零細な町工場が多いのが特徴ではありましたが、それでも1973年には従業員100人以上の工場が63あったのに対し、2011年にはわずか5ヶ所にまで減少しました。工場跡地には、必ずと言っていいほどマンションかスーパーが建ち、まちが変わっていきました。多くの区民が「これでいいのか」という思いでいるのが現状です。
今年2月1日、葛飾区奥戸1丁目にある森永乳業東京工場が、2021年3月をもって生産を停止すると発表しました。この工場は乳製品のほか焼きプリンや、ロングライフ豆腐などを作っている工場ですが、面積が61,060平方メートルあります。森永乳業は、まだ工場跡地を売却するかどうか態度を明らかにしていませんが、現実に森永乳業が進めている工場再編計画から予測すると、工場跡地が売却される可能性が高いと見られています。既成市街地の中に6ヘクタール以上の空き地が生まれるということは、葛飾区内ではもうないだろうと思われます。葛飾区も区議会で問われて「こうした広大な敷地は・・・区のまちづくりをすすめるうえで重要な資源であると考えております。」と述べて、すでにこの土地利用について検討を開始していることを明らかにしました。
そこで伺いますが、東京都の立場からみても、こうした広大な空き地が既成市街地のなかに生まれる場合は、まちづくりのうえで貴重な資源となると考えますがどうですか。
Q3 問題は、現実にどうやって土地を公有地として取得するか、ということです。この点で、葛飾区長は区議会で「森永乳業と協議することはもちろんですが、東京都や地元、いろいろなところの意見も聞きながら・・・国や東京都からも補助金をもらいながらやっていく」と東京都との連携は不可欠であることを述べています。
ついては、都は森永乳業東京工場の土地の取得について葛飾区と連携協力し、積極的に支援すべきと思いますが、いかがですか。
Q4 「公有地の拡大の推進に関する法律」つまり公拡法は、その第1条で「都市の健全な発展と秩序ある整備を促進するため」と目的をうたっており、地方公共団体が計画的に公有地を確保することができるように、自治体による先買い権を認めています。しかし、買い取りの目的をあらかじめ明確にしなければならず、具体的内容を示さず「あらかじめ買っておく」ことはできない、とされています。しかも、自治体が判断できる期間は、三週間と限られていますので、かなり事前に準備、検討しておかなければ実際には先買い権を行使することは難しいのが現状です。
この点で、葛飾区には都も無関係ではない苦い経験があります。
2001年に、葛飾区新宿6丁目にあった三菱製紙中川工場跡地18ヘクタールを、当時の都市基盤整備公団が取得した際、葛飾区は方針としてここに大学を誘致することを考えていました。都市基盤整備公団が取得した土地の開発計画検討委員会を立ち上げたとき、そのメンバーに葛飾区も東京都も幹部職員をそれぞれ4名ずつ参加させて土地利用開発構想をつくりあげました。開発構想は居住系、商業系土地利用としてまとめられ、大学誘致は認められませんでした。そのまま再開発促進区の地区計画都市計画決定が行われたあと、葛飾区はかねてからの大学誘致計画を具体化したのです。このため、都市計画決定は変更せざるを得なくなり、葛飾区はあらためて大学用地を買収することになったのですが、都市基盤整備公団が取得した1平方メートルあたり13万円の土地を1平方メートルあたり45万円と3倍の高値で買うことになったのです。
この苦い経験を繰り返さないためにも、公拡法の先買い権を行使できるように東京都も最初から積極的な立場で、つまり都として土地利用の具体策をもって葛飾区との協力・連携に踏み出すべきと考えます。
例えば、都は3月に「東京都スポーツ推進総合計画」を発表しましたが、「スポーツを身近でできる場の確保」を強調しながら、一方では「スポーツクラスターを核とした地域の活性化」ということで、新たにできる6つの都立スポーツ施設はすべて「臨海地域」にできることになっています。しかし、これではあまりに地域偏在ではないでしょうか。自治体らしくすべての地域にバランスをもって計画的にスポーツ施設を増設すべきではないでしょうか。
6ヘクタールの森永乳業工場跡地取得をこうした都立スポーツ施設の地域偏在をただす機会として活かすことも考えてしかるべきではないでしょうか。見解を伺います。
和泉なおみ議員の文書質問に対する答弁書
一 公有地の拡大について
A1 都市計画マスタープランなどの上位計画に基づき、道路、公園などを計画的に整備するために必要な土地を確保することは、都市の健全な発展と秩序ある整備の促進に資するものと考えます。
A2 既成市街地における大規模な工場跡地等は、地域のまちづくりを適切に進める上で貴重な土地となり得ると考えます。
A3 当該土地について、葛飾区から具体的な相談があれば、その内容に応じて適切に対応していきます。
A4 スポーツ施設の整備については、平成30年3月策定の「東京都スポーツ推進総合計画」において、政策指針の一つとして、「スポーツを身近でできる場の確保」を掲げています。その中では、2020年以降、新規都立スポーツ施設の整備計画はありませんが、都立大規模スポーツ施設のみならず、区市町村及び企業や学校等のスポーツ施設も有効活用していくことが必要であるとしています。
このため、スポーツ施設整備費補助制度では、区市町村が整備するスポーツ施設についてスポーツ環境を拡大する工事やバリアフリー工事等(用地取得費は補助対象経費に含まず。)に対して支援を行っています。
また、スポーツ施設を所有している大学や企業等とは、「TOKYOスポーツ施設サポーターズ事業」に関する協定を締結し、都民が利用できるスポーツ施設の拡大を図っています。
これらを含め、既存のスポーツ資源の有効活用について、様々な主体と連携しながら、新たなスポーツ活動の場を確保する取組を進めていきます。
以 上
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