2018年第4回定例会に提出した文書質問
2018年第四回都議会定例会
文書質問趣意書
提出者 原のり子
質問事項
一 障害者の入院に際しての有料個室の扱いについて
二 島しょにおける救急ヘリコプターの運行等について
三 国の「農業次世代人材投資事業」について
一 障害者の入院に際しての有料個室の扱いについて
知的障害のある方が入院する際に、個室へ入るように促され、多額の差額ベッド料金の負担に苦しんでいるケースがみられます。「希望したわけではないのに、個室に入るよう言われ、差額ベッド料金の負担が大変だった」「個室に入ることを拒否したら、入院させてもらえないのではないかと思い、断れなかった」「本来付き添いは必要ないうえ、個室に入ることにもなったのに、差額ベッド代は払い、親の付き添いまでしなければならなかった」「障害者を受け入れてくれる病院はあまりないので、我慢するしかない」「騒ぐとまわりに迷惑をかけるから個室へ、という場合、障害者本人の自己責任ということになるのか」などたくさんの声があります。障害者への合理的配慮という観点から、改善が必要ではないかと考えます。
2018年3月5日、厚生労働省は、病院の特別療養環境室について、良い環境を求め、自ら選んで入るものであることや、患者の意に反して特別療養環境室に入院させられることのないようにしなければならないことを明記した通知(保医発0305第6号)を新たに出しました。特別療養環境室とは、1部屋4床以下で、1人あたりの面積が6.4平方メートル以上で、病床のプライバシーを確保する設備がある、とされています。
東京都は都立病院条例3条1項の4で、個室使用料(希望により使用する場合に限る。)1日28,000円以内で知事が定める額、と規定しています。
改めて、東京都のこれまでのとりくみ、通知を受けての考え方についてうかがいます。
Q1 都立病院、公社病院での障害者の受け入れの現状を教えて下さい。昨年度、障害者の入院の状況、その内、有料個室利用数はどのようになっていますか。
Q2 そのなかで、有料個室を本人の希望ではなく利用したケースはどのぐらいありますか。
Q3 本人の希望でなく有料個室を利用する場合、有料個室使用料の負担は自己負担にすべきではないと思いますが、見解をうかがいます。
Q4 公社病院には有料個室の使用について、都立病院について条例で規定しているようなものが見受けられません。希望により使用する場合に限ることを都民に対して明示していく必要があると思いますが、見解をうかがいます。
二 島しょにおける救急ヘリコプターの運行等について
東京都の島しょ人口は、2町7村で26,048人(2018年1月1日時点)、島によって大きな違いはあるものの、高齢化率は平均で30%を超えています。東京の離島は、本土から海を隔てて遠距離に位置しており、そのため医療機関は小児から高齢者までの全診療科、慢性疾患から3次救急まで対応することが求められています。近年、CTの設置も11島のうち7島にまですすみ、都立広尾病院と離島の医療機関との間で、画像伝送システムにより専門医の助言を受けられるように改善されてきています。しかし、それでも、島内で対応できない救急患者が発生した場合は、救急ヘリコプターにより都立広尾病院など島外に搬送することになります。毎年、200数十件が搬送されています。
この救急ヘリコプターは、「生命に緊急を要する」と医師が診断する場合に運行されていると聞きます。島の方々からは、生命に緊急を要しない場合であっても、著しい苦痛があるときなどは運行してほしい、との要望が強くだされています。たとえば、骨折などで手術をおこなうが、生命に緊急を要しないと判断されれば、ヘリ搬送はされず、地力で船などにより島外の病院に行くことになります。一日かけて、大変な苦痛のなか移動を強いることは改善されるべきです。
本土であれば、著しい苦痛があれば救急車での搬送があります。島しょ地域でも、本土と同じように対応すべきです。
Q1 島しょにおける救急患者の搬送について、救急ヘリコプターの搬送基準が示されているものがあれば、どこに、どのように書かれているのか明示してください。
Q2 救急ヘリコプターによる救急患者の搬送について、要請から搬送にいたるまでの手順を明らかにして下さい。
Q3 島外の病院に行くように診断された場合、時間と費用の負担は大きなものがあります。「たった20分の診察を受けるために、2日間かけている」、「骨折で付き添いの人がいないと島外の病院には行けない」などの声があります。「お金がかかるので、必要な医療をためらってしまう」との声もあります。島によっては、交通費の支援(例・利島7,000円×6回)を厳しい財政のなかで実施していますが、東京都としての支援が必要だと考えます。離島であるがゆえに、必要な医療を受けにくいという状態を少しでも改善していくために、交通費の補助制度を都として実施することを求めますがいかがですか?
Q4 島外への通院に要する住民負担を軽減し、必要な医療を受けられるようにすることは、各島にとって喫緊かつ重要な課題です。島しょ振興の観点から、各島の負担軽減を図るため、都としてでき得る支援策を幅広く検討すべきと考えますが、いかがですか?
三 国の「農業次世代人材投資事業」について
国の青年の就農者に対する支援の一つである「農業次世代人材投資事業」(経営開始型)は次世代の農業を担う青年に対する支援で、年間最大150万円、最長5年間交付する制度です。しかし、5年間の間に怪我や病気等のやむを得ない理由で就農できない期間が発生すると、その期間の交付金は受けることができません。5年間という短くない期間では、誰にも怪我や病気が起こり得ます。
都内は、都市農業、中山間地、島しょなど様々な条件で多彩な農業がおこなわれており、東京の魅力の一つにもなっていますが、農業従事者が高齢化し、減っていく中で、新規就農者を支援することは極めて重要です。
次世代の農業者を支援するという制度の趣旨にたち、柔軟な対応が求められます。
Q1 都として、農業次世代人材投資事業について、怪我や病気の時など農業を休止せざるを得ない期間については5年間の期間から外し、再開時に休止前の残りの期間を交付対象とするような柔軟な対応を国に要請すべきと考えますが、いかがですか。
Q2 都としても、怪我や病気などやむを得ない理由で休業する農業次世代人材投資事業利用者に対し、休業中の期間の所得補償などの上乗せ補助を検討すべきと考えますがいかがですか。
原のり子議員の文書質問に対する答弁書
一 障害者の入院に際しての有料個室の扱いについて
A1 都立病院において平成29年10月に実施したワンデイ調査によれば、東京都の心身障害者医療費助成制度の利用並びに障害者総合支援法に定める更生医療及び育成医療により入院していた患者は合計123名であり、そのうち特別室を利用した患者は9名です。
また、公社病院が都立病院と同日に実施したワンデイ調査によると、東京都の心身障害者医療費助成制度の利用並びに障害者総合支援法に定める更生医療及び育成医療により入院していた患者は合計48名であり、そのうち特別室を利用した患者は11名です。
A2 都立病院の9名の患者のうち、治療上の必要で特別室を利用した患者は8名であり、残り1名の患者は本人の希望により特別室を利用しました。
また、公社病院の11名の患者のうち、治療上の必要で特別室を利用した患者は1名であり、残り10名の患者は本人の希望により特別室を利用しました。
A3 都立病院及び公社病院において、本人の希望ではなく治療上の必要により特別室を利用した場合については、個室使用料は徴収していません。
また、診療報酬改定に併せて発出される厚生労働省の通知においても、「患者の意に反して特別療養環境室に入院させられることのないようにしなければならないこと。」とされており、適切に対応しています。
なお、患者が特別室を希望する場合は、これまでもトイレ、シャワー浴室などの附帯設備や料金等について丁寧に説明し患者の同意を確認の上、利用いただいています。
A4 特別室の使用については、厚生労働省の通知において患者の自由な選択と同意による場合に限られており、公社病院では、設備や料金等について丁寧に説明し、特別室使用申込書で使用の意思を確認の上、利用いただいています。
また、各病院のホームページでも、特別室は患者の希望により利用できる旨、案内しています。
二 島しょにおける救急ヘリコプターの運行等について
A1 都は、島しょ町村の救急業務を補完するため、総務局、福祉保健局、東京消防庁の3者による「島しょにおける救急患者等の搬送業務の役割分担に関する協定」を締結し、これに基づいて救急患者搬送に係る業務を行っています。
島しょ町村長から救急患者の搬送要請があった場合には、本協定に基づき東京消防庁のヘリコプター等により、本土の医療機関に搬送しています。
A2 島しょの医療機関で対応できない救急患者が発生した場合、医療機関は町村長に通報します。
通報を受けた町村長は、支庁を通じて都に救急患者の搬送を要請します。
要請を受けた都は、東京消防庁のヘリコプター等により救急患者を搬送します。
A3 島しょ町村の住民が、島外の医療機関へ通院等を行う際の交通費の一部助成については、住民の負担軽減のため、各町村が実情に応じて行っているところです。
A4 市町村に対する総合的な財政支援制度としては市町村総合交付金がありますが、この交付金は、各団体が交付額の範囲内で充当先を判断する、市町村の一般財源を補完するものです。
三 国の「農業次世代人材投資事業」について
A1 都はこれまで、国の「農業次世代人材投資事業」により、平成24年度から平成29年度までに39名の農業者の就農を支援してきました。
国の実施要綱では、休止期間の対応について、災害や妊娠・出産により農業経営を休止した場合、休止から再開までの期間分の交付期間を延長することを可能としています。
怪我や病気に伴う収入減少への備えについては、国が保険料の50パーセントを負担する農業者向けの収入保険制度が平成31年1月から開始されており、本制度により補償を受けることが可能となっています。
引き続き、本制度の適正な運用に努めていきます。
A2 国が平成31年1月から開始した農業者向けの収入保険制度は、病気や怪我により収入が減少した場合についても、補償の対象としています。
このため都は、国と連携し、農業者による収入保険制度への加入を推奨していきます。
以 上
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