本会議 藤田りょうこ都議(大田区選出)の一般質問
9月27日の本会議で、藤田りょうこ議員(大田区選出)が一般質問を行いました。
★質問全文(質問原稿)です。
1、中小企業・小規模企業支援について
私は大田区内の民間病院で、看護師として20年間働いてきました。町工場が集積する地域にある病院です。1949年に、お金がなくても安心して医療を受けたいと願う地域の方たちによってつくられ、町工場の経営者、労働者をはじめ、地域の方の命と健康を支えてきました。
Q1 私が就職したころは、町工場の経営者も高齢化し、入退院を繰り返したり、手遅れの病状で救急搬送される方がたくさんいました。厳しい経営環境の中、仕事の納期を優先させるばかりに健康が後回しとなり、具合が悪くても無理して働いていると感じました。そういう状況は今も変わっていません。2014年に大田区が行った小規模事業所アンケート調査では、事業主が入院中で休業している事業所もありました。従業員が1名から3名の小規模事業所では、病気がそのまま休業や廃業に直結していることがうかがえ、町工場を取り巻く環境は、いっそう厳しくなっています。
大田区の工場数はピーク時に9000軒を超えていましたが、この30年間で1413軒、6分の1まで減少しました。経営者の高齢化や後継者問題、病気などが廃業の理由です。産業の発展を下支えしてきた小規模事業所では、健康を犠牲にしている面もあります。
知事は、中小企業・小規模企業振興条例の検討を開始し、基本理念の柱に「小規模企業の事業の持続的発展」と位置づけたことは重要です。小規模企業が持続的な経営をするためには、あらゆる角度から現状を分析し、総合的な支援が必要だと思いますが、知事いかがですか。
都内の小規模企業の経営者が多く加盟する、東京商工団体連合会の共済会による調査では、昨年度に亡くなった方のうち、病気の診断から亡くなるまでの日数が1日以内という方が19%に及ぶという、驚くべき状況でした。また、がんによる死亡率が40%を超えており、全国や東京都を10ポイント以上も上回っています。
Q2 大田区はがん検診の受診率向上のために受診勧奨を行っていますが、区内の1人から3人程度の工場や商店で働く方など検診を受けにくい区民から、受診の機会を増やすことが求められています。がん検診を土日や夜間などに受けられるよう東京都からの支援を強めるべきと考えますが、いかがですか。
Q3 町工場では、「一度休むと仕事が来なくなる」と言って無理して働き、手遅れ状態につながっています。「病気が見つかるのが怖くて受診しない」という方も少なくありませんが、その背景には「病気と診断されても治すお金がない」という経済的な不安があります。大田区の小規模企業調査では3人未満の事業所は7割で、半数以上が国民健康保険に加入しています。被用者保険であれば病気休業中の傷病手当金が支給されますが、国保にはこの制度がありません。地域経済を支えてきた小規模企業を守ることが、これからの経営者や起業家を守ることにもつながります。国保財政運営の責任主体となった東京都から傷病手当金実施のための財政補助を行うことが求められていますが、いかがですか。
Q4 経営者が休む際の保障がないのは、出産についても同様です。女性の起業家を応援する東京都として、経営者でも安心して出産し、育児ができる環境を支えること、商売を軌道に乗せるために支援の拡充をおこなうことを求めますが、見解を伺います。
Q5 私も3人の子を持つ母ですが、出産は喜ばしいことであり、産後は子どものためにも頑張ろう、と思って働いてきました。しかし、シングルマザーの友人は、産前産後とお店を閉めた結果、1年近く収入がなく、保険料が払えず滞納を余儀なくされました。被用者保険なら産休が98日間あり、その間出産手当金が支給され、そのうえ育休中も雇用保険から育児休業給付金が受けられます。しかも休んでいる間の保険料は免除されます。育児にはゆとりが必要です。
女性起業家が子どもを生み、育てる環境はあまりにも厳しすぎませんか。
知事は、あらゆる分野での女性活躍を推進すると表明されました。そうであるならば経営者に対しても、せめて産休中の保険料減免などを実施するために東京都が財政支援を行うなど、新たな支援が必要だと考えますが、いかがですか。
次に訪問看護についてです。
都の調査では38.2%が自宅で最期を迎えたいと思っており、高齢者人口の増加が激しい東京では、在宅療養の充実が急務となっています。しかし在宅療養を支える要となる訪問看護は、十分に増加していません。
Q6 都の調査によると、今年6月現在で休止しているステーションは47事業所、開設後1年以内に休止や廃止となる事業所も毎年存在し、どちらも主な理由は人手不足です。昨年度廃止した事業所も56%は人手不足が理由でした。知事は看護協会へのヒアリングの際、「地域包括ケアシステムの肝は訪問看護師の確保」と述べていますが、訪問看護の充実にはどのように取り組むのですか。
都の訪問看護ステーションの半数以上は、常勤換算で5人未満の看護師で運営しています。非常勤の割合が多い訪問看護では、少人数であるほど廃止になりやすい傾向にあります。都の調査でも管理者が非常に負担と答えた割合が最も高かったのは「人材確保」であり、さらなる看護師確保対策が求められています。
Q7 現在都は、看護師の「養成」「定着」「再就業」対策を行っていますが、看護師確保のため、養成にいっそう力を入れるべきと考えますが、知事いかがですか。
私自身も訪問看護を行っていました。訪問看護師は利用者の尊厳を守りその人らしく生きることを支えています。だからこそ、利用者も入院中には見せなかった表情で過ごし、その姿に私たち看護師は励まされ、やりがいをもって働くことができるのです。都の調査でも、病棟に比べ訪問看護では利用者とじっくり関わることができる、やりがい・生きがいをもてる仕事であると答える割合が高くなっています。そのような背景から、看護学生の間でも、訪問看護を希望する人が増えています。
しかし、卒業直後に訪問看護ステーションに就職するためには課題があります。
Q8 病棟では、ある程度見極めができるまで先輩と二人で行動し、自立してからも相談できる環境があります。しかし訪問看護は基本的に一人です。病棟のように毎日同じ患者をケアするわけではありませんし、1ヶ月に1回しか訪問しない方もいます。「何かおかしい」と感じる力が身についていない状況では、利用者の命に直結することもあります。
新卒看護師が判断力を身につけるまでの期間、同行訪問を初めとした教育を行うことが必要ですが、その間ベテランと二人で行動などをできる人的余裕はありません。都の調査でも新卒看護師の採用意向がない、と回答した訪問看護ステーションの最大の理由は「教育に十分な時間をかけられないから」というものです。新卒から訪問看護師の育成が可能となるよう、同行訪問をはじめとした育成への支援をさらに広げるべきと考えますが、いかがですか。
Q9 訪問看護ステーションでの新卒採用が増えない理由は他にもあります。私も利用した東京都看護師等修学資金は、就職先によって貸付資金の返済が免除されますが、卒業直後に訪問看護ステーションを選ぶ場合は免除されません。医療現場や看護協会からも、返済免除となる施設に訪問看護も含めてほしいという要望が出されていますが、都の見解を伺います。
Q10 訪問看護事業所の課題は、看護師である所長が経営を行うという点にもあります。経営の専門家でもなく、多くの場合は訪問も行っており、運営を困難にしているという声を看護協会の方からも伺いました。看護管理者が本来の業務に集中できるよう、事務職員の雇用支援の拡充や、ステーション運営への相談支援を充実する等の取り組みを行うことを求めますが、いかがですか。
次に、障害者政策についてです。
Q11 私が訪問看護に行かせていただいていた人工呼吸器をつけた難病の方は、もうすぐ20歳です。高校生までは週に5日、自宅を離れ人とのかかわりが多い生活をしていましたが、卒業後は週に1回、大田区にある都立北療育医療センター城南分園に通う時しか、外出の機会がありません。自宅で介護している60代の母親は「体が辛くても、週に1度の貴重な時間は病院通いで終わってしまっている」と話していました。ご本人ももっと分園に通いたいと希望されています。重度心身障害児者や医療的ケアが必要な方が、希望に沿って利用できるよう、身近な地域に通所施設を整備することを求めますが、いかがですか。
次に、荏原病院についてです。
Q12 荏原病院は都立から公社に移管して12年がたちますが、移管して以降、常に閉鎖している病棟があり、現在でも43床稼動できていません。荏原病院は私が生まれた病院です。地域住民からは「何かあったら荏原病院にいけば大丈夫」と、大きな信頼が寄せられています。再開に向けた努力を求めますが、いかがですか。
最後に、防災対策です。
Q13 大田区上池台3丁目は、1時間に50ミリ以上の雨が降ると、毎回のように床上浸水が発生しています。現在、都は75ミリ対応を行うとしていますが、完成まであと何回浸水被害にあわなければならないのか、と住民の方は不安に感じています。こういった地域に対し、不安を払拭するため、できるだけ早めに完成することが必要と考えますが、いかがですか。
Q14 知事は所信表明で「防災事業のスピードアップとグレードアップを直実に図る」と述べました。都民の声に耳を傾け、風水害対策をより強力に進めるべきと考えます。知事の答弁を求め、質問を終わります。
以 上
〇知事(小池百合子君) 藤田りょうこ議員の一般質問にお答えをいたします。
まず、小規模企業への支援についてのご質問でございます。
都内で活動する数多くの小規模企業は、各地域で経済、そして雇用を支えております。産業活動の基盤としての役割を担う貴重な存在でございます。
都はこれまでも、現場の状況調査をし、その内容を的確に把握をし、経営相談、そして技術支援などを行うほか、小規模企業の支援拠点を設けて事業承継などを重点的にサポートしております。
中小企業の振興に関する条例におきましても、小規模企業が持続性のある発展に向けて、それぞれの持つ資源を有効に活用するとともに、多様な主体との連携や協力を図るということを理念として掲げてまいります。
引き続きまして、小規模企業の直面する課題をしっかりと受けとめまして、そのサポートには万全を期してまいりたいと考えております。
次に、訪問看護についてのご質問でございます。
医療と介護をつなぐ訪問看護は、高齢者の在宅での療養生活を支える重要なサービスでございます。
このため、都は、高齢者保健福祉計画に基づいて、訪問看護サービスの安定的な供給のために、人材の確保、定着、育成、そして訪問看護ステーションの運営体制の強化など、さまざまな施策を展開してまいりました。
今後とも、高齢者が地域で安心して暮らし続けられますように、訪問看護の充実に向けました施策を推進してまいります。
看護師の確保についてでありますが、少子化、労働力人口の減少が懸念されております中で、増大する介護ニーズに対応する、そのためには、養成、定着、再就業を柱といたしましして、看護職員の確保対策を総合的に進めていかなければなりません。
このため、都といたしまして、養成対策として七校ございます都立の看護専門学校の運営や、民間の看護職員養成施設への財政的支援などを通じまして、看護人材を着実に養成をしているところでございます。
また、定着対策といたしまして、現に就業している看護職員の勤務環境の改善であるとか、新人職員の研修への支援を行ったり、再就業対策といたしまして、地域の病院での復職相談や研修などに取り組んでいるところでございます。
今後とも、都民が安心して質の高い医療を受けられますように、看護職員のライフステージに応じた効果的、安定的な人材の確保体制に努めてまいります。
最後に、風水害対策についてのご質問でございます。
近年、全国各地で大きな被害をもたらす風水害が発生していることはご指摘のとおりでございます。そして、東京が同様の災害にいつ襲われてもおかしくない状況でございます。
こうしたことから、七月の西日本豪雨などで明らかになりました課題を踏まえまして、防災事業の緊急総点検を行いました。そして課題を抽出して対策の方向性を整理、そして、特に力を入れて取り組んでいくものとして、まず、タイムラインの普及拡大、調節池の加速的な整備、災害拠点病院等における浸水対策など示したところでございます。
これらもあわせまして、風水害の課題、そして対策につきまして、今後の予算編成で引き続き分析、検討を進めて、東京の風水害対策に取り組んでまいる所存でございます。
その他のご質問につきましては、関係局長よりのご答弁とさせていただきます。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕
〇福祉保健局長(内藤淳君) 七点のご質問にお答えいたします。
まず、がん検診についてでありますが、都は、がん対策推進計画に、がん検診受診率五〇%を目標として掲げ、啓発イベントやホームページ等を通じて、検診の重要性を都民に周知しているところでございます。検診の実施主体である区市町村に対しましては、受診率向上の手引を配布するとともに、個別勧奨、再勧奨等の取り組みを包括補助で支援しております。
今年度から、平日夜間や土日の検診実施など、受診しやすい環境整備に向けた区市町村の取り組みを新たに支援するなど、がん検診のさらなる受診率向上に努めてまいります。
次に、傷病手当金についてでありますが、被保険者が病気やけがの療養のため勤務ができない場合に支給される傷病手当金は、被用者保険では法定給付とされておりますが、国民健康保険では区市町村または国民健康保険組合が、条例または規約に基づいて実施する任意給付となっております。被用者保険と異なり、国民健康保険の被保険者は、自営業者や無職の方などさまざまであり、それぞれの就業状況や収入の把握が困難であるなど多くの課題があることから、全国的に見ても傷病手当金の給付を実施している区市町村はないという状況にございます。
都は、国民健康保険制度の健全かつ安定的な運営を図るため、法令等に基づき、区市町村に対する財政支援を行っております。
次に、産前産後休業中の保険料についてでありますが、平成二十六年四月から被用者保険では産前産後休業中の保険料が免除されております。国民健康保険には同様の免除制度はありませんが、事業の休廃止等により世帯の収入が著しく減少し、利用し得る資産等を活用しても著しくその生活が困難となったときは、区市町村が被保険者の個々の事情に応じて保険料減免の可否を判断しているところでございます。都は、法令等に基づき、区市町村に対して財政支援しております。
次に、新卒の訪問看護師の育成についてでありますが、訪問看護ステーションは小規模な事業者が多く、独自に人材育成を行うことが困難なことから、都は、比較的規模が大きく人材育成のノウハウを有するステーションを地域における教育ステーションとして指定し、指導力のある看護師が新任看護師等に同行する実地研修などを実施しております。
また、訪問看護未経験の看護師を新たに雇用し、計画的に育成を行う訪問看護ステーションに対しまして、採用初期の給与費や研修受講経費等を補助しており、今後とも、新卒を含めた訪問看護師の育成を支援してまいります。
次に、看護師等修学資金についてでありますが、都は、看護職員を確保することを目的として、都内の養成施設に在学し、将来、都内で看護業務に従事する意思のある学生に看護師等修学資金を貸与しているところでございます。
現在、訪問看護に従事する看護職員が貸与を受けた修学資金の返還を免除されるためには、都が指定する医療機関等におきます三年以上の看護業務の経験を要することとしております。本事業が国の補助事業として実施されてきた経緯から、都は、返還免除等の要件につきましては従前と同様としております。
次に、訪問看護ステーションへの支援についてでありますが、都はこれまで、訪問看護ステーションが安定的にサービスを提供できるよう、経営コンサルタントによる個別相談を実施し、ステーション運営の効率化や経営基盤の強化を支援してまいりました。
また、看護職員が専門業務に注力できる環境を整備するとともに、早期に事業運営の安定化を図るため、開設して間もないステーションが新たに事務職員を雇用する場合に、一年を上限として、その経費を補助しているところでございます。
今後とも、こうした取り組みによりまして、訪問看護ステーションを支援してまいります。
最後に、重症心身障害児者等の通所施設の整備についてでありますが、都は、障害者が身近な地域で安心して生活できるよう、通所施設など障害者福祉サービスの基盤整備に取り組んでおり、重症心身障害児者通所施設につきましては、平成三十年四月一日現在、五十九施設、定員六百七十四人分を確保しております。
本年三月に策定いたしました障害者・障害児地域生活支援三か年プランでは、重症心身障害児者通所施設について、平成三十年度からの三年間で定員を百五十人ふやすことを目標に掲げており、整備費の事業者負担を軽減する特別助成を行うなど、引き続き整備を促進してまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕
〇産業労働局長(藤田裕司君) 女性の起業家等に対する支援についてでございますが、女性の起業家が子育て等をしながら経営に取り組み、事業を伸ばすことのできる環境を整えていくことは重要でございます。
都は、TOKYO創業ステーションに託児スペースを併設し、起業を目指す子育て中の女性が経営の基本を学び、事業プランをつくる場を提供しているところでございます。また、経営が安定する前の段階にある女性起業家が利用できるよう、家賃が安く、託児スペースのあるインキュベーション施設をふやす支援を行っております。
さらに、商店街に設けましたチャレンジショップでは、女性が託児サービスを利用しながら店舗運営を学べる仕組みといたしておるところでございます。
これらにより、女性の起業家等を支援してまいります。
〔病院経営本部長堤雅史君登壇〕
〇病院経営本部長(堤雅史君) 荏原病院の休止病棟についてでございますが、東京都保健医療公社荏原病院は、総病床五百六床のうち、二つの病棟を休止していた時期を経まして、平成二十三年五月以降は一病棟四十三床を休止しております。休止の主な原因でございますが、病棟運営に必要な看護師確保に至っていないということでございます。
今後につきましては、看護師確保の見通しや病院の運営状況等を勘案しながら、公社とともに、引き続き対応を検討してまいります。
〔下水道局長小山哲司君登壇〕
〇下水道局長(小山哲司君) 大田区上池台地区の浸水対策についてでございますが、この地区は平成二十五年の豪雨による被害を踏まえ、同年十二月に策定いたしました豪雨対策下水道緊急プランにおいて、時間七十五ミリの降雨に対応する施設を整備する地区として位置づけ、平成二十八年度末に事業着手しております。
既設の洗足池幹線を増強する新たな下水道管を追加するなどの計画でございまして、平成三十一年度末までに一部完成した下水道管を暫定的に稼働させるなどして効果を発揮してまいります。