本会議 池川友一都議(町田市選出)の一般質問
2017年9月27日の本会議で、池川友一議員(町田市選出)が一般質問を行いました。
★質問全文(質問原稿)です。
★答弁(議事録速報版より)
★再質問と答弁(議事録速報版より)
多摩格差の解消について質問します。
Q1 小池知事が都知事選挙の公約で「多摩格差ゼロ」を掲げたことに、私をはじめ、多摩地域に住む人々は大変注目し、期待しています。今年の予算特別委員会での、わが党の清水ひで子都議の質問にも「多摩格差ゼロを目指すような政策、これを立案、そして実践をしていきたい」と答弁されました。
ところが、知事は所信表明で「多摩の振興プラン」には言及されましたが、多摩格差ゼロとは述べられませんでした。改めて「多摩格差ゼロ」にどのようにとりくんでいくのか、知事の基本認識を伺います。
Q2 東京都市長会は、知事に提出した来年度に向けた「多摩地域に対する都政の取組に関する要望」の中で、新たに、この間になかった「多摩地域と区部における行政サービス等の地域格差を是正する視点を踏まえ」ということを入れました。
知事は、このことについてどのように受け止めていますか。
Q3 特に財政力という点では、区部と多摩地域に差があることは明らかです。市町村の行政水準の向上と住民福祉の増進を図る目的で創設された市町村総合交付金は、年々増額されておりますが、多摩格差ゼロを実現するためには抜本的充実が必要です。
都議選のとき小池知事が代表を務めていた「都民ファーストの会」は、「市町村総合交付金を充実します」と公約しています。知事は、市町村総合交付金の充実にどうとりくむのですか。
学校給食、特に中学校給食について伺います。
Q1 私の地元である町田市の給食は、民間業者が外部で調理した仕出し弁当のような給食を希望者に提供する外部調理委託方式となっています。このいわゆる弁当給食は、冷たい、事前予約が必要、食べるのは特別な子と見られるので注文しづらいなどのことから、注文する生徒は15%程度にしかなりません。
その結果、現場では何が起こっているでしょうか。家から持参したお弁当の中身を見られたくなくて隠しながら食べる子ども、さまざまな事情から菓子パンやコンビニ弁当を持ってくる子ども、何も持ってこられずに昼休みをトイレや保健室で過ごす子どももいます。学校の教育として給食の時間でのこのような状況は、あまりにもつらい現実ではないでしょうか。
23区の中学校給食は、町田市のような外部調理委託方式の学校はありません。9割以上が、学校内でつくられた温かい給食を全員で食べる自校調理方式です。一方、多摩26市では、自校調理方式の学校はわずか13%にすぎず、給食センター方式が34%、外部調理委託方式が38%にものぼります。
知事は、学校給食に地域間格差があることをご存知でしたか。これは「多摩格差ゼロ」の課題の1つだと思いませんか。
Q2 貧困状態にある子どもたちにとって、給食は一日の中で唯一のバランスの取れた食事であることが少なくありません。ある民生児童委員の方が困難を抱える家庭を訪問をしたときに、夕食に何を食べたか聞いてみると、お菓子と答える子どもが少なくないそうです。成長期の子どもたちがバランスの取れた食事をとることが重要であることは論を待ちません。
① そこでまず、貧困状態にある子どもたちとそうでない子どもたちを比較して、食物の摂取状況に差が見られるのか、都が行った生活実態調査の結果について伺います。
② また子どもの貧困の解決にあたり、食事の量や栄養面での格差を改善していくことが重要だと思います。見解を伺います。
③ 新潟大学の村山伸子教授らは、子どもたちの給食のある平日と、ない週末の食事を調査し、学校給食のある日は、世帯年収による栄養格差がなくなることを明らかにしました。この研究結果をどう受けとめていますか。学校給食は、すべての子どもたちが適切な栄養をとり、健康的に成長していくために、大きな役割を果たしていると思いますが、いかがですか。
Q3 学校給食は、食育の視点も極めて重要です。
みんなで同じものを食べることで会話が生まれ、多様な食材と調理法による料理を食べることは味覚を育てます。さいたま市では、食育を重視し、学校給食をセンター方式から自校調理方式に切り替え、全校に栄養士を配置しました。全校で給食集会をひらき、学校菜園で子どもたちが育てた野菜を給食に使うなど、自校調理だからこそできる豊かな食育を行っています。
一方、外部調理委託方式の町田市では、子どもたちはバラバラなものを食べているので、本来生きた教材であるはずの学校給食が役割を果たせません。
食育という視点からも、自校調理方式で学校給食を提供することは意義があると思いますが、どのように考えていますか。
Q4 食育基本法第23条は、地方公共団体は、「農林水産物の生産された地域内の学校給食等における利用その他のその地域内における消費の促進」などの施策を講じることを明記しています。
東京でも学校給食における地産地消導入支援事業をスタートさせていますが、食育にとっても重要です。学校給食に食材を供給することにより、地産地消をいっそう積極的に推進すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
Q5 食育や地産地消を推進する上で決定的なのが栄養教諭や栄養士です。昨年度、栄養教諭は26人の募集に対し、応募は4人しかありませんでした。子どもたちを直接指導できる栄養教諭を大幅に増やすこと、そのために応募条件や職務内容の改善などが必要だと考えます。東京都はどのように栄養教諭を増やそうとしているのか、伺います。
栄養面でも食育をはじめとする子どもたちへの教育効果を考えても、自校調理方式で給食を実施してほしいというのは、多摩地域の保護者の願いです。
Q6 多摩地域の自治体で、自校調理方式の中学校給食を導入しようと思った時に最大の課題になっているのは導入時の財政的負担です。
区市町村立小中学校の普通教室と特別教室のエアコン設置は、都が独自の補助を実施したことにより一気に進みました。都政が動けば、学校教育環境を確実に向上させることができるのです。
東京都市教育長会は「都教育委員会においても、文部科学省の学校施設環境改善交付金(給食施設)に相当する補助制度の新設を要望する」と給食施設の整備への都の支援を求めています。
私は、東京に住んでいれば、義務教育の期間は全員が、当たり前に温かい給食を食べているという状況をつくりたいのです。すべての子どもの育ちを支える都政を実現するためにも、給食施設の整備について、国に交付金の充実を求めるとともに、都独自の財政支援を行うことが必要だと考えます。見解を伺います。
シルバーパスついて伺います。
多摩地域では、バス路線はなくてはならない生活の足です。
Q1 特に町田市の高齢者にとって、東京都と他県とのさかい、都県境のシルバーパスの利用の問題は深刻です。町田市では、市内を走るバス路線183路線のうち、都県境をまたぐ路線が60路線と、3分の1を占めています。細長い地形のため、生活圏の最寄り駅が神奈川県という方が少なくありません。駅周辺への通院や買い物など、都県境を超えたバス利用が日常生活に必要なのです。しかし、シルバーパスが使えるのは都内のみとなっているため、目的地まであと少しという所で神奈川県に入ると、初乗り料金170円や180円が発生するのです。
ある80代の男性は、週4日神奈川県内に通院していますが、バス1本で行くより都内で電車に乗り換えた方が140円と安いので、節約のためにわざわざ時間をかけて乗り換えています。シルバーパスが使えればこうした不便や自己負担を強いられることはありません。
最寄りの駅にバスで出かけていくことは、日常生活では不可欠で、社会参加の促進というシルバーパス制度の目的にも合致するものです。にもかかわらず、同じ東京都民でありながら、生活圏でシルバーパスが利用できないことは、あきらかな地域間格差であり、制度上課題があるとは思いませんか。
Q2 稲城市では、バス事業者と覚書を交わし、一定の予算を投じて都県境を越えてシルバーパスを利用できるようにしています。導入の経過をたどってみると、都に求めたけれど進まないので、市が一部費用を負担することで解決の方向を見出し、高齢者の方々の利便性の向上に踏み切ったことがわかります。本来は東京都が行うべき改善を稲城市がやっているのです。
また、東京都シルバーパスとほぼ同様の制度がある13の政令指定都市のうち、町田の隣の横浜、川崎を含め7自治体が自治体の境界を超えて利用ができます。
利用者にとって、利便性の向上のためにも、少なくとも乗車か降車のどちらかが都内であれば利用できるようにすべきと考えますが、いかがでしょうか。
Q3 利用料の軽減も切実な要望です。
今年度、東京都市長会が知事に提出した「東京都予算編成に対する要望事項」には、新たに「中間所得層に向けたシルバーパス利用料の軽減枠の新設」という項目が設けられ、「シルバーパスについては、住民税非課税者や経過措置対象者は1000円で利用できるのに対し、その他の者については2万510円となり負担が急激に増大する。急激な負担増を緩和するために、中間所得層に向けた新たな利用料軽減枠を設けること」を求めています。
知事はこの要望について、どう受け止めていますか。
Q4 利用者の拡大のためにも、3千円、5千円などシルバーパスの利用料の段階を増やし、負担軽減に踏み出すことを求めますがいかがですか。
答弁を求め、再質問を留保し質問を終わります。
【答 弁】
○知事(小池百合子君) 池川友一議員の初一般質問にお答えをさせていただきます。
五問、お答えいたします。
まず、多摩格差ゼロについてでございます。
従来から公共下水道や道路などの課題につきましては、都と、そして市町村が連携をいたしまして課題の解決に努め、いわゆる多摩格差はかなりの部分で解消しているものと認識をいたしております。
一方で、多摩地域は、人口減少、少子高齢化への対応を初めとして、交通インフラの整備、防災対策など、依然として、それぞれ地域ごとの課題を抱えております。
多摩地域の持続的発展のためには、こうした課題の解決に向けまして、地域の実情を的確に把握した上で、丁寧な取り組みを行っていく、そのことが重要と考えております。
このたび公表いたしました多摩の振興プランの策定に当たりましては、地域の実情に精通し、さまざまな活動をされている方々のご意見、そしてアイデアも取り入れたところでございます。
今後とも、市町村と緊密に連携をしながら、多摩地域にしっかりと目を向けて、多摩振興に取り組んでまいる所存でございます。
東京都市長会からの要望についてのご質問でございます。
今も述べたとおり、多摩地域は、人口減少、そして少子高齢化への対応、さらに道路、交通インフラの整備、防災対策など、それぞれ地域ごとにさまざまな課題を抱えております。
市長会からの要望の趣旨を踏まえまして、市町村とも緊密に連携をしながら、地域の実情を的確に把握して、こうした課題を一つ一つ解決していくことによりまして、オール東京の発展につなげていくことが重要と考えております。
市町村の総合交付金でございますが、市町村総合交付金は、市町村に対する包括的な財政補完制度として、各団体の経営努力を促して、自主性、自立性の向上に資する、それとともに地域の振興を図って、住民福祉の増進、健全な財政運営に寄与をいたしていると考えております。
多摩地域は、さまざまな課題を抱えていると先ほどから申し上げておりますが、それぞれの地域の実情を的確に把握をした上で、こうした課題に一つ一つ解決の方向へ向けて取り組んでいく、多摩地域の持続的発展につなげていく、そのことが重要であると認識をいたしております。
今後とも、各市町村の実情、課題に即しました交付を行うように適切に運用をしてまいります。
区市町村立中学校の学校給食についてのご質問でございました。
学校給食は、学校設置者である自治体が、地域の実情を踏まえて運営形態等を決めるものとされております。
都内の全ての区市町村では、それぞれの判断で、さまざまな運営形態による学校給食が実施されているものと認識をいたしております。
シルバーパスについてのご質問、このシルバーパスにつきましては、さまざまなご要望があることは承知をいたしております。
今後、高齢化の進展が見込まれる中で、事業経費は一層増加することが見込まれるところでございまして、制度を見直す場合には、財政面はもとより、さまざまな観点から多角的に検討することが必要と考えております。
その他のご質問につきましては、教育長及び関係局長よりの答弁とさせていただきます。
〔教育長中井敬三君登壇〕
○教育長(中井敬三君) 学校給食に関する四点のご質問にお答えいたします。
まず、学校給食の役割についてでございますが、学校給食は、子供たちの適切な栄養の摂取による健康の保持増進はもとより、食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、望ましい食習慣を養うこと等を役割として実施されております。
次に、食育と学校給食の関連についてでございますが、食育は、子供たちにとって健やかに生きるための基盤を培うものであり、各学校において、食に関する知識や能力等を総合的に身につけることができるよう、教育活動全体を通して行っております。
具体的には、各学校で、年間の指導計画を策定し、給食の時間や家庭科の時間のほか、各教科等の授業内容とも関連づけながら実施しております。
学校給食は、その運営形態にかかわらず、こうした教育活動の中で、献立や食材を活用するほか、子供たちの食習慣の形成や食への感謝の念の育成などの教材の一つとしての役割を果たしております。
次に、栄養教諭の確保についてでございますが、都教育委員会では、栄養教諭普通免許状を有する学校栄養職員のうち、一定の経験年数のある者を、切りかえ特別選考により栄養教諭として任用してきております。
平成二十六年度からは、選考の要件となる経験年数を短縮することにより、受験資格の緩和を行うとともに、栄養教諭の魅力を伝えるためのPR活動に取り組み、受験の促進を図っております。また、学校栄養職員を対象に、免許状取得のための認定講習や食に関する指導力の向上研修も実施しています。
今後とも、このような取り組みを通じ、栄養教諭の確保に努めてまいります。
最後に、学校給食施設の整備にかかわる財政支援についてでございますが、区市町村立小中学校の給食施設整備にかかわる経費については、学校給食法により、設置者である区市町村が負担することとされております。
なお、国では、学校給食の施設設備の整備に必要な補助制度を設け、経費の一部を助成しており、都教育委員会は、国に対してその充実を要望しております。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕
○福祉保健局長(梶原洋君) 五点のご質問にお答えをいたします。
まず、子供の生活実態調査における食物の摂取状況についてでありますが、都が昨年度実施した子供の生活実態調査の結果では、中学二年生の場合、給食を除いて野菜を毎日食べると答えた子供は、一般層で約七九%、生活困窮層で約六二%、また、肉か魚を毎日食べると答えた子供は、一般層で約七七%、生活困窮層で約六〇%となっております。
次に、子供の食生活についてでありますが、子供の発育には、栄養面でバランスのとれた食事や適切な運動、質、量ともに十分な睡眠が必要でございます。
都は、昨年度から、区市町村が民間団体等と連携して学習支援や食事の提供等を一体的に行う子供の居場所づくりを支援しており、今年度は、居場所と地域の子供食堂との連携や、学校給食がない時期に昼食等を提供する取り組みなどに対しても支援を実施しております。
次に、シルバーパスの利用についてでありますが、シルバーパスの利用区域について、さまざまな意見があることは承知をしております。
シルバーパスは、一般社団法人東京バス協会が主体となって行っている事業であり、都は事業に必要な費用を補助しております。
東京都シルバーパス条例及び同条例施行規則では、このシルバーパスの利用交通機関は都営交通及び路線バスとなっており、また、路線バスの利用区域は東京都の区域内としております。
次に、シルバーパスの利用区域についてでありますが、シルバーパスの利用に関する稲城市等の取り組みは、各自治体が地域の実情に応じて行っているものと認識をしております。
ただいま申し上げたとおり、東京都シルバーパス条例及び同条例施行規則では、このシルバーパスの利用交通機関は都営交通及び路線バスとなっており、路線バスの利用区域は東京都の区域内としております。
最後に、シルバーパスの利用者負担についてでありますが、シルバーパスは、若年世代との間に負担の不公平があることなどの課題があったことから、平成十二年に、都民の理解を得て見直しを行い、所得に応じて、区市町村民税非課税の方は千円、課税の方は二万五百十円の利用者負担をいただく仕組みとなっております。
また、平成十八年度から、課税の方であっても合計所得金額が百二十五万円以下の方には、税制改正に伴う経過措置として、千円でパスを発行しております。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕
○産業労働局長(藤田裕司君) 学校給食における地産地消の推進についてでございますが、学校給食に都内産農産物を供給することは、小中学生の食への理解を深め、地産地消の推進につながることから、農業振興を図る上でも有効な取り組みでございます。
このため都は、平成二十三年度に、とうきょう元気農場を開設し、そこで生産された都内産農産物を、農地のない区などの学校給食に供給しております。
今年度からは、多摩地域で生産された農産物のさらなる供給拡大を図るため、モデル区を設定し、JAや農業者、栄養士等による協議会において、出荷品目や配送方法等の検討を進めるなど、学校給食を通じた地産地消の推進に取り組んでいるところでございます。
〔十五番池川友一君登壇〕
【再質問】
○十五番(池川友一君) 多摩格差のゼロについて、知事に再質問します。
これは、都知事選挙で小池知事が出した選挙広報の一部です。(パネルを示す)ここには、多摩格差ゼロを目指すとあり、七大公約の中に多摩格差ゼロがうたわれています。さらに、都議選のときに知事が代表を務めた都民ファーストの会の公約でも、多摩格差の解消を重点公約に掲げています。
ところが先ほどの答弁で、知事からは、多摩格差ゼロという言葉がありませんでした。知事が発表した多摩の振興プランにも、多摩格差ゼロはありません。
知事、公約である多摩格差ゼロの立場で取り組むことをはっきりしてください。それとも、公約をおろすのでしょうか。知事の明確な答弁を求めて、再質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
【再質問への答弁】
○知事(小池百合子君) 池川友一議員の再質問にお答えをさせていただきます。
知事選当時の私の公約、これをまとめていただいて、アピールしていただいたこと、大変ありがたく思っているところでございます。
地域の実情を的確に把握して課題を一つ一つ丁寧に解決をしていく、今示していただきました公約も一つ一つ丁寧に進めているところでございます。
そして、多摩地域の持続的な発展につなげていくことは極めて重要。そのために、日々、多摩格差をどのようにして削減していくか、縮減していくかということについて努力をしているところでございます。
以 上