第4回定例会に提出した文書質問
文書質問 混合介護について
2016年12月13日 あぜ上三和子(江東区選出)
一 混合介護について
知事は、今定例会の所信表明において「10月には、都庁内に東京特区推進共同事務局を立ち上げ、その具体策として、今後、介護サービスの充実や介護職員の待遇改善にもつながる混合介護の弾力化など検討を進める」と表明されました。
1 東京特区推進共同事務局を立ち上げ検討を進めるとした「混合介護の弾力化」とは、具体的にどういうことを考えているのですか。また、都民から「混合介護」の要望があるのですか。
この間、混合介護については国の動きが加速しています。9月5日に公正取引委員会が介護分野に関する調査報告書を発表していますが、その中で「混合介護」が提案されていて、その具体例として、利用料金の自由化やホームヘルパーの指名料を徴収できるなどとしています。介護分野の規制を外し市場競争にゆだねれば介護サービスの供給量がふえ、介護の質、利用者の利便性、事業者の採算性も介護労働者の賃金まで上がると報告書ではその期待を書いています。
また、10月6日、国の規制改革推進会議において混合介護の議論を深めるという発言を大田議長がしたと報道されています。
本会議において知事は「さまざまな意見がある」としながらも「検討しモデル実施をすすめたい」と表明されました。
介護の各区分に限度額が設けられている区分支給限度基準額に比べ利用額の割合についての都内要介護者の状況は、利用額の割合が3割から、一番多い介護5で7割弱となっています。制度はあるけれど負担できないから使えないというのが都内の要介護者の実態ではないでしょうか。
昨年度東京都がおこなった福祉保健基礎調査では、高齢者の約4割が年収150万円未満、世帯の家計もほぼ毎月赤字、ときどき赤字をあわせると約4割にのぼりました。
2 介護保険の利用料負担に加えて新たなメニューを別料金で使えるようになるといっても、保険外部分は10割負担ですから、手が出せるのはごく一部ではありませんか。その点、都は、どのように考えますか、見解を伺います。
広範な高齢者に貧困が広がる中で、国政・都政が責任をもって、誰もがお金の心配なく、必要な介護が受けられるようにすることこそ、求められているのだと考えます。先日公表された都民生活に関する世論調査でも、都政への要望のトップは、昨年よりも4ポイント増加して高齢者対策です。
3 都は、高齢者の生活実態、都民要望について、どう受け止めていますか。必要な介護は公的に保障し、可能な負担で利用できるようにする事が重要と思いますが、見解を伺います。
この間の介護報酬の引下げ等で、介護の現場では職員の処遇改善も困難な中で、事業を継続できないなど深刻な事態が生まれています。また、東京都社会福祉協議会・東京都高齢者福祉施設協議会がおこなった介護保険制度改定にともなう利用者への影響調査報告では「削減と抑制を求めるだけでなく、負担を強いられた高齢者・家族をフォローする新たな施策も早急に検討すべきと考える」としています。
そうしたなかで都が国と一緒になって介護分野の規制を外し市場競争にゆだねることは、介護の利用の格差を広げ、公的介護保険制度の充実を求める都民の願いにも逆行するものと言わざるを得ません。
4 混合介護の検討の撤回を求めますが、伺います。
いま、安心して受けられる介護が切実に求められています。そのためには介護報酬を引き上げ介護施設整備と介護職の処遇改善に努めることと、負担可能な介護保険料・利用料に軽減をはかることです。しかし、安倍政権は、来年度から、高齢者の更なる介護負担増などを計画しています。厚生労働省の社会保障審議会は介護保険部会をひらき、介護保険制度の見直し案づくりに向け、意見が取りまとめられました。要介護1、2の人に対する生活援助サービスを保険対象からはずすことや、福祉用具貸与の全額自己負担化などについては、反対世論と運動に押されて見送りとなりました。しかし、自己負担の3割負担への引き上げなどサービス抑制に向けて負担増や給付減が検討されています。これ以上、公的介護サービスが縮減され、負担が重くなったら、高齢者をはじめ国民の暮らしに大打撃です。
5 介護の負担増・給付減政策を国民に押し付けることは、介護の公的制度を崩壊させることになると思いませんか。また、国に対し、介護保険制度の国民負担強化につながる見直しはやめるよう求めるべきではありませんか。
平成28年第四回都議会定例会
畔上三和子議員の文書質問に対する答弁書
質問事項
一 混合介護について
1 東京特区推進共同事務局を立ち上げ検討を進めるとした「混合介護の弾力化」とは、具体的にどういうことを考えているのか伺う。また、都民から「混合介護」の要望があるのか伺う。
回答
「混合介護」の弾力化の具体例としては、現行の介護保険制度では認められていない、保険内サービスと保険外サービスの同時・一体的な提供や、公定価格以外の指名料の設定などが考えられます。
「混合介護」に関しては、様々な意見があることは承知しており、具体的な内容については、広く関係者から意見を聴取しながら検討していきます。
質問事項
一の2 介護保険の利用料負担に加えて新たなメニューを別料金で使えるようになるといっても、保険外部分は10割負担であるから、手が出せるのはごく一部ではないか、都の見解を伺う。
回答
「混合介護」の弾力化が認められることにより、事業者が創意工夫を行う幅が広がり、利用者の利便性やサービスの質の向上、ひいては介護職員の待遇改善にもつながることが期待されます。
具体的な内容については、広く関係者から意見を聴取しながら検討していきます。
質問事項
一の3 都は、高齢者の生活実態、都民要望について、どう受け止めているか。必要な介護は公的に保障し、可能な負担で利用できるようにする事が重要だが、見解を伺う。
回答
高齢者対策は、平成28年度の「都民生活に関する世論調査」において、東京都に特に力を入れて欲しい対策のトップに挙げられているなど、都政の重要な課題と認識しています。
都は、高齢者の介護を社会全体で支え合う介護保険制度の安定的な運営に努めるとともに、高齢者ができる限り住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいます。
質問事項
一の4 都が国と一緒になって介護分野の規制を外し市場競争にゆだねることは、介護の利用の格差を広げ、公的介護保険制度の充実を求める都民の願いにも逆行するものと言わざるを得ず、混合介護の検討の撤回を求めるが、見解を伺う。
回答
「混合介護」の弾力化に当たっては、広く関係者から意見を聴取しながら検討を進めていきます。
質問事項
一の5 介護の負担増・給付減政策を国民に押し付けることは、介護の公的制度を崩壊させることにならないか。また、国に対し、介護保険制度の国民負担強化につながる見直しはやめるよう求めるべきだが、見解を伺う。
回答
介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合う社会保険制度であり、将来にわたり持続可能なものとしていく必要があります。
都は国に対し、利用者負担の見直しに当たっては、低所得者に配慮するとともに、過度の負担が生じないようにすることを提案要求しています。
以上