第4回定例会に提出した文書質問
文書質問趣意書 東京都建築安全条例について
2016年12月13日 大島よしえ(足立区選出)
一 東京都建築安全条例について
1 共同住宅と呼ばれるアパート、マンションは、建築基準法では特殊建築物に位置づけられていて、住宅棟の一般的な建築物に比べて、防火対策などの規制が強化されています。ところが近年、「重層長屋」とよばれる、共同住宅と同規模な集合住宅が増えていますが、共同住宅とは違う規制がかけられています。重層長屋と共同住宅の定義はそれぞれどのようなものか。また規制の違いは何か伺います。
2 東京都建築安全条例では、民家で四方を囲まれている住宅地を分割する場合、道路に2メートル以上接していなければなりません。ところが道路から奥まったところにある敷地については、道路までの通路を確保するため、旗竿形状の路地状敷地が形成されます。共同住宅を含む特殊建築物は建築安全条例第10条で、「特殊建築物は路地状部分のみによって道路に接する敷地に建築してはならない」と明記され原則として路地状敷地には建てられませんが、そのように規制する理由について伺います。
3 一方、多数の人が住む重層長屋は、特殊建築物に含まれないと解釈され路地状敷地に建設可能となっていますが、その理由は何か伺います。
4 共同住宅を含む特殊建築物は、不特定多数の人が利用する建築物であるということから、建築基準法の耐火性能について厳しく規制されています。
しかし、重層長屋は共同住宅に求められている2方向避難経路が不要であり、消防法により消防用設備を設置し、維持しなければならないというような規定はなく、戸建て住宅と同じ規制の扱いとなっています。
重層長屋で火災が起きたらどうなるのか。路地状敷地に建てられた重層長屋は、路地状幅員が2メートル以上あれば建築可能なため、避難通路の幅が狭く、消防車も中まで入れず、火災が周辺に拡大する恐れがあります。路地状部分をはじめとする避難経路に入居者が集中した場合、逃げることも容易でない状況に陥ります。こうした長屋の火災などの安全性について、どのように認識していますか。対策はどのように確保するのか伺いたい。
5 路地状敷地が不動産業界でにわかに注目を集め、土地の有効活用ができると宣伝され、重層長屋の建設が増えています。都として都内に建築された路地状敷地における重層長屋の件数について把握していますか。
6 重層長屋が建築されることにより、防災問題、通風・採光など環境問題で近隣住民の不安や苦情が高まり、深刻な建築紛争が起きています。都は、都内における路地状敷地におけるこうした長屋についての周辺住民をはじめとした都民の声について、どのように把握しているか伺いたい。
7 現在、足立区西竹ノ塚で、同一敷地内に木造2階建て32戸と30戸のロフトつきの長屋が2棟建設されることになり、住民の間に不安が広がっています。敷地面積も1000平方メートル以上あるものを2つに分割し、高さも10メートル以内ぎりぎりに押さえて開発行為の届けも免れています。
しかも、路地状敷地に入る道路幅員は、建築基準法第42条2項道路で、1.8メートル程度の狭さです。長屋建築敷地先から法第42条1項道路に接道するまでの「道」の両側を道路上に築造され、幅員4メートルを確保された状態の道路でなければならないのに、現況の長屋の建築敷地先だけを道路上に築造しても幅員4メートルを確保した状態にはならず、都建築安全条例4条に言う「道路」扱いにはならないと思いますがどうですか。
8 62戸もの重層長屋であっても、都の建築安全条例で言う特殊建築物とは異なり、規制の対象から外れています。災害時の避難や防犯、環境整備を考慮して長屋の建築できる住戸数の制限を都建築安全条例でするべきではないですか。
9 長屋と共同住宅はどちらも集合的に住む用途です。使用上は共同住宅と同じであるのに、建築安全条例で共同住宅に適用される防火規定や避難規定がなく、発災による地域への影響を低減させる規制も少ないのです。共用部の有無だけで長屋と、共同住宅の規制を変えたことが最大の原因になっているのではないでしょうか。同じ集合的に住む用途の重層長屋も都建築安全条例を見直し、重層長屋は特殊建築物に指定し、共同住宅と規制をそろえることを検討すべきではありませんか。
平成28年第四回都議会定例会
大島よしえ議員の文書質問に対する答弁書
質問事項
一 東京都建築安全条例について
1 近年、「重層長屋」とよばれる、共同住宅と同規模な集合住宅が増えているが、共同住宅とは違う規制がかけられている。重層長屋と共同住宅の定義はそれぞれどのようなものか伺う。また規制の違いは何か伺う。
回答
日本建築行政会議による定義によれば、重層長屋を含む長屋は、「隣接する住戸間又は上下で重なり合う住戸間で内部での行き来ができない完全分離型の構造を有する建築物のうち、廊下・階段等を各住戸で共有しない形式のもの」、共同住宅は「隣接する住戸間又は上下で重なり合う住戸間で内部での行き来ができない完全分離型の構造を有する建築物のうち、廊下・階段等を各住戸で共有する形式のもの」です。
東京都建築安全条例上の規制に関する違いは、敷地の接道条件などがあります。
質問事項
一の2 共同住宅を含む特殊建築物は建築安全条例上、原則として路地状敷地には建てられないが、そのように規制する理由を伺う。
回答
東京都建築安全条例において、共同住宅を含む特殊建築物は、火災発生のおそれが大きく、廊下・階段等を各住戸で共有するため避難上の制約があることなど、安全上及び防火上の観点から、路地状敷地の建築制限をしています。
質問事項
一の3 多数の人が住む重層長屋は、特殊建築物に含まれないと解釈され、路地状敷地に建設可能となっているが、その理由を伺う。
回答
長屋については、容易に各住戸の出入口から直接屋外へ出られることに加え、各戸の主要な出入口を道路又は道路に通ずる幅員2メートル以上の敷地内の通路に面するように規定することで、避難上の安全性が確保されることから、路地状敷地に建設可能となっています。
質問事項
一の4 重層長屋で火災が起きたらどうなるのか。路地状部分をはじめとする避難経路に入居者が集中した場合、逃げることも容易でない状況に陥るが、こうした長屋の火災などの安全性について、どのように認識しているのか伺う。対策はどのように確保するのか伺う。
回答
長屋については、火災時などの避難上及び安全上の観点から、各戸の主要な出入口は、道路又は道路に通ずる幅員2メートル以上の敷地内の通路に面しなければならないこととしています。
さらに、耐火建築物又は準耐火建築物でない場合については、主要な出入口が通路のみに面する住戸の数は3を超えることができないこととしていることに加え、一定規模以上のものは、路地状部分の長さに応じた幅員の制限を強化する規定を設けています。
質問事項
一の5 路地状敷地が不動産業界でにわかに注目を集め、土地の有効活用ができると宣伝され、重層長屋の建設が増えているが、都として都内に建築された路地状敷地における重層長屋の件数について把握しているのか伺う。
回答
都内の路地状敷地に建築される一定規模以上の重層長屋の件数は、建築確認に関する区市等への調査を通じ把握しています。
質問事項
一の6 重層長屋が建築されることにより、防災問題、通風・採光など環境問題で近隣住民の不安や苦情が高まり、深刻な建築紛争が起きているが、都は、都内における路地状敷地におけるこうした長屋についての周辺住民をはじめとした都民の声について、どのように把握しているか伺う。
回答
都は、区市との建築行政に関する連絡会議などを通じ、長屋についての情報を収集しています。
質問事項
一の7 足立区西竹ノ塚で、同一敷地内に木造2階建て32戸と30戸の長屋が2棟建設されることになり、住民の間に不安が広がっている。路地状敷地に入る道路幅員は、建築基準法第42条2項道路で、1.8メートル程度の狭さであり、現況の長屋の建築敷地先だけを道路上に築造しても幅員4メートルを確保した状態にはならず、都建築安全条例4条に言う「道路」扱いにはならないと思うが、見解を伺う。
回答
当該道は、特定行政庁が建築基準法第42条第2項の規定に基づき指定したものであることから、東京都建築安全条例上の「道路」となります。
質問事項
一の8 62戸もの重層長屋であっても、都の建築安全条例で言う特殊建築物とは異なり、規制の対象から外れている。災害時の避難や防犯、環境整備を考慮して長屋の建築できる住戸数の制限を都建築安全条例でするべきだが、見解を伺う。
回答
東京都建築安全条例では、火災時などの避難上及び安全上の観点から、主要な出入口が通路のみに面する住戸の数が3を超える場合は、少なくとも準耐火建築物としなければならないこととしています。
さらに、耐火建築物及び準耐火建築物以外の建築物で、一定規模以上のものは、路地状部分の長さに応じた幅員の制限を強化する規定を設けています。
質問事項
一の9 同じ集合的に住む用途の重層長屋も都建築安全条例を見直し、重層長屋は特殊建築物に指定し、共同住宅と規制をそろえることを検討すべきだが、見解を伺う。
回答
長屋については、火災時などの避難上及び安全上の観点から、各戸の主要な出入口は、道路又は道路に通ずる幅員2メートル以上の敷地内の通路に面しなければならないこととしているなど、長屋の特性に応じた規定を適切に設けているものと考えています。
以上