第4回定例会に提出した文書質問
文書質問趣意書 八王子市川町の(仮称)スポーツパーク建設計画について
2016年12月13日 清水ひで子(八王子市選出)
一 八王子市川町の(仮称)スポーツパーク建設計画について
八王子市川町346番1他の約15.4haに、「特定非営利活動法人 東京スポーツビジョン21」が事業主となって、(仮称)八王子スポーツパークの建設が計画されています。スポーツ施設建設は否定するものではありませんが、建設場所やその手法、住民合意に大きな問題があると考え、以下の点について質問します。
この計画は、八王子市西部の川町地区で、市内に公的スポーツ施設が不足しているという理由で、山林を伐採し、谷戸を残土で埋立て、サッカー場2面、野球場1面、テニスコート3面、アーチェリー場等をつくるというものです。
建設予定地の貴重な谷戸は、約55万の大量の建設残土で埋め立てられてしまうことになります。搬入で地域内に入ってくる車両は、10トントラックで12万台にも及び、1日あたり130台と予測されています。地域住民の生活環境悪化も強く懸念されています。
川町周辺は、都立高尾陣場自然公園の一角にあり、豊かな緑に恵まれた地域です。地域住民は突然の(仮称)スポーツパーク建設に数多くの疑問を持ち、同時に、大切な緑の喪失と希少種とされている動植物の絶滅をまねく結果となる、この残土埋立ての方法による(仮称)スポーツパーク建設は、中止して欲しいと要望しています。
東京の緑、特に多摩地域の緑は、減少の一途を辿っています。自然環境を保全する東京都の努力を求めて、以下、質問します。
当初は計画地に、トラックターミナルが建設される予定だったのが、2014年から、スポーツ施設建設へと計画が変更になりました。事業主は、「特定非営利活動法人 東京スポーツビジョン21」と、都南建設株式会社、新開工業株式会社です。スポーツ施設建設は、谷戸埋立の建設残土受け入れは、新開工業株式会社が中心に事業にあたるとのことです。
2012年9月に、事業主が行なった住民への説明によると、建設残土は「株式会社 建設資源広域利用センター」(UCR)から受け入れますが、事業主には1あたり1940円の受け入れ料がUCRから支払われる試算ですから、55万の受け入れとすると10億6700万円になります。
トラックターミナルに比べて、住民が反対しづらいスポーツ施設建設を名目にした、残土処理の事業ではないか、と強い疑問の声があがっています。
1 説明会で、3社共同の事業体の1つである「特定非営利活動法人 東京スポーツビジョン21」の代表者は、自らの名前で書いた事業計画説明書では、工事代金(2億)は協力企業、協賛企業により無担保無利子にて協力をいただく予定です」としているにもかかわらず、説明会では「協力企業の自己資金2億円や土地購入費など、これまでのお金の流れについて全く関知していない」と発言するなど資金計画についての理解がうたがわれ、人材などに照らしてみても、当事者としての能力がはっきりせず、共同事業者としての実態そのものが疑われています。このような事業体が、15.4haもの大規模な開発行為にあたることについて、東京都はどのような判断をお持ちですか。お答えください。
2 また本年10月23日の事業者開催の住民説明会において、事業主は住民に対し、「土砂搬入する財源は考えないで下さい。融資証明、残高証明を出すように八王子市から言われている」と事業者の資金計画について、誠実に説明しようとしていません。資金計画についても住民の問いに答えるべきと考えますが、東京都は、どのような見解をお持ちか、伺います。
3 土砂の搬入をする10トントラックが1日に130台も入って来れば、生活環境に大きな影響を及ぼします。1日に往復260台の通行になります。
当該地には、現在、都道が存在していますが、幅員は広くありません。事業者は、この道路の拡幅と開発地域内に新たな道路をつくる予定にしていますが、これまで生活道路として、車両通行も限られた数だった川町に土砂を積載した大型ダンプが大量に入ってくれば、騒音、振動、空気の汚染などの環境悪化に加えて、交通事故の発生も心配されています。
事業者は騒音、振動、大気汚染について、どのような対策を講じようとしているのですか。
また都は、生活環境の変化について、どのような認識をお持ちか、お答えください。
4 八王子市市街化調整区域の保全にむけた適正な土地利用に関する条例は事業の60%は緑地を残さなければならない、としています。事業主は、八王子市の条例を遵守する、自然環境を破壊するものではない、と説明しています。しかし、限りない自然破壊につながる開発である懸念は拭いきれません。4割の面積の緑がなくなり、高さ38メートルにおよぶ建設残土で埋め立てられる事業によって、この地域に生息している多くの動植物の生息が危ぶまれる事態となります。
特に、東京の区部では絶滅し、多摩地域の中でも、八王子市の当該事業予定地域でしか確認されていない、絶滅が危惧されているシダ類が生息していることは、重視されなくてはなりません。
2014年9月、事業主が行なった住民説明会の資料によると、事業区域内の大径木は12種108本を確認、注目種とされている植物、鳥類、爬虫類、昆虫、魚類、底生動物は69種を確認、その他周辺区域には、1700種を超える動植物が生息していると報告されています。
大規模な樹木の伐採と建設残土埋立で、これらの種が絶滅する事態を招きかねません。生物多様性の大事さが強調されている今日、東京都は、種の保存について、どのようなお考えを持って、開発に対応されるのでしょうか。お答えください。
5 埋立計画地域は、建設局が、土砂災害特別警戒区域と土砂災害警戒区域に指定している箇所が存在します。傾斜が急で、土砂崩壊が起こりやすい場所だからこその指定ですが、この地域の木々を切り、38メートルの高さで建設残土を積み上げる事業が行なわれることは、事業地域の安全性を大きく損なうものではないでしょうか。建設局が、土砂災害警戒区域、特別警戒区域に指定したのは、どのような判断に基づくものでしょうか。また、大量の建設残土の埋立で、地盤の安全性は確保されるのでしょうか。東日本大震災では、盛り土した地盤が崩壊していますし、都内でも荒川のスーパー堤防地域でも盛り土が崩れたりしています。土砂埋立の地盤は安全ではないと考えます。東京都のご見解を、それぞれお示しください。
6 事業区域内の周辺に、保安林があると聞いていますが、保安林は、どのようなものでしょうか。お答えください。
7 保安林又は保安林に隣接する土地で、木々を伐採し、大量の盛り土をする場合、保安林制度上どのような規制があるか、伺います。見解をお聞きします。
8 事業予定地内は、大沢川の源流です。樹林帯には、細い水流があり、下流に向かって水を集め、大沢川となります。この源流の谷戸を建設残土で埋め立てると、水源はどうなるのでしょうか。事業者は、管路を作るなどのことを提案しているようですが、水源が確保される保障は不透明です。
大沢川の源流を保存することについて、いかがお考えでしょうか。お答えください。
9 水源の守られない場合、事業区域内の水生植物や動物が生息している湿地帯はなくなってしまいます。事業主は、この場所をビオトープとする、と説明しているようですが、自然の流水とは異なる流れになった場合、その保障はありません。この点についてのご見解もお聞きします。
10 都市整備局にお聞きします。都内では、水道管や下水道管の敷設工事で建設残土が発生しています。また、外かん道の建設や超高層ビル建設の開発行為で大量の建設発生土が出ています。
都市整備局が把握している都内工事によって生じる建設発生土の実績をお示しください。
11 建設残土の発生を抑制しないと、残土処理の能力が限界を超えることが予測されます。現在でも、建設残土の再利用を名目に、八王子市をはじめとした多摩の山間部などで、谷戸の埋立工事が行なわれ、緑が失われています。都内で一団の緑の塊をなしている多摩地域の自然を守るのは、地球温暖化や大気汚染を防止し、都民生活の安らぎを守る都政の大事な仕事です。
現在、リニア新幹線建設工事も浮上しているおり、さらに建設残土の発生量増加が懸念されていますから、発生抑制の対策を講じることが重要です。
都は、建設残土の発生抑制に向けて、努力されるよう求めます。いかがでしょうか。
12 八王子市議会では、川町地域を中心とした市民の「自然と生活環境を守りたい」との願いを受けて、この4年余、(仮称)スポーツパーク建設計画が市政をめぐる重要な課題となっています。
幅広い市民の運動と、議会では党派を超えて(仮称)スポーツパーク建設計画は、撤回、見直しをと求めています。
この事業計画は、東京都自然環境保全審議会の審議にかかることが見込まれます。審議にあたっては八王子市議会を中心とした地元の意見や要望を踏まえた上で、生物多様性の保全に向けた最善の方策を検討されるよう求めるものです。お答えください。
平成28年第四回都議会定例会
清水ひで子議員の文書質問に対する答弁書
質問事項
一 八王子市川町の(仮称)スポーツパーク建設計画について
1 資金計画についての理解がうたがわれ、人材などに照らしてみても、当事者としての能力がはっきりせず、共同事業者としての実態そのものが疑われているような事業体が大規模な開発行為にあたることについて、都はどのような判断を持っているか伺う。
回答
都市計画法では、開発行為を許可するに当たり、許可申請者に対し、当該開発行為を行うために必要な資力や信用があることを要件としており、施行規則において資金計画書や事業経歴書等の提出を定めています。
したがって、本件区域の開発行為を所管する八王子市においても、事業者の資力や信用については、許可申請を受けた際にその審査において判断するものと認識しています。
質問事項
一の2 事業主は住民に対し、資金計画について、誠実に説明しようとしていない。資金計画についても住民の問いに答えるべきだが、都の見解を伺う。
回答
都市計画法では、国土交通省の「開発許可制度の運用指針」において「許可権者は、申請者には、周辺住民等に対し開発許可手続きとは別に説明、調整を行うよう、指導することが望ましい」という記載があります。この趣旨を踏まえ、本件区域の開発行為を所管する八王子市が、事業者に対して、周辺住民等に対し事業に関する説明、調整を行うよう、適切に指導を行うものと認識しています。
質問事項
一の3 これまで生活道路として、車両通行も限られた数だった川町に土砂を積載した大型ダンプが大量に入ってくれば、環境悪化に加えて、交通事故の発生も心配されるが、事業者は騒音、振動、大気汚染について、どのような対策を講じようとしているのか伺う。また、生活環境の変化について、都の認識を伺う。
回答
当該開発計画については、現時点で許可申請がされていないため、内容は把握していません。
なお、車両通行に伴う騒音及び振動については、騒音規制法及び振動規制法に基づき市町村長が測定を行い、要請限度の超過により道路周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるときは、所要の措置を講ずることとされています。
質問事項
一の4 事業主が行なった住民説明会の資料によると、事業区域内の大径木は12種108本を確認、注目種とされている植物、鳥類、爬虫類、昆虫、魚類、底生動物は69種を確認、その他周辺区域には、1700種を超える動植物が生息していると報告されているが、大規模な樹木の伐採と建設残土埋立で、これらの種が絶滅する事態を招きかねない。生物多様性の大事さが強調されている今日、都は、種の保存について、どのような考えを持って、開発に対応するのか伺う。
回答
都は、東京における自然の保護と回復に関する条例(以下「自然保護条例」という。)に基づき、宅地の造成など土地の形質を変更することで自然環境に影響を及ぼす一定規模以上の開発行為について、知事の許可を必要とする開発許可の制度を設けて運用しています。
開発許可制度では、事業者に一定の緑地面積の確保や、既存樹木等の保護の検討、動植物の生息又は生育についての適正な配慮などを求めており、事業者が許可を受けるためには、これらの要件を満たすことが条件となります。
都は、この制度を適切に運用し、開発行為により損なわれる自然を最小限にとどめるほか、自然が損なわれるおそれがある場合には、その回復を図るよう開発事業者を指導することにより、自然環境の保全に努めています。
質問事項
一の5 埋立計画地域は、建設局が、土砂災害特別警戒区域と土砂災害警戒区域に指定している箇所が存在するが、土砂災害警戒区域、特別警戒区域に指定したのは、どのような判断に基づくものか。また、大量の建設残土の埋立で、地盤の安全性は確保されるのか。都の見解をそれぞれ伺う。
回答
土砂災害警戒区域は、傾斜が30度以上で斜面の高さが5メートル以上の急傾斜地など一定の要件を満たし、かつ、住宅もしくは居室を有する建築物が立地している場合又は平地があり将来住宅等の立地の可能性がある場合において、警戒避難体制を整備すべき土地として指定します。
このうち、斜面の崩壊等により建築物に著しい損壊を生じるおそれがある場合は、住宅分譲や要配慮者利用施設に係る開発行為の制限及び住宅等の構造を規制すべき土地として土砂災害特別警戒区域の指定をします。
八王子市川町においても、現地調査等を行い、これらの要件を満たす箇所を土砂災害警戒区域等として指定したものです。
また、当該建設計画における造成行為による地盤の安全性については、都市計画法や宅地造成等規制法等における許可が必要な場合には、それぞれの法令に基づく審査において確認することとなります。
質問事項
一の6 事業区域の周辺に保安林があるが、どのようなものなのか伺う。
回答
保安林は、水源の涵養、土砂の崩壊その他の災害の防備、生活環境の保全・形成等、特定の公益目的を達成するため、森林法に基づき、農林水産大臣等によって指定される森林です。保安林に指定されている土地では、立木の伐採や土地の形質を変更する行為等が規制されます。
質問事項
一の7 保安林または保安林に隣接する土地で、木々を伐採し、大量の盛り土をする場合、保安林制度上どのような規制があるのか伺う。
回答
保安林に指定されている土地については、立木の伐採、土石若しくは樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為等が規制されています。保安林に指定されていない土地については、保安林の規制は適用されません。
質問事項
一の8 事業予定地内は、大沢川の源流であり、この源流の谷戸を建設残土で埋め立てると、水源はどうなるのか。大沢川の源流を保存することについて、都の見解を伺う。
回答
当該開発計画については、現時点で許可申請がされていないため、内容は把握していません。
なお、自然保護条例施行規則第52条では、土地の造成、土地の形質の変更が必要最小限であり、かつ地形に順応した開発計画であることなどを開発許可の要件として規定しています。
都はこの規定に基づき、原則として、水源域の形質の変更を避けるよう求めており、やむを得ず変更する場合には、周辺の自然環境を考慮の上、水道(みずみち)の確保など十分な配慮を行うよう指導しています。
質問事項
一の9 水源の守られない場合、事業区域内の水生植物や動物が生息している湿地帯はなくなってしまう。事業主は、この場所をビオトープとすると説明しているようだが、自然の流水とは異なる流れになった場合、その保障はない。この点について都の見解を伺う。
回答
当該開発計画については、現時点で許可申請がされていないため、内容は把握していません。
なお、自然保護条例に基づく開発許可では、原則として、行為地の面積が1ヘクタール以上の場合、事業者に自然環境調査を実施させるとともに、調査で把握された動植物については、その生息又は生育について適正な配慮がなされた自然環境保全計画書の提出を求めています。
また、保全計画において、事業者が希少植物を移植して保全に取り組む場合には、許可条件としてモニタリング調査を事業者に義務付けることとして、希少植物の保護にも努めています。
質問事項
一の10 外かん道の建設や超高層ビル建設の開発行為で大量の建設発生土が出ているが、都市整備局が把握している都内工事によって生じる建設発生土の実績を伺う。
回答
都が把握している、都内工事によって生じる建設発生土の実績については、平成24年度で約920万立方メートルです。
質問事項
一の11 都は、建設残土の発生抑制に向けて、努力すべきだが、都の見解を伺う。
回答
都は、建設残土の発生抑制のため、「東京都建設リサイクル推進計画」に基づき「東京都建設リサイクルガイドライン」を定め、自ら努めるとともに、建設工事において発生する土砂の再使用などに取り組むよう各事業者に求めています。
質問事項
一の12 八王子市議会では、党派を超えて(仮称)スポーツパーク建設計画は、撤回、見直しをと求めている。東京都自然環境保全審議会の審議にあたり、八王子市議会を中心とした地元の意見や要望を踏まえた上で、生物多様性の保全に向けた最善の方策を検討されるよう求めるが、見解を伺う。
回答
都は、3ヘクタール以上の開発行為に対する許可を行う場合には、自然保護条例に基づき、あらかじめ自然環境保全審議会の意見を聴くこととしています。審議会では、自然環境に関する各分野の専門的な視点から審議を行うほか、当該開発行為が行われる区市町村に対して自然環境保全計画書案に関する意見照会を行うなど、地元の意見も参考にしながら審議を行うこととしています。