本会議 福手ゆう子都議(文京区選出)の一般質問
2021年12月8日の本会議で、福手ゆう子都議(文京区選出)が一般質問を行いました。
★動画(都議会ホームページです。令和3年第4回定例会 > 12月8日一般質問をご覧ください)
★質問全文(質問原稿)です。
1.都営住宅について
★〔答弁〕
○知事(小池百合子君)
○警視総監(大石吉彦君)
○教育長(藤田裕司君)
○住宅政策本部長(榎本雅人君)
○交通局長(内藤淳君)
私は文京区内にある医療生協の病院で8年間働いてきた中で、安心して暮らせる住まいが重要だと痛感してきました。都営住宅に入りたい何人もの区民の方の相談や応募の手伝いをしてきましたが、何度応募しても当選せず、その間に病気になって県外の施設に入った方など、たくさん見てきました。
「高齢で階段が上がれなくなった」「家賃の支払いが大変になった」ので引っ越そうにも、区内で住まいを見つけられず、住みなれた文京区を離れるしかありません。
退院後の住まいの確保も難しく、入院を延長する実態があります。
文京区が行う障害者福祉に関する会議でも「文京区は低家賃の住居がかなり少ない」「生活保護の支給額内で住めるアパートは風呂無しが多い」という実態が出されていました。
Q1 住み慣れた地域で、身体状況や所得に応じた住まいが探せない状況がある中で、都営住宅の果たす役割を知事はどう認識していますか。
Q2 文京区では、都営住宅の公募数が極めて少なく、直近5年間で公募にでたのはたった45戸です。倍率も、2020年8月募集で本郷4丁目アパートが250倍、2021年8月の募集でも188倍と異常な高さです。耐震化の対象のアパートは空いていても募集が停止され、更に募集枠が狭まっていることも一因ですが、そもそも文京区の都営住宅戸数が少なすぎるのです。建替え時に戸数を増やすべきですが、見解を伺います。
建替えによる移転などは住人にとって生活が一変する、大変な出来事です。
Q3 住まいをどうするかを考えるのは十分な時間が必要ですから、住人に事前に十分な時間的余裕をもって、きちんと情報は知らせていくべきです。同時に、今後の建て替えの時のため、区内の仮移転先の確保の計画もしっかり示していくべきです。伺います。
例えば、私の地元の後楽園や大塚の都営住宅は、昭和30年代に建てられ、70年が経とうとしていますが、今後の方針も説明されず、一度も耐震診断が行われていません。住人からは「地震が怖い」という声や、「廃墟の写真を撮りに不審者がカメラを持って都営住宅内に勝手に入ってきたことがあった」と話してくれました。住人の不安は計り知れません。早期に説明と対策をとることを求めておきます。
次に、痴漢・盗撮対策について被害の具体的な状況も示しながら質問します。
私たちは11月に都内の電車・駅での痴漢被害と、盗撮被害についてのウエブ・アンケートを実施し、10日間で約1200人もの方が回答を寄せてくれました。
「ワンピースのボタンの隙間から指を入れて太ももを触られた」「体を密着してきてお尻に性器を押し付けられた」「足がつかなくなるほど満員の電車で、スカートの下から女性器に指を入れられた」と深刻な被害状況が記載されていました。ショックや恐怖で抵抗できず、さらに「勘違いと言われるのではないか」と懸念して、声を上げづらくなっています。声を上げても、周囲に知らないふりをされる場合も少なくなく、駅員や警察の対応が不適切で傷ついたという声も多数ありました。
高校生から「盗撮もひどい」という声を聞き、盗撮被害もアンケートの対象にしました。「足の間にトートバッグをねじ込まれて、バッグ内にカメラのレンズが確認できた」などの被害が寄せられました。
盗撮は、スマホの普及等で増加し、検挙件数だけでも10年間で2倍になっています。盗撮は下着を盗み撮りされるだけでなく「大切な自尊心」や「安全な生活の感覚」も奪われます。「被害にあってから、夜道もエスカレーターも階段も、必死にスカートを押さえながら、後ろをキョロキョロ見て生活している」という声も寄せられました。しかも画像が加害者の手元に残ることや、画像がネットに流出する恐怖があります。
Q1 盗撮被害も痴漢被害も、深刻な性犯罪、あってはならない人権侵害です。盗撮や痴漢など性暴力被害による心身に及ぶ重大な影響の実態を、知事はどう認識していますか。
また、被害の実態を把握し、関係機関と連携して、声を上げたくても上げられない被害者に寄り添った支援を強化すべきです。併せて知事の認識を伺います。
わが党が昨年行った痴漢被害の調査では、電車の中で被害にあった方が7割以上、今回の私たちの調査でも盗撮された場所の1位は「公共の乗り物」3位が「駅構内」でした。毎日利用する鉄道や駅が皮肉なことに、女性にとってはリスクの高い性犯罪スポットになっているのです。鉄道での対策が急がれます。
Q2 痴漢・盗撮等の被害への交通局の認識について伺います。
昨年度の都営地下鉄での痴漢の警察通報件数は28件に過ぎず、駅員に申し出があった件数は把握もされていない状況です。私たちのアンケートにも「チカンを目撃した際に駅員に知らせましたが、対応してくれなかった」「鉄道会社には犯罪が自社内で多発していることの認識・共有を強めてほしい」などの声が寄せられています。
Q3 被害者が最初に駆け込むのが駅員のところです。痴漢や盗撮被害の対応の職員研修を本気で行うべきです。あわせて、都営交通内の安全と安心に責任をもつ交通局が、都営交通で起こっている痴漢や盗撮の実態を独自で把握するべきです。
ある高校生は、勇気を出して警察に届けたのに、現場で盗撮被害の再現をさせられた挙句、「決定的な証拠がないので、逆に名誉棄損で訴えられるだろう」と言われて被害届を出すのを諦めさせられ、「今後エスカレーターの乗り方に注意して生活するように」と注意が足りなかったかのように言われました。男性警察官の前で、被害と同じ状況を繰り返し再現させられ、被害時の気持ち悪さを思い出し、恥ずかしく怖かったと述べていました。
Q4 警視庁は、痴漢や盗撮などの性犯罪被害者の対応に、被害者が望む性別の警察官が対応するとしていますが、実際はそうなっていない実態があります。どう徹底して取り組むのですか。
痴漢被害は満員電車でも空いている車両でも起きており、女性専用車両の終日化、夜間の設置、導入路線や1編成中の車両数を増やすことが強く要望されています。ところが都営地下鉄の4路線のうち、女性専用車両があるのは新宿線のみです。
交通局は、他社との乗り入れがあることや、女性専用車両導入による混雑を理由に、導入するには課題が多いとしています。
Q5 交通局自身も加わって2011年に作られた電車内の痴漢撲滅に向けた取り組みに関する報告書は、女性専用車両の拡大を提言しています。札幌市ではアンケートを取り、6両編成の電車にも女性専用車両を入れています。熊本県では2両編成でも実施しています。都内では相互乗り入れ路線で導入しているところはたくさんあります。都営地下鉄の女性専用車両を拡大すべきですが、いかがですか。
来年度から8両編成となる都営三田線に女性専用車両を導入すること、並行して走る東京メトロ南北線についても、都として導入を働きかけることを強く求めます。
女性に対し「気をつけて」という内容のポスターは、被害にあったのは気をつけていなかったからと被害者を責めるものになるので、改善してほしいという声も多数寄せられました。実際に、駅構内には「痴漢・盗撮に注意」と、自衛を求めるポスターやステッカーが貼られています。
性暴力の問題で周知すべき角度は、責められるべきは加害行為であること、被害者や周囲にいる人が、どう行動すべきか、110番通報したらどうなるのかなどの不安や疑問に答える内容であること、被害者は保護されることです。
京都では、女子大生と鉄道警察隊が意見交換を重ね、女性の意見を取り入れた、周囲の人ができる具体的な行動を伝えるポスターを作製しています。
Q6 ポスター等周知の内容や方法を、女性や若い方たちの声をきいて、実施することを求めますが、警視庁に答弁を求めます。
痴漢などが多い根本には、日本に根強い男性優位社会の影響があります。アンケートでは約8割の方が、痴漢対策に必要なことは人権教育、性教育だと回答しました。
Q7 盗撮や痴漢は性差別の中でうまれた行為です。盗撮は犯罪で、勝手に写真を撮ることは暴力性があることや、盗撮や痴漢が人権侵害であることを、学校教育の中で教えていくことが必要ですが、いかがですか。答弁を求めます。
電車通学の子どもの被害も深刻です。「何度もその日の通学中に遭遇した痴漢の話を友達に聞いた。下着の中に手を入れられショックで泣きながら話している子もいた」「登下校で痴漢されたという話は珍しくありません。被害にあった子を友達みんなで慰めます」と、子どもたちは日常的に被害にさらされています。
Q8 学齢期の子どもが受ける性犯罪で、一番多いのが痴漢行為だというのが都民の実感です。特に電車通学が多い東京では深刻です。子どもの置かれた実態を、どう認識していますか。
Q9 通学中に痴漢や盗撮被害にあったことによって、学校に遅刻した場合、被害者は遅刻または授業欠席扱いになってしまいます。不利にならない扱いとすることや、痴漢や盗撮についての相談ができる場所を用意するなど、学校での痴漢被害に対するルールを作成することを求めますが、いかがですか。
ある高校生は、恥ずかしいという思いから、被害を「痴漢にあっちゃった」と軽くしか言えず、男性教員にとりあってもらえず、言っても意味がないと思ったそうです。
Q10 国の性犯罪・性暴力対策の強化の方針は、学校での対応の中心となる関係教職員には、性被害の深刻さや加害生徒を含めた対応について必要な研修を行うべきとあります。早急に具体化するべきですが、見解を伺います。
痴漢や盗撮といった性暴力は差別社会の中から生み出されています。人権、民主主義、ジェンダー平等を進めることが重要です。
被害の実態から学び、一人ひとりの意識を変え、痴漢、盗撮ゼロの社会へ、みんなで力をあわせることをよびかけて、質問を終わります。
【答弁】
○知事(小池百合子君) 福手ゆう子議員の一般質問にお答えいたします。
性暴力被害者への対応についてのお尋ねでございました。
都は、盗撮や痴漢等の性暴力を含む、犯罪被害による心身への影響などについて実態調査を行っております。調査からは、性暴力の被害によって強い不安感などの症状が現れ、精神的なダメージを受けることが明らかになっております。
こうした実態を踏まえまして、都は、性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援センターにおきまして、医師等によるカウンセリングなど被害者に対する支援を適切に行っております。
その他の質問につきましては、警視総監、教育長と関係局長からご答弁させていただきます。
○警視総監(大石吉彦君) 二点のお尋ねについてお答えいたします。
まず、痴漢や盗撮などの性犯罪被害者への対応についてでありますが、警視庁では、被害者が望む性別の警察官による対応ができるよう、性犯罪捜査を担当する係への女性警察官の配置等の取組を推進しており、今後も、被害者の心情に配意した取組を行ってまいります。
次に、痴漢被害防止に向けた広報啓発の内容等についてでありますが、ポスターの作成を含め、痴漢対策の推進に当たっては、性別や年齢に関係なく、多くの方々のご意見を踏まえた上で、実効性が認められる取組を行うことが重要であると考えております。
警視庁では、今後とも、関係事業者等と連携し、痴漢被害防止に向けた効果的な取組を進めてまいります。
○教育長(藤田裕司君) 四点のご質問にお答えいたします。
初めに、学校において人権意識を育むことについてでございますが、学校では人権教育を通して、生命はかけがえのない大切なものであることや、相手を尊重し思いやること、偏見や差別意識を解消することなどについて、道徳科をはじめ、学校教育全体で指導しております。
次に、子供の痴漢等の被害についてでございますが、痴漢、盗撮の行為は、身体だけでなく心へも深刻な影響を及ぼすため、被害に遭った子供の心に寄り添った対応を行うことが重要でございます。
また、低学年も含め児童が被害者になることがないよう、発達段階に応じて登下校時に犯罪や危険に遭遇することを防ぐ観点からの指導を行い、子供自身の防犯意識の向上を図り、安全に行動できるよう支援していく必要があります。
次に、痴漢等の被害に遭った子供に対する学校についての対応についてでございますが、被害を受けた子供には、カウンセリングルームなど相談しやすい場所で養護教諭等が話を聞くなど、子供の心情に十分配慮した対応を行うとともに、被害等の状況に応じてスクールカウンセラーや関係機関につないでおります。
また、通学途中に痴漢等の被害に遭ったことにより学校に遅刻した場合には、子供の不利益にならないよう出席扱いにするなど、各学校で柔軟に対応しております。
最後に、教職員への研修についてでございますが、教職員が被害を受けた子供の置かれた状況を踏まえ、その心に寄り添った相談支援を行うことや、加害者となった子供がいた場合には、面談に基づいて適切に指導することができるよう、研修を通して、性犯罪、性暴力等への対応について理解を深められるようにしております。
都教育委員会は、都内公立学校全ての教職員を対象に、学校における被害者支援の現状や性暴力被害の予防に向けた取組などについて、内閣府が作成した研修動画を視聴するよう促し、被害の現状や効果的な予防啓発の手法について理解を図っております。
○住宅政策本部長(榎本雅人君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、都営住宅の果たす役割についてでございますが、都民共有の財産である都営住宅につきましては、これまでも既存ストックの有効活用を図り、適切な供給や適正な管理に努めてまいりました。
今後とも、既存ストックの有効活用を図り、住宅セーフティーネットの中核としての機能を的確に果たせるよう取り組んでまいります。
次に、文京区内の都営住宅についてでございますが、都営住宅の建て替え事業におきましては、居住者の世帯数等を踏まえるとともに、立地条件、建築規制等について検討し、地元区等と協議の上、建設戸数を決定しております。
文京区におきましても、既存ストックを有効に活用しながら、適切に建て替え事業を行っていくこととしております。
最後に、都営住宅の建て替え等の情報提供についてでございますが、都営住宅の建て替えや撤去につきましては、老朽化の度合い、居住者の移転先の確保の状況、地域のまちづくりとの連携などを勘案しながら計画的に実施しております。
建て替え等に伴う居住者の移転につきましては、計画がまとまり次第、居住者に説明し、理解を得ながら進めております。
○交通局長(内藤淳君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、痴漢、盗撮等の被害への認識についてでございますが、痴漢や盗撮は犯罪であり、加えて、被害に遭われた方の心に一生の傷を負わせることにもなりかねない行為です。決して許されるものではないと認識しております。
次に、痴漢被害への対応に関する職員研修についてでございますが、都営地下鉄では、全ての駅係員が適切に対応できるよう、痴漢被害の訴えがあった場合の手順を駅業務ハンドブックに定めまして周知徹底しているほか、朝の点呼等では痴漢に関する事例を共有し、注意喚起を行うなど、日頃から業務を通じた対応力の向上を図っており、引き続きこうした取組を進めてまいります。
最後に、都営地下鉄における女性専用車両の拡大でございますが、女性専用車両は、痴漢等から女性を守るなどの観点から、路線の実情に応じまして、利用者のご協力の下に運用されているものでございます。
都営地下鉄では、新宿線におきまして平成十七年から導入してございますが、浅草線、三田線につきましては相互直通運転を行っている事業者で対応が異なっていること、また、大江戸線につきましては、小型車両のため定員が少なく、女性専用車両の導入により他の車両がさらに混雑することなど、課題が多いと考えてございます。
以上