2021年第4回定例会を終えて
2021年第4回定例会を終えて
2021年12月15日
日本共産党東京都議会議員団
幹事長 和泉なおみ
1 都立・公社病院の独立行政法人化――都の説明の矛盾と破たんが明らかに
都立・公社病院の独立行政法人化は、引き続き都政の大きな焦点です。今定例会のわが党の論戦で、独法化は「行政的医療を将来にわたって提供するため」という知事がくり返してきた説明は、都民を欺くものであることがはっきりしました。地方独立行政法人法は、3~5年ごとに業務の継続や組織の存続の検討を行い、業務・組織の廃止などの措置を講ずると定めています。その対象には行政的医療も含まれることを、都は認めました。総務省は、「廃止・民営化を含めた業務・組織全般の定期的見直し」をするのが独立行政法人だと説明しています。独法化されたら、感染症や災害医療、小児・周産期医療、難病・障害者医療、島しょ医療など、不採算であっても都民に必要な行政的医療が、「将来にわたって提供」されるどころか、廃止や民営化を含めた定期的見直しの対象にされてしまいます。
独立行政法人は、住民監査制度、住民訴訟制度の対象外になることも、都は認めました。住民によるチェックが弱くなり、都民にとって明らかなデメリットです。独法化に「デメリットはない」と言ってきた都の説明も、成り立ちません。厚労省が9日に発表した全国2286病院のコロナ病床確保数では、都立多摩総合医療センターの245床をトップに、1位から11位まで都立・公社病院が並んでいます。最も積極的、柔軟にコロナ病床を確保して患者を受け入れ、命を守る役割を果たしてきたのが都立・公社病院です。独法化する理由など、何一つありません。
都民の運動はますます広がっています。独法化反対の署名は、累計25万人を超えました。今ならまだ止められます。わが党は引き続き、議会内外のみなさんとともに、都立・公社病院の独法化を中止し、抜本的に拡充するために全力をつくします。
2 コロナ対策、都民のくらしと営業を守るため全力
コロナ対策では、新たな変異株オミクロン株への対応が最重要課題です。都が厚労省に提出した計画では、感染の再拡大が起きた場合、ピーク時には自宅療養者が実に3万人を超え、入院率は10%にとどまると想定しています。このような事態にならないようにすることが、いま最も大事です。そのためには、可能なかぎりすべての陽性者の検体を対象にオミクロン株かどうかを調べること、ワクチン接種の促進とともに、いつでも誰でも何度でも無料でPCR検査を行うこと、モニタリング会議を週1回に戻して兆候を早くつかむことなど、先手・先手の対応を求めました。
コロナ禍に物価高が追い打ちをかけ、都民や事業者が苦境にあることへの知事の認識についてもただしました。知事は、厳しい経営状況にある事業者や、生活に困窮する方々への支援は、「感染症対策とともに重要」だと答弁しました。そうであるなら、都独自の給付金、住居確保給付金の拡充などを実施すべきです。また、消費税5%への減税を国に求めるべきです。
こんなときに国民健康保険料(税)の値上げは許されません。法定外繰り入れを行わない場合、都内の一人当たりの保険料が来年度9.4%も上がり、17万2155円にもなる試算が示され、不安と怒りの声が寄せられています。都は国保運営の中心的役割を果たす保険者として、一般財源を投入し、保険料(税)の引き上げにならない手立てをとること、子どもの均等割の軽減について都として率先して取り組むことを求めました。
3 都民の生活が深刻な中、新たな巨大開発を進めることは許されない
東京五輪終了と同時に、「東京ベイまちづくり戦略」の名で、臨海地域全体の巨大開発計画が動き出しました。東京・千葉を結ぶ「第二東京湾岸道路」などの絵がかかれています。
この計画で、築地市場の跡地が「陸の玄関口」と位置づけられ、大手デベロッパーによる巨大開発のタネ地にされようとしていること、IRカジノ誘致が盛り込まれている「官民連携チーム」の提案を参考にするとしていることも重大です。超高層ビルを林立させる開発は、気候危機打開にも逆行します。
コロナ禍で都民のくらしが深刻ななか、新たな巨大開発を進めることは、とうてい許されません。かつての臨海副都心開発失敗への反省もなく、総事業費も示さず、バラ色に描いて既成事実にすることは、きっぱりやめるべきです。そしてコロナ対策や都民のくらしと営業への支援をはじめ、地方自治体本来の仕事である住民福祉の増進に、都政の総力をあげて真剣に取り組むことを厳しく求めました。
また今定例会で、カジノ誘致の中止を求める請願が審議され、わが党と立憲、グリーンな東京、生活者ネットは賛成しましたが、自民、公明、都民ファ、維新などの反対で不採択になりました。なかでも維新が、都市整備委員会で、カジノ推進を公然と主張したことは重大です。
4 都民要求実現、ジェンダー平等、気候危機打開など積極的に提案
<18歳までの医療費無料化条例案> わが党は今定例会に、18歳までの医療費無料化条例を提案しました。都が実施した調査でも、医療機関の受診抑制の理由として、お金が払えないと回答した割合は、中学校2年生に対して16歳から17歳では3倍になります。その理由として、医療費助成制度が15歳まで対象となっていることが考えられるとしており、18歳までの医療費無料化は、子どもの貧困対策としてもきわめて重要です。残念ながら成立しませんでしたが、引き続き実現に向け力をつくします。
<ジェンダー平等> 知事が、パートナーシップ制度について、来年度に開始することを表明したことを歓迎します。当事者の方々から丁寧に声を聞き、多くの人が利用できるよりよい制度にするとともに、ファミリーシップ制度についても導入するよう求めました。また、ジェンダー視点をあらゆる政策や施策の土台に据える「ジェンダー主流化」を実践すべきだという質問に、都は「政策や施策の企画、立案段階から、男女平等参画の視点をもって進めることは重要」という画期的な答弁をしました。
都議団として鉄道や駅の痴漢・盗撮被害アンケートを行い、10日間で1200件以上寄せられた回答をもとに質問し、交通局は「被害に遭われた方の心に一生の傷を負わせることにもなりかねない行為であり、決して許されない」という重要な認識を示しました。都として実態調査と対策を行い、痴漢等から女性を守る女性専用車両の導入を進めることなどを提案しました。
<特別支援学校> 特別支援学校の教育環境の改善を求めたわが党の質問で、間仕切りをして複数の学級で使っている普通教室は178教室、特別教室の普通教室への転用が374室もあることがわかりました。また、国が今年9月に初めて制定した設置基準に照らして、校舎の面積が下回るのが2校、校庭の面積が下回るのが41校にのぼります。さらに児童生徒数は、今後10年間で2800人も増える見込みです。こうした現状を、一刻を争って改善するためにも、通学しやすく落ち着いた、小規模な特別支援学校の増設、そのための用地確保が重要です。
<気候危機打開> 全庁一体で取り組む気候危機対策本部の設置、対策予算の抜本的拡充、都の既存施設への太陽光パネル設置、都営住宅で率先して省エネ・再エネに取り組むことなどを提案。補正予算では、東京ゼロエミ住宅導入促進事業の予算増が実現しました。
5 19議席に前進した力で、都民の願いが届く都政・都議会に
都議選の結果、「一強政党」がなくなったことを背景に、手話言語条例を超党派でつくるワーキングチームが発足するなど、新しい動きが始まりつつあります。
日本共産党都議団は、19議席に前進した力を大いに生かし、議会内外の多くのみなさんと力を合わせて、都民の願いが届く都政・都議会にしていくため、がんばります。
以 上