本会議 原純子都議(江戸川区選出)の一般質問
2022年2月24日の本会議で、原 純子都議(江戸川区選出)が一般質問を行いました。
★動画(都議会ホームページです。令和4年第1回定例会 > 2月24日一般質問をご覧ください)
★質問全文(質問原稿)です。
一、放課後デイサービスについて
二、23区東部地域の水害対策について
☆【答弁】
○知事(小池百合子君)
○福祉保健局長(中村倫治君)
○建設局長(中島高志君)
○総務局長(村松明典君)
○住宅政策本部長(榎本雅人君)
障害があってもなくても、子どもは皆、社会の宝です。
私は、これまで放課後等デイサービスで、働いてきました。
ある日、小学校へ迎えに行くと怒りで顔が真っ赤の5年生男子、音楽の時間の楽器決めで大太鼓がやりたかったのにじゃんけんで負けたと。わんわん泣く彼でした。放デイに着いて泣ききった頃、友だちから「プラレールやろう」と声をかけられ、大好きなレールつなぎに夢中になり、大路線が完成。夕方には「楽しかった」と笑顔で帰りました。
Q1 感情のコントロールが難しい子ども、日常ふいに耳にとびこむ音がつらく苦しむ聴覚過敏な子ども、こだわりが強かったり、思いをうまく言葉に出せないことで誤解されることもたびたび。様々な生きづらさを抱える子どもたちですが、どの子も社会の中で愛され、安心した環境で育つ権利があり、放課後等デイサービスは大事な居場所のひとつです。思春期に入るわが子への接し方に悩む親御さんの思いをうけとめる場でもあります。
放課後等デイサービスの重要性について、知事はどう認識していますか。
2012年の制度化以降、放課後等デイサービス事業所は、都内約1,000か所まで広がり、現在約2万人の児童が利用していますが、昨年4月の報酬改定により、存続が危ぶまれる事業所が生まれています。
Q2 昨年6~7月に東京都が行った調査では、1年前との同月比較で、都内事業所の7割が減収となったことが明らかになり、そのうち「10%以上の減収」が47%に及んでいます。都内のある法人は、運営する3事業所合わせて年間1,200万円減収になるとのお話でした。別の法人の職員からも「毎月法人の預金を取り崩している」「スタッフの雇用を守るのが大変。明るい気持ちになれない」との声が上がっています。コロナ禍で学校休業中の朝からの受け入れや感染対策など苦労が続く中、今回の減収は、大きな痛手です。
子どもたちの放課後の重要な居場所の存続さえも困難になっている状況をどう認識していますか。
減収の大きな要因は基本報酬の引き下げです。同時に、職員配置に関する加算が変更されたことの影響も深刻です。これまでは、5年以上経験のある保育士や児童指導員を追加して配置した場合、2人目まで加算の対象とされていたのが、1人までしか認められなくなりました。せめてこの点だけでも改善してほしいと、1万人を超える方々から都議会に陳情が提出され、昨年6月に全会一致で趣旨採択されました。
Q3 今回、都型放課後等デイサービス事業の新年度予算案が組まれたことは重要ですが、あれこれの補助要件を設定し、すべてを満たした事業所へ財政補助を行う制度になっています。事業所の実態や陳情の趣旨を踏まえれば、職員配置に関する加算の変更による減収分を補填することが必要です。いかがですか。
Q4 19時までの開所や自宅までの送迎が、補助の要件にされていますが、これは事業の目的である支援の質の向上とは別の問題です。
放課後等デイサービスは、子どもを主体として発達をはぐくむ場です。開所時間の延長は、保護者の就労保障になります。しかし、在園時間が延びることは子どもにとって大きな変化であり、夕食のこと、休養できるスペースなども考えなければなりません。療育時間が延びれば、そのための職員配置も必要です。安易に補助要件に追加するのではなく、時間延長するなら、十分な議論と条件整備が必要です。
また、車での送りを実施していない事業所は、保護者のお迎えの時にお子さんの様子を共有することを大切にしているからです。
19時までの開所と送迎を都型放課後等デイサービスの補助要件としないよう求めます。いかがですか。
Q5 児童発達などの最新の知見を学べる研修への職員参加や、実践交流などへの財政支援をすすめるべきだと思いますがいかがですか。
Q6 知事は、「質の向上を後押しする」と施政方針で表明しました。そのためには、何より職員の十分な配置と専門性を高める取り組みが必要です。いかがですか。
Q7 根本的な問題は、放課後等デイサービスの職員配置基準が低すぎることです。基準は、利用児童10人に対して職員2人ですが、この基準では安全確保さえ困難です。「障害のある子どもの放課後保障全国連絡会」の調査では、10人定員の事業所で常勤換算で5・2人で療育しています。
職員配置基準の引き上げを国に求めるとともに、都の条例で定めている基準の引き上げを求めます。いかがですか。
Q8 厚生労働省の調査によれば、放課後等デイサービス常勤職員の平均給与は、月額24万4,960円です。都の調査でも雇用年数3年未満の職員が約半数です。働き続けられる職場になっていないことは明らかであり、知事が言う「質の向上」にも逆行です。どう認識していますか。
Q9 都として直ちにできることは、障害福祉サービス等宿舎借り上げ支援事業を拡充し、保育園の制度と同様、条件を付けずに、8分の7の助成にすることです。いかがですか。
福祉を支えるのは人です。利用者や家族に寄り添い、専門性を磨きながら働き続けられることこそ、福祉の質を高めます。
障害福祉にかかわる皆さんを励ます施策を進めるよう求め、次の質問に移ります。
区内の7割がゼロメートル地帯に住む江戸川区民をはじめ東部低地帯に住む250万人の都民にとって、豪雨・台風への対策は緊急かつ最大の課題です。2019年台風19号の際、荒川が危険水域となり、区の避難勧告により、区民3万5千人が避難しましたが、その中で、避難することをあきらめ、身の危険を感じながら夜を明かした高齢の単身者や寝たきりの家族を抱えた世帯が何組もいたことを、私は後日地域をまわって知りました。
Q1 毎年各地で、かつてない規模の豪雨・台風による洪水被害が起こっているなか、東部地域住民の命を守り抜くことは、地元区だけでなく東京都の重要な責務だと思いますが、知事の認識を伺います。
いま都立篠崎公園地区で、高規格堤防整備事業などが進められています。用地買収交渉が15年に及ぶ中で、泣く泣く土地を離れる地権者があいつぎました。くしの歯が抜けるように家がなくなり、街が変わっていきました。今は空き地が増え、災害時に大きな力を発揮する町のコミュニティも壊されてしまいました。
450基のお墓があり、750年の歴史をもつ妙勝寺は、河川や公園の整備のたびに移転を迫られ、今回が3度目です。
また、緑地の少ない東部地域に貴重な存在である篠崎公園は、今事業で800本以上の樹木が伐採される計画で、緑地の確保からみても逆行です。
北小岩や平井で進められた高規格堤防でも、もともと住んでいた住民は約半数が戻れず、大きな犠牲を強いられています。
そもそも高規格堤防は一区画だけできても治水効果は期待できません。未整備の堤防で決壊が起きれば、地域の浸水は避けられません。
高規格堤防がいつ、すべてつながるのか、国も都も誰も見通しを持っていません。
Q2 治水対策にならず、住民犠牲で街壊しの高規格堤防事業は中止し、真に地域コミュニティを守る政策へと転換すべきですが、いかがですか。
わが党は、喫緊の水害への備えとして、越水しても壊れにくい堤防に強化することが重要であることを繰り返し求めてきました。
Q3 近年の水害の教訓から、越水しても壊れにくい堤防として被覆型の堤防が国で再評価され、千曲川、球磨川で実施されています。荒川の堤防対策を急いで真剣に追求するというなら、この工法の研究・実施を国に求めるべきですが、都の見解を伺います。
Q4 大地震による津波や高潮に対し、堤防や水門などの耐震・耐水強化は重要です。整備計画を前倒しし、整備を進めることを求めますがいかがですか。
Q5 避難対策の大きな柱である広域避難と垂直避難は、いずれも地元区だけでは対応できません。都が直接できることは何か、地元区への支援では何が必要か、東京都の役割が重要ですが、見解を伺います。
Q6 各自治体を超えた広域避難先の確保は東京都の大事な役割であり、国立オリンピックセンターを確保したことは重要です。都が目標としている74万人分の避難先を確保するために、受け入れ可能な都立施設はもちろんのこと、国や民間の施設をさらに確保するため、どう具体化するのですか。
コロナ禍での避難を想定し、今まで以上に避難所を増やすこと、水害時に浸水しない上層階の避難スペース確保が急務です。
Q7 垂直避難場所の確保では、都営住宅建て替え時の上層階への集会室設置について、江東区塩浜2丁目団地で始まったことは大事な前進です。江東5区は、この建て方をスタンダードにしてはどうでしょうか。
江戸川区には、在宅の要介護3以上の方が4千人、要支援障害者を含めると5800人の避難行動要支援者がいます。避難計画を実効性あるものにするためには地域のネットワークが欠かせません。
Q8 地域の誰もが安全で確実に避難できるよう、誰が、いつ、何をするかを、地域で共有し、明確にするコミュニティタイムラインは、重要です。
2年前、東京消防庁は、足立区第18地区自治会連絡会の、コミュニティタイムラインの取り組みを表彰しました。実際、台風19号の時にはこのコミュニティタイムラインが生かされ、地域の皆さんは安全に速やかに避難することができました。昨年には、足立区の地域防災計画に位置付けられ、コミュニティタイムラインの作成が複数の町会に広がっています。都としてこうした取り組みを評価し、都が実施している町会、自治会向けのリーダー研修などでコミュニティタイムラインを位置づけることが必要ですがいかがですか。
待ったなしの災害対策に東京都として全力で取り組むことを求め質問を終わります。
【答弁】
○知事(小池百合子君) 原純子議員の一般質問にお答えいたします。
まず、放課後等デイサービスについてのご質問がございました。
放課後等デイサービスは、障害のある子供たちが、学校や家庭とは異なる環境で生活能力の向上や社会との交流を図る場であり、子供たちが安全・安心に過ごせる居場所として重要な役割を担っております。
国の報酬改定を踏まえまして、放課後等デイサービスへの都独自の支援策を新たに講じ、サービスの質の向上を後押しをしてまいります。
次に、東京の風水害対策についてのご質問であります。
東部低地帯は、台風等による河川の氾濫や高潮などで広範囲の浸水被害が想定され、こうした大規模水害から都民の命と財産を守ることが重要です。
このため、都は、防潮堤等の整備を推進するとともに、関係区と連携いたしまして、都立施設や国、民間施設を活用した広域避難先の確保など、様々な施策を展開いたしております。
引き続き、ハード、ソフトの両面から、東部低地帯などの大規模風水害対策を着実に進めてまいります。
その他の質問につきましては、関係局長から答弁をいたします。
〔福祉保健局長中村倫治君登壇〕
○福祉保健局長(中村倫治君) 八点のご質問にお答えいたします。
まず、放課後等デイサービスの運営状況についてであります。
国は、令和三年度の報酬改定で、放課後等デイサービスの基本報酬を見直すとともに、より手厚い支援を必要とする子供に応じたきめ細かい加算を創設しております。
この報酬改定を受けて、都が昨年六月に実施した調査では、報酬が減少したことや、加算の取得、経費削減などを検討している事業者があることが明らかになっております。
現在、加算を取得する事業者が増加しており、サービス向上に向けた取組が進んでいると認識しております。
次に、障害福祉サービス等報酬についてでございます。
報酬体系など、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス等の制度設計は、国がその役割を担っております。
都は、令和三年度の報酬改定を受けまして、放課後等デイサービスの支援の専門性を確保するため、児童福祉事業に五年以上従事した保育士、児童指導員も専門的支援加算の対象とするよう、国に提案要求をしております。
次に、都型放課後等デイサービスの補助要件についてであります。
国のガイドラインでは、子供の最善の利益の保障とともに、保護者支援も放課後等デイサービスの基本的役割に位置づけております。
こうしたことを踏まえまして、都型放課後等デイサービス事業は、十九時まで開所することを要件としているところでございます。
次に、職員の資質向上についてでございます。
都はこれまで、事業所職員の研修受講を促進するため、必要な代替職員の確保について支援してまいりました。
都型放課後等デイサービス事業では、コア職員を配置するなどして、職員の資質向上を図ってまいります。
次に、放課後等デイサービスの職員配置等についてであります。
都型放課後等デイサービス事業における経験豊富なコア職員の配置は、事業所全体のサービスのスーパーバイズなどを行うことで、職員の専門性を高め、サービスの質の向上を図ることを目的としております。
次に、職員の配置基準についてであります。
放課後等デイサービスの人員配置基準は、国の従うべき基準に基づきまして、条例等で定めているところでございます。
次に、職員の処遇についてでございます。
都は、国に対し、障害福祉サービス等を担う福祉人材の処遇改善に向けたさらなる措置を講じるとともに、計画的な人材育成が困難な状況を踏まえ、人材の確保、育成、定着に向けた支援策を講じるよう、提案要求をしているところであります。
最後に、障害福祉サービス等宿舎借り上げ支援についてであります。
都は、働きやすい職場環境の確保と地域における災害対応力の強化のため、障害福祉サービス等職員宿舎借り上げ支援事業を実施しております。
来年度は、補助対象となる事業所を拡大し、福祉避難所の指定や区市町村との災害時協定の締結の有無により、補助率を設定することとしております。
〔建設局長中島高志君登壇〕
○建設局長(中島高志君) 三点のご質問にお答えいたします。
初めに、高規格堤防事業についてでございますが、国の高規格堤防事業は、首都圏の洪水や地震に対する安全性を高めるとともに、高台まちづくりなどにも寄与する重要な事業でございます。
都は、引き続き、国に対して、地元の意見を十分に聞きながら着実に事業を推進するよう要望するとともに、国等と連携して、篠崎公園の高台化に取り組んでまいります。
次に、被覆型の堤防についてでございますが、国が令和二年に設置した技術検討会の報告書では、洪水時の河川水位を下げる対策を今後の治水対策の大原則としつつ、越水した場合であっても粘り強い被覆型の河川堤防などの整備を、危機管理対応として実施すべきとしております。
これを受けて、国は現在、粘り強い構造の河川堤防に必要となる性能について、技術的検討を継続して実施していると聞いております。
都は、今後とも、その検討の状況を注視していくとともに、荒川の水位を下げ、安全性向上に大きな効果を発揮する荒川第二、第三調節池や高規格堤防などの着実な整備を国に要望してまいります。
最後に、東部低地帯における耐震、耐水対策についてでございますが、都は、東日本大震災を受け、平成二十四年に、東部低地帯の河川施設整備計画を策定し、堤防や水門等の耐震対策を実施してきております。
さらに、令和三年十二月に、対象範囲を拡大した第二期の整備計画を策定いたしました。
令和四年度から、この計画に基づき、着実に耐震、耐水対策を実施してまいります。
〔総務局長村松明典君登壇〕
○総務局長(村松明典君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、風水害発生時の避難対策についてですが、浸水地域の住民の命を守るためには、区市町村と連携し、親戚、知人宅等への自主避難や上層階への垂直避難、行政区域を越える広域避難などの分散避難を促すことが重要でございまして、都としても様々な取組を進めているところでございます。
具体的には、都において、多様な広域避難先を確保するとともに、区市町村に対して垂直避難が可能な公共施設のリストを提供するなど、避難対策の強化を図っているところでございます。
引き続き、広域自治体としての取組を着実に進めてまいります。
次に、広域避難先の確保についてですが、大規模風水害時における東部低地帯対策として、より多くの広域避難先をあらかじめ確保しておくことが重要でございます。
このため、都は、受入れ可能な都立施設を避難先として活用することはもとより、さらなる確保に向け、区部を中心に、国や民間施設に直接協力を求めるなど、引き続き調整を進めてまいります。
最後に、災害時におけるコミュニティタイムラインについてですが、都は現在、町会、自治会等を対象にしたセミナーや研修等で、風水害など様々な災害において、タイムラインに沿った地域住民全体の避難行動等について自ら考えていただく機会を設けるなど、自主防災組織の取組を支援しているところでございます。
引き続き、地域における先行事例等も踏まえ、研修内容を充実させることで、地域防災力の向上を図ってまいります。
〔住宅政策本部長榎本雅人君登壇〕
○住宅政策本部長(榎本雅人君) 都営住宅の集会室の上層階への整備についてでございますが、一般に集会室は、平屋建ての独立棟として整備しておりますが、構造上設置可能な規模が制限されることなどの制約を踏まえた上で、地元自治体から要望があれば、上層階への整備について協議に応じておりまして、引き続き、適切に対応してまいります。
以 上