2022年第1回定例会を終えて
2022年第1回定例会を終えて
2022年3月25日
日本共産党東京都議会議員団
幹事長 和泉なおみ
1、 都民の命の砦、都立・公社病院の独法化議案の可決に断固抗議します
都立病院条例の廃止や、東京都が都民に直接医療を提供する病院事業の廃止条例など、都立・公社病院を独立行政法人化する議案が、今定例会の最大の焦点でした。新年度予算案にも、都立・公社病院の予算は6月までしか組まれていません。都立・公社病院を守れの声と運動はますます広がり、独法化反対の署名は、累計35万人を超えています。都民の声に背をむけ、これらの議案が、自民、公明、都民ファースト、維新などの賛成で可決されたことに、断固抗議します。
質疑をとおして、独法化を進める東京都の論拠はすべて破たんし、問題点が鮮明になりました。
知事は、コロナ対策を強化するための独法化だと言い始めました。しかし、東京都が独法化の成功例として高く評価してきた大阪では、医療提供体制が弱体化し、人口当たりのコロナ感染死亡者数は全国で突出していることを、わが党は明らかにしました。一方、全国約2,300の医療機関の中で、コロナ専用病床確保数の1位から11位までを都立・公社病院が占め、全国で最も先進的、柔軟にコロナ対応しています。コロナ対策のための独法化という話は、成り立ちません。
「行政的医療を将来にわたって提供する」ための独法化という説明も、破たんしました。
将来にわたって病院の統廃合はしないと言えるのかというわが党の追及に対し、東京都は統廃合を否定しないばかりか、石原都政が八王子、清瀬、梅ケ丘の3つの小児病院を廃止し、統廃合したことを評価する答弁をしました。わが党が本会議一般質問で取り上げたように、行政的医療、地域医療を大幅縮小させた小児病院廃止の痛みは、いまなお深刻なものです。
ところが東京都は、まったく反省していないことが、はっきりました。そして独法化は、小児病院廃止・統廃合の延長線上のものであることが、白日の下にさらされました。
行革推進法が、地方公務員の数を減らして、行政にかかる財政支出削減のために独法化を進めるよう自治体に求めていることを、わが党は指摘しました。ここに独法化の本質があります。医師・看護師をはじめベテラン職員の存在は医療の質に直結します。
独法化で都立病院の職員6,838人をまるごと定数削減すること、全体の奉仕者である公務員の立場を強制的に奪うことは許されません。
そして、採算性や儲かる医療を優先するのが独法化です。わが党は都の健康長寿医療センターの独法化で、全病床のなんと4分の1が負担の重い差額ベッドになったことも明らかにしました。
都立・公社病院の独法化の検討は、地方自治法に違反して出された提言からスタートしたことも、明らかになりました。地方自治法は、一部の専門家などによる恣意的な行政への介入を防ぐため、条例で設置する附属機関ではない専門家の会議などは、意見を取りまとめて提言などをしてはならないと定めています。附属機関ではない都立病院経営委員会が、都立病院の経営形態は独法化が一番望ましいと提言したことは、明確な自治法違反です。
独法化について知事は、都民にていねいに説明すると言ってきましたが、実際は質問にまともに答えない、それどころか都民を欺く説明をする態度を続けてきました。また、東京都は質疑の中で、都民と病院職員の理解と合意を得られていると、ついに答えることができませんでした。
都立・公社病院は、都民の命を守る砦の役割を果たしています。わが党は、都政に禍根を残すことになる独法化を7月に実施させないため、引き続き都民のみなさんと力をあわせていきます。
2、 第7波から都民を守るため、検査の抜本的拡充などのコロナ対策を提案
新型コロナのまん延防止等重点措置は解除されましたが、1日当たりの新規陽性者数は昨年夏の第5波のピークを上回っています。新たな変異株の割合も4割近くまで急増しています。感染の再拡大が強く懸念されます。ところが昨日、モニタリング会議の開催を週1回から月2回に減らすことが突如示されました。これでは、また後手後手の対応になります。毎週開催するよう求めました。
第7波から都民を守るためにも、わが党が提案した高齢者施設や保育園でのPCR等の検査の抜本的拡充、ワクチン接種の促進、医療機関への財政支援の充実などを早急に進めることが必要です。
3、 新年度予算―大幅税収増を、都民の暮らしと営業支援、貧困と格差是正に使うべき
コロナ禍で都民の暮らしと営業は深刻です。その一方で、IT企業や大手製造業などは業績好調で、都税収入は驚くことに史上最高水準です。貧しい者はさらに貧しく、富めるものはさらに豊かにという東京と日本社会の格差拡大の実態が浮き彫りになりました。地方自治法は、住民福祉の増進を地方自治体の基本的使命だと定めています。この税収増を、都民のくらしの支援、貧困と格差是正に、思い切って使うべきですが、小池知事が編成した新年度予算にその姿勢はありません。
新年度予算で、不要不急の大型開発などが膨らんでいます。わが党は、抜本的見直しを求めました。
外環道は2月、陥没事故現場を含む路線について、事業者が再発防止策を示すことができず東京地裁は工事の一部差し止めを命じられました。都民の立場にたって、国や事業者に対し、きっぱり事業中止を求めるべきです。
「延焼防止」を口実にして大型道路建設を進めている特定整備路線に関して、都が、延焼シミュレーションの実施にあたって防災の専門家のアドバイスを受けておらず、科学的根拠がきわめて乏しいことが、わが党の質疑で明らかになりました。都は、住民主体の防災まちづくりを基本に据えた、住宅の耐震化や難燃化、初期消火設備の増設などにこそ力を尽くことが必要です。
神宮外苑再開発についても都民の運動が広がっています。「緑の量は増える」と言いながら樹齢百年の大木を大量に伐採し、歩道デッキやエレベーターまで「緑地等」に含めているなど多くのごまかしが、わが党の質疑で明らかとなりました。また、スポーツ拠点整備の再開発だと言いながら、超高層ビルなどの再開発のために、陸上競技になくてはならないサブトラックの整備をやめたことも、初めて認めました。そしてこれらの計画が、森元首相の個人的な意向を強く受けて進められたことを、わが党はただしました。樹木伐採も再開発も立ち止まるよう、厳しく求めました。
羽田新ルートを飛行する航空機から、渋谷区内に氷塊が落下しました。わが党が繰り返し指摘してきた重大事態であり、都として調査するとともに、羽田新ルートの運用を中止すべきです。
わが党は、予算の組み替え案を提出しました。
不要不急の事業を見直し、命と暮らしを支える施策を充実させるものです。予算のわずか3.4%を組み替えるだけで、小中学校の給食費の負担軽減、都営住宅の新規建設5,000戸など99項目におよぶ都民要求が実現できます。
4、 「国民健康保険の18歳までの均等割保険料(税)ゼロ円条例」を提案
子どもが一人増えるごとに国保料(税)負担が増える均等割は、子育て世帯の重い負担になっています。この問題を解決するため、今定例会に、都独自に18歳までの国民健康保険料・保険税の均等割の負担をなくす条例案を提出しました。自民、公明、都民ファースト、維新などの反対で否決されたことは残念ですが、引き続き子どもの均等割ゼロの実現に取り組みます。
5、 日本共産党都議団の論戦と都民の運動の力で新たな成果も
今定例会は、昨年の都議選で日本共産党都議団が3回連続躍進・前進してはじめての予算議会でした。19議席に前進した力を生かした論戦と都民の運動の力で、貴重な前進もありました。
<暮らし・事業者・働き方の支援> わが党はコロナ禍で傷んだ都民の暮らしと営業への抜本的な支援を求めました。都庁前や都内各所で行われるフードバンクや生活相談に、コロナ以前を大きく上回る人が集まっている現状を示し支援強化を求めました。都が女性の就労支援として、非正規雇用の女性と企業とのマッチング支援やひとり親向けオンライン職業訓練などを拡充したこと、障害者と企業とのマッチング推進、障害者と企業双方をサポートする事業を始めることは前進です。
事業者支援では、コロナの影響が長期化する中、初期のコロナ対策融資の返済が始まる中で融資の借り換え制度が創設されました。ウクライナ情勢を背景にした原油や材料の価格高騰に対応する支援策が補正予算で盛り込まれたことは評価できます。さらに固定費補助など、中小企業・小規模事業者への支援を強めることが必要です。
<気候危機打開> わが党は気候危機対策の予算の抜本的拡充を求めてきました。気候危機対策の新年度当初予算は、前年度の3倍に増え、補正予算でさらに増額されました。水素エネルギー偏重などの問題点はありますが、大きな変化です。東京ゼロエミ住宅導入促進事業の予算は4倍以上になり、既存住宅の省エネ・再エネを支援する断熱・太陽光住宅普及拡大事業が新規事業で予算計上されました。都有施設の太陽光発電設備設置は、都営住宅をはじめ281施設への設置が予算化されました。また都有施設の省エネ・再エネの推進について、今後の改築・改修の中でZEB化(省エネと再エネで消費エネルギーゼロをめざす建築物)を目指すと答弁したことは重要です。
<ジェンダー平等> 都はパートナーシップ制度の新年度中の実施にむけ素案を公表しました。申請するふたりの意思が尊重され、みんなで祝福できる制度にしていくことが大切です。こども基本条例を踏まえ、ファミリーシップと合わせて実現することなど、充実させることを求めます。
痴漢・盗撮対策として、わが党は女性専用車両の導入等を求めてきましたが、都営地下鉄の導入拡大について検討すると答弁したことは大事な一歩です。当事者の声にもとづいて、朝のラッシュ時間帯だけでなく、終日、全線での導入が必要です。
学校での生理休暇の導入について、わが党は高校生などの声を聞きながら、都議会で初めて提案しました。リプロダクティブ・ヘルス&ライツの問題として、導入を検討するよう求めていきます。
<校則改革> わが党がくり返し、理不尽な校則の見直しを求めてきた中で、生来の髪を一律黒染めにすることやツーブロックの髪型の禁止、下着の色の指定などの校則が全ての都立高校からなくなったことは大きな前進です。
<医療的ケア児への支援> 医療的ケア児の専用車両の拡充、看護師確保の対策、福祉タクシーの費用負担支援など新たに始まります。
<18歳までの医療費助成> 18歳までの子どもの医療費助成をくり返し求めてきましたが、2023年度からの実施に向けた準備費が予算に計上されました。さらに中学生までの医療費助成も含めて、所得制限と窓口負担をなくすように、都の支援を充実させることが必要です。
<補聴器購入への支援> 高齢者の補聴器支給等に対する都の補助を活用する区市町村は、この2年間で3倍の12自治体に増えました。区市町村の取り組みをさらに後押しするために、個別補助制度の創設や包括補助事業の項目に加えることを求めました。
<都営住宅> この間、求めてきた都営住宅への学生の入居について、都は大学と協定を結び、都営住宅に入居した学生が、団地の自治会や地域住民の防災訓練や交流などに協力するなど、仕組みを検討していること、協定締結に向けた協議を大学としていると答弁しました。大切です。一方、都営住宅は23年間新規建設ゼロです。住まいの権利を保障するために新規建設を再開すべきです。
6、 ロシアによる人道無視のウクライナ侵略、止める声さらに
ロシアのウクライナ侵略は1ヶ月を超えました。主権の尊重、領土の保全、武力行使の禁止を義務付けた国連憲章に違反する侵略を、ロシアは直ちにやめるべきです。プーチン大統領は核兵器の先制使用をいとわない立場を公言しています。「核抑止力」論は無力であることが明らかになっています。
核戦争の危機を取り除くためには、核兵器を速やかになくすしかありません。唯一の被爆国である日本が核兵器禁止条約に速やかに加わり、世界に同条約に参加を提起することが必要です。
また国際社会がロシアを包囲し、これ以上の戦闘行為をやめさせ、核兵器や生物・化学兵器の使用を許さない外交努力を徹底して取り組むべきです。
今こそ、戦争の惨禍を語り継ぎ、平和のメッセージを世界に発信する取り組みが重要です。東京都では、平和祈念館の建設が凍結されてから23年が経ちます。都と都議会共同の検討会を設置するなど、力を合わせて前に進めることを心から呼びかるものです。
以 上