本会議 池川友一都議(町田市選出)の一般質問
2022年6月8日の本会議で、池川友一都議(町田市選出)が一般質問を行いました。
★動画(都議会ホームページです。令和4年第2回定例会 > 6月8日一般質問をご覧ください)
★質問全文(質問原稿)です。
一、校則改革について
二、青少年の居場所について
三、多摩地域の児童相談所について
四、こども基本条例の普及啓発について
★答弁(議事録速報版より)
子どもの権利を都政の真ん中に据え、子ども・若者のいまと未来をひらく視点から質問します。
私は、校則について、子どもの権利の視点から、子どもたちの声をとりあげ、生徒の意見を聞いて見直すことを提起してきました。
理不尽な校則を変えようという動きは、加速度的にひろがり、都教委は昨年4月に校則の見直しを求める通知を出し、6月には文科省も通知を出すにいたりました。
各校で見直しが行われた結果、都立高校では今年度からすべての学校で、ツーブロック禁止、「高校生らしさ」など、理不尽であったり、理由の説明できない校則が廃止されました。大きな一歩です。
高校生や若者から「今回の決定で学校に行きやすくなる」「行動することによって変えられるという、一種の成功体験になった」など喜びの声が寄せられていることは希望です。
Q1 校則の見直しにあたり、すべての都立高校で、生徒、保護者、教職員が話し合う機会をつくったと聞いています。
校則の見直しについて、一度やったら終わりではなく、対話を継続して、深めていくことが必要ですが、いかがですか。
期間が短かったこともあり、生徒からは、「自分が参加して話し合う機会はなかった」「要望は聞かれたが、それはダメですで終わってしまった」という声も聞いています。
対話こそ、民主主義の土台であり、学校で対話の土壌を育てていくことが必要です。子どもが意見を言うときに、おとながまず受け止めてくれるという安心感が必要です。
Q2 国連子どもの権利委員会は、「教育において意見を聴かれる子どもの権利を尊重することは、教育に対する権利の実現にとって根本的に重要」だと強調し、意見を表明しやすい、励ましに富んだ環境が必要だとしています。
学校において、子どもの意見表明を保障する環境をつくることが重要ですが、いかがですか。
カギとなるのが、子どもの権利条約であり、東京都こども基本条例です。
Q3 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが教職員向けに行った調査では、3割の教員が子どもの権利条約の内容について知らないと回答しています。
生徒指導の基本文書である「生徒指導提要」の改訂試案に、教職員の子どもの権利条約についての理解が位置付けられました。
学校現場において、子どもの権利条約及び東京都こども基本条例の理解を深める重要性について、どう認識していますか。
Q4 校長をはじめ、すべての教職員が研修などで、子どもの権利について理解を深めるためのとりくみを充実する必要がありますがいかがですか。
Q5 同時に、子どもたち自身が“自分たちにはこんな権利がある”と知るためのとりくみが大切です。生徒手帳などに、子どもの権利条約やこども基本条例を掲載し、学ぶ機会をつくることはその第一歩だと考えますが、いかがですか。
私は、小学校から高校まで東京の公立学校で学びましたが、制服はなく、すべて私服で学校生活を送りました。全国でも、極めて稀有な存在だと思いますが、当時の私にとってはそれが「常識」であり、今も原体験として刻まれています。
校則問題に取り組む中で、私たちには経験や世代により、それぞれの原体験があり、その「常識」が子どもの尊厳を傷つけてしまう場合があることを痛感してきました。
Q6 みんなが同じものを着ることによる同質性の高さは、違いを浮き彫りにする可能性もあります。
都教委は「制服の自由選択を推進する」として、性別に関係なく制服を選べることをすすめています。しかし、トランスジェンダーの方からは「スラックスを選択するとカミングアウトにつながる可能性があり、選びたくても選べない」という声も寄せられています。
知事は所信表明で、多様性が大事だと述べました。制服でも、私服でも、どちらでも選べるようにしていくことが重要だと考えますが、いかがですか。
Q7 子どもの権利条約第28条第2項は、学校の規律について規定した条文です。
この条文の逐条解説には、子どもの権利への介入を最小限にすることが必要だと示されています。重要な指摘ですが、認識を伺います。
Q8 「不自由な中にいると、おかしいことに気がつくことができない」──これは、都立北園高校前生徒会長の言葉です。
おかしいと思うことがあるときに「仕方ない」と諦めさせるのではなく、声をあげてもいいし、変えていくことができると学ぶことは、主権者として成長していくために重要ではありませんか。
次に、青少年の居場所について質問します。
Q1 居場所について、元都立小児総合医療センター副院長の田中哲(さとし)氏は、無条件に受け入れられること、そこにいることを自ら選べることが重要だと述べています。
中高生は、家と学校以外の居場所が少ないと指摘されています。自分らしく居ることが否定されず、排除されず、「ここに居ていい」ということが保障されることが求められています。
知事は、子どもや若者がありのままを認められる居場所の重要性についてどう認識していますか。居場所をふやしていくことが必要ですが、いかがですか。
区市町村では、中高生を対象とした施設を設置し、居場所をつくりだしています。私はこの間、杉並区のゆう杉並、豊島区のジャンプ、文京区ビーラボ、町田市の子どもセンターを視察し、直接お話を伺ってきました。
それぞれに特徴や違いはありますが、共通しているのは、中高生が主体ということです。そこでは、何にでも挑戦できること、何もしない自由も保障されています。「個のニーズに応じた支援」の視点とともに、誰にでもひらかれている場であり、すべての中高生を対象とした場をつくっています。居場所があり、中高生が主体となって新たな挑戦をしていることにとても感動しました。
同時に、高校生以上の世代へのアプローチは、東京都の役割が重要です。
Q2 義務教育までは、区市町村がつながりを比較的もつことができますが、高校生世代になると関係性が切れてしまうことが指摘されています。
都生涯学習審議会は建議で「乳幼児期から中高生世代までの青少年への対応は区市町村が担い、高校生を含む青年期以降の青少年への対応は東京都が担うということが基本」だと述べています。この指摘をどう受け止めていますか。高校生世代以降への対応について、どのようにすすめていくのですか
Q3 その際、拠点となるのが、区部と多摩に1ヶ所ずつある都の青少年施設ユース・プラザです。ところが建議ではユース・プラザについて、「事業内容の固定化がみられること、青少年のニーズを把握・分析し、施設特性を踏まえた事業内容となっているとは言えないこと、都と区市町村の役割分担を踏まえた事業の企画がなされているとは言えないこと、等の課題がある」と、指摘しています。
都は、どのようなに解決していくのですか。
Q4 さらに建議では「東京都が設置する青少年教育施設としての機能(特に主体的な活動・交流の拠点、青少年の自立を支援する拠点、ネットワークの拠点)は、十分に発揮されているとは言い難い」と指摘されています。ユース・プラザについては2年後、3年後に契約終了となりますが、民間企業主導のPFIによる運営を見直すことが、都が主体的に青少年教育をすすめることにつながりますが、いかがですか。
Q5 都は、広域自治体として、青少年に関わる調査・研究、研修を進めること、若者の成長を手助けする専門スタッフであるユースワーカーの養成や認証制度を実施するなど、積極的な役割を発揮する必要がありますが、いかがですか。
次に児童相談所について伺います。
市町村、福祉事務所、学校、医療機関などとの緊密な連携の図りやすさと速やかな一時保護や利便性などの観点から移動しやすさを考慮して管轄区域を定めるよう通知が出されました。
Q1 児童相談所の社会的役割はますます大きくなっていますが、虐待への対応について、知事の認識を伺います。
Q2 多摩地域の児童相談所の現状を見ると、人口では小平児相が115万人、八王子児相が118万人と100万人を超えています。
立川児相は11自治体、小平児相は9自治体を管轄していますが、管轄の自治体数が多い場合、それぞれの要保護児童対策地域協議会に児童相談所が出席するため負担があるなど、緊密な連携などに課題があると指摘されています。
管轄区域も広域です。八王子児相は23区全体の約半分、立川児相は23区とほぼ同じ面積です。
23区では1自治体1児童相談所の設置がすすんでおり、児童相談所が、さらなる多摩格差の拡大とならないよう対応することが必要ですが、知事いかがですか。
Q3 私の地元、町田市を管轄する八王子児相の分割は人口や地理的条件からみても緊急の課題です。
昨年12月には、町田市議会が東京都に対して「町田児童相談所の早期設置を求める意見書」を全会一致で可決しました。また、市長も児童相談所の誘致について「最重点課題」だと議会で述べています。こうした動きについて、把握していますか。重く受け止めるべきですが、いかがですか。
Q4 市町村との緊密な連携のためにも、管轄する人口、自治体数、面積などを思い切って減らすことが必要です。多摩地域の人口は約425万人であり、50万人に1カ所設置にするには、現在4ヶ所の児童相談所を8カ所に倍加するなど、抜本的な増設が必要ではありませんか。また、増設を検討する際に、自治体からの意見を十分に聞くことが必要ですが、いかがですか。
最後に、こども基本条例について質問します。
わが党は、こども基本条例の策定過程で、子どもの意見を聴けていないことは、どう条例を修正しても補うことはできないことを指摘しました。これから、どれだけ子どもの声を聞くことができるかが問われています。
Q1 知事は所信表明で、「子どもの声をしっかりと聞き、気持ちに寄り添うことは何よりも大切」だと述べました。重要な認識です。 こども基本条例について、子どもたちが深く理解できるようにするための冊子の作成が今年度予算に入っています。子どもが権利の主体として、冊子を作成する最初の段階から参加し、意見を言うことで、子どもにとってわかりやすいものにできるとともに、こども基本条例の実践になると考えますが、いかがですか。
答弁を求め、質問を終わります。
【答 弁】
○知事(小池百合子君) 池川友一議員の一般質問にお答えいたします。
子供の意見表明についてであります。
東京都こども基本条例に規定されておりますとおり、子供を権利の主体として尊重し、子供が意見を表明することができる環境を整備することは重要でございます。
児童虐待への対応でございます。
深刻化する児童虐待に迅速かつ的確に対応するため、都はこれまで、児童福祉司や児童心理司を増員するなど、児童相談所の体制を強化してまいりました。
今年度はトレーニングセンターを設置いたしまして、人材育成の充実を図るなど、今後とも子供の安全・安心をしっかりと守ってまいります。
その他の質問につきましては、教育長及び関係局長からの答弁といたします。
〔教育長浜佳葉子君登壇〕
○教育長(浜佳葉子君) 十二点のご質問にお答えいたします。
まず、都立高校等における校則等の見直しについてでございますが、都教育委員会は、引き続き、教職員や生徒、保護者等の話合いの機会を工夫して設定した上で、校則等を適宜見直すよう、都立高校等に対して伝えております。
次に、学校における子供に関する条約等の理解についてでございますが、都教育委員会は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、子供は、大いなる可能性を秘めたかけがえのない存在であることや、あらゆる場面において権利の主体として尊重される必要があることについて、教員が理解を深めていくことが大切であると捉えております。
次に、教員の子供の権利に関する理解についてでございますが、都教育委員会は、人権教育の指導資料、人権教育プログラムに東京都こども基本条例について掲載し、教員に内容を周知しており、引き続き、子供の権利を含め、基本的人権に関する教員の理解を深めてまいります。
子供の権利を学ぶ機会についてでございますが、子供が自らの権利を知るとともに、人権尊重の精神などについて理解を深めることが大切であることから、各学校では学習指導要領等に基づき、教育活動全体を通じ、人権教育を推進しております。
制服の自由選択の推進等についてでございますが、都教育委員会は、学びの場でのインクルーシブを実現する取組の一つとして、都立高校全体での制服の自由選択制導入を推進しております。
このため、制服の自由選択制のPR経費や、導入に向けた検討経費の補助を実施するなど、各学校の取組を支援しております。
なお、学校における制服や私服の取扱いは、生徒や保護者等の学校関係者からの意見を踏まえ、校長が適切に判断をしております。
学校における子供の権利についてでございますが、都教育委員会は、学校において、児童の権利に関する条約の趣旨等を踏まえ、子供一人一人の人権を尊重して教育活動を行うことが重要であると捉えております。
主体的に課題に対応する学びについてでございますが、子供が権利の主体として様々な課題を発見し、解決するための資質、能力を身につけることが重要であることから、身近な学校生活上の課題について意見を出し合い、合意形成を図る取組などを教育活動全体で行っております。
子供や若者の居場所についてでございますが、青少年が過ごしやすい居場所や年齢の異なる友達、異世代の人々と関わり、体験活動や交流活動を行う場が重要でございます。そのため、都教育委員会は、小中学校における放課後子供教室事業を推進するとともに、高校生以上の青少年には学びのセーフティーネット事業を実施しております。
高校生以上を対象とした青少年教育についてでございますが、令和三年九月の東京都生涯学習審議会建議の趣旨も踏まえ、都教育委員会は、高校生以上の青少年を対象とし、企業やNPO等への支援を通じた居場所づくりのほか、都内二か所の宿泊型ユース・プラザにおいて、学習や活動機会を提供しております。
ユース・プラザについてございますが、都生涯学習審議会の建議における講座型、単発イベント型の事業が多いなどの指摘も踏まえ、都教育委員会は現在、青少年が主体的に参加することができる事業を充実させるなど、見直しを進めております。
ユース・プラザの運営についてでございますが、ユース・プラザは現在、適切に施設の管理運営が行われており、事業内容も適宜見直しが行われております。今後の運営の在り方については、適切に検討してまいります。
広域自治体としての役割についてでございますが、都は、区市町村が行う社会教育活動を補完、支援し、広域的な条件整備を担うこととしております。そのため、都教育委員会ではユース・プラザを設置しているほか、区市町村及び企業やNPO等に対し、研修や交流機会を提供するとともに、青少年の体験活動の特設サイト等を開設しております。
〔福祉保健局長中村倫治君登壇〕
○福祉保健局長(中村倫治君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、児童相談所についてであります。
昨年七月に公布されました政令では、児童相談所の所管区域の人口はおおむね五十万人以下とされ、併せて発出されました国の通知で、管轄人口の目安は二十万人から百万人までの範囲とされております。
児童相談所の管轄区域は法令等に基づき、人口のほか地理的条件、交通事情等を総合的に考慮する必要があり、多摩地域についても法令等を踏まえて、管轄区域の見直しに向けて検討することとしております。
次に、児童相談所設置に関する町田市議会の意見書についてでございますが、昨年十二月に町田市議会から意見書が送付され、都はこれを受理しております。
最後に、多摩地域の児童相談所についてであります。
都は、法令等を踏まえ、多摩地域において新たな児童相談所を設置するため、今年度、施設規模や設置場所、設置形態等に関する調査を実施いたします。
また、全ての区市町村が参画する児童相談体制等検討会において、今後、管轄区域の考え方や、都と区市町村の効果的な連携方法等について意見交換を行うこととしております。
〔子供政策連携室長山下聡君登壇〕
○子供政策連携室長(山下聡君) こども基本条例の普及啓発についてでございますが、こども基本条例の理念を実現するためには、子供が年齢や発達段階に応じて条例の内容を理解していくことが重要でございます。
このため、都は今年度、編集検討委員会を設置するとともに、子供の意見も取り入れながら、こども基本条例を分かりやすく伝えるリーフレットを作成することとしております。
以 上