文書質問 児童相談所について とや英津子都議(練馬区選出)
2022年第1回定例会で、以下の文書質問を提出しました。
令和4年第一回都議会定例会
文書質問趣意書
提出者 とや英津子
質問事項
一 児童相談所について
一 児童相談所について
児童相談所は、市町村と適切な協働・連携・役割分担をはかりつつ、子どもに関する家庭その他からの相談に応じ、子どもが有する問題または子どもの真のニーズ、子どもの置かれた環境の状況等を的確に捉え、個々の子どもや家庭に適切な援助を行い、もって子どもの福祉を図るとともに、その権利を擁護することを主たる目的として設置される行政機関である。
また、児童相談所における相談援助活動は、すべての子どもが心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮することができるよう子ども及び、その家庭等を援助することを目的とし、児童福祉の理念及び児童育成の責任の原理に基づき行われる。このため、常に子どもの最善の利益を考慮し、援助活動を展開していくことが必要である。
厚労省は、児童相談所の任務や役割を上記のように規定しています。児童相談所の「運営指針」によれば、その機能は、1市町村援助機能、2相談機能、3一時保護機能、4保護機能の四つに分けられます。
一方、児童虐待相談件数等が前年を下回る年はなく、児童相談所の業務はますます増加してきました。東京都は相談や虐待通告の増加に合わせた児童相談所の増設をはかるべきでしたが、必要なだけの増設はされてきませんでした。
さまざまな役割を担ってきた児童相談所ですが、虐待件数や通告の増加などにより、職員の過重負担や一時保護所でのこどもの処遇にも影響を与えてきたのではないでしょうか。
この間、コロナ感染の広がりで、学校の一斉休校や不要不急の外出制限によって子どもを見守る目がこれまでにも増して届きにくくなりました。また、制約をともなう生活や経済的に不安定な家庭が増加したことで、先の見えない不安からストレスがたまり、DVや児童虐待の発生の可能性も高めたといえます。
子どもは社会の宝であり、健やかに育つ権利を持つ主体です。虐待や貧困などでその権利が奪われてはなりません。そのために、児童相談所の機能強化、市区町村との連携や支援など国や東京都に求められている役割は極めて重いと考えます。
東京都の児童相談所に加え、児童福祉法改正により東京23区にも児童相談所が設置できるようになりましたが、子どもの命と健やかな成長を保障する機関として充実を求める立場から以下質問します。
まず、都立児童相談所についてです。
虐待を受けた子どもの成長に与える影響は大きく、その後の人生で精神疾患になったり、自殺や学力低下につながったり、少年院在院者の7割以上が被虐待児であるとの研究報告もあると聞いています。それだけに子どもの未来に鍵を握る児童相談所の職員の責任は重く、過重負担の現状も度々指摘されてきました。
少ない人手で虐待や通告をうけ、昼夜分かたず対応に追われ、保護者との関係にも神経をすり減らしているのが児童相談所の職員のみなさんです。都立児童相談所の児童福祉司など専門職の配置の拡充はまったなしです。
1 児童福祉司の一人あたりの平均受け持ち件数は、21年度は総相談件数で98.4人、虐待相談件数では60.6人となっていますが、一番多い件数を持っている職員の相談件数は何件か。それぞれお答え下さい。
2 昨年の厚生委員会の質疑では、児童福祉司及び児童心理司について21年度は59名増員する予定との答弁がありましたが、21年度の福祉職及び心理職の新規採用者数とそのうち何人が児童相談所に配置されたのか。また22年度についてもうかがいます。
3 22年度の増員は何人か。その結果、国の配置基準に照らした不足人数も合わせてお答え下さい。
都内の児童相談所は区市町村の支援も重要な役割のひとつです。
4 現在都の児童相談所では、区市町村にどのような援助を行っているのか。各区市から職員は何人研修にきているのか、お答えください。
5 23区では、自区内に児童相談所の設置が可能になりましたが、先行して設置した世田谷区、江戸川区、荒川区、および港区、中野区にはどのような支援をおこなっていますか。また、現在の連携状況についてお答えください。
今後の都立児童相談所の再編についてもうかがいます。
児童相談所の役割の重要性が増すもとで、今後どのように都立児童相談所を機能させていくのかが問われています。
6 世田谷区には区立児童相談所が設置されましたが、それまでの都立世田谷児童相談所が廃止され、管轄地域であった狛江市は多摩児童相談所の管轄となりました。今後、中野区立児童相談所が設置されたことで、都立杉並児童相談所は、杉並区一区と武蔵野市、三鷹市を管轄していますが、杉並区に区立児童相談所が設置された場合、都立はどうなるのか。また、仮に22区すべてに区立児相が設置された場合、練馬区をのぞく児童相談所はどうなるのか。都立児童相談所再編の考え方についてもお答えください。
一時保護所についてもうかがいます。
7 保護所内における子どもの権利擁護、虐待防止のために、職員数の拡充とスキル向上は必須です。22年度のそれぞれの一時保育所の増員人数を職種ごとにお示しください。また研修はどのように行っているのでしょうか。
8 一時保護所の入所定員の拡充は検討していますか。
2020年12月に東京都児童福祉審議会が「新たな児童相談のあり方について」提言を発表しました。
9 この中には、児童相談所がより重篤な虐待対応や専門的知見を活かした相談援助等に注力できるよう、泣き声通告等で比較的軽度と判断できる案件については、家庭訪問等に民間機関等の活用も検討。また、将来的には在宅指導や家族再統合の業務においても民間機関を活用することも検討すべきであるとの意見が示されています。都の見解をうかがいます。
つぎに練馬区に設置予定の都立児童相談所についてです。
22年度予算には、練馬区子ども家庭支援センターと同一建物内に都立練馬児童相談所を設置するための工事設計にかかる経費が盛り込まれました。
10 練馬区では、現在もサテライトオフィスが設置されていますが、この拠点の継続ではなく、児童相談所を練馬に設置することとした経緯、練馬区とこの間どのような話し合いを行ってきたのかをお答えください。
11 練馬区の都立児童相談所は、将来的に区立児童相談所にする話し合いは行われているのか。今後おこなう予定はあるのか。
12 練馬区におけるサテライトオフィスの成果についてお答えください。
13 練馬区に児童相談所を設置した場合、その地域を所管する一時保護所は設置するのでしょうか。しない場合はどのような対応をするのでしょうか。
令和4年第一回都議会定例会
とや英津子議員の文書質問に対する答弁書
質問事項
一 児童相談所について
1 児童福祉司の一人あたりの平均受け持ち件数は、21年度は総相談件数で98.4人、虐待相談件数では60.6人となっているが、一番多い件数を持っている職員の相談件数は何件か、それぞれ伺う。
回答
都では、特定の地域を複数の児童福祉司が担当するチーム制を導入しており、チーム内で情報共有し、協議しながらケースに対応しています。
また、初期対応を行う虐待対策班、家庭復帰及び里親制度を担当する児童福祉司など、様々な役割を担う複数の職員が各ケースに協働して対応しており、1ケース1担当として数を示すことは実態を反映したものにはなりません。
質問事項
一の2 昨年の厚生委員会の質疑では、児童福祉司及び児童心理司について21年度は59名増員する予定との答弁があったが、21年度の福祉職及び心理職の新規採用者数とそのうち何人が児童相談所に配置されたのか。また、22年度についても伺う。
回答
令和3年度の都福祉保健局の新規採用者のうち、福祉職は96人、心理職は27人であり、そのうち42人を児童福祉司、24人を児童心理司として児童相談所に配置しました。
また、同じく令和4年度の新規採用者のうち、福祉職は102人、心理職は30人であり、そのうち61人を児童福祉司、28人を児童心理司として児童相談所に配置しています。
質問事項
一の3 22年度の増員は何人か。その結果、国の配置基準に照らした不足人数も合わせて伺う。
回答
令和4年度の都職員定数について、児童福祉司は36人、児童心理司は21人増員しました。
また、国の配置基準により必要な都職員数を試算すると、令和4年度で児童福祉司は569人、児童心理司は286人となり、児童福祉司は422人の定数で147人の不足、児童心理司は208人の定数で78人の不足となります。
質問事項
一の4 現在都の児童相談所では、区市町村にどのような援助を行っているのか。各区市から職員は何人研修にきているのか、伺う。
回答
都の児童相談所では、区市町村職員の専門性向上のため、長期の派遣研修を受け入れるほか、子供家庭支援センター職員を対象に、短期実習、合同研修及び子供との関わり方を保護者へ指導する技法の研修を実施しています。
また、子供家庭支援センターの心理専門支援員及び都の児童相談所の児童心理司との定期的な連絡会を開催しています。
なお、長期の派遣研修受入人数は、令和3年度で105人となっています。
質問事項
一の5 23区では、自区内に児童相談所の設置が可能になったが、先行して設置した世田谷区、江戸川区、荒川区、および港区、中野区にはどのような支援をおこなっているのか伺う。また、現在の連携状況を伺う。
回答
都は、区からの求めに応じて、区の職員を派遣研修として都の児童相談所に受け入れています。
区が児童相談所を開設した後は、広域的観点から、一時保護所、児童養護施設等を都区で共同利用するほか、専門的観点から必要に応じて、区の児童相談所が担当する家庭を児童相談センターの医師、心理職等が支援するなど、都と区が連携して取り組んでいます。
質問事項
一の6 今後、中野区立児童相談所が設置されたことで、都立杉並児童相談所は、杉並区一区と武蔵野市、三鷹市を管轄しているが、杉並区に区立児童相談所が設置された場合、都立はどうなるのか伺う。また、仮に22区すべてに区立児相が設置された場合、練馬区をのぞく児童相談所はどうなるのか伺う。都立児童相談所再編の考え方についても伺う。
回答
児童相談所の管轄区域の見直しは、改正児童福祉法施行令等を踏まえ、人口や地理的条件、交通事情などを考慮した上で、区の設置計画も確認しながら、検討することとしています。
区が児童相談所を設置した場合は、法令等に基づき、その区域は都の児童相談所の管轄から外れることになります。
質問事項
一の7 保護所内における子どもの権利擁護、虐待防止のために、職員数の拡充とスキル向上は必須だが、22年度のそれぞれの一時保護所の増員人数を職種ごとに伺う。また研修はどのように行っているのか伺う。
回答
令和4年度の都一時保護所の職員定数について、福祉職4名、補助業務を行う非常勤職員3名を増員しています。
職員の研修は、毎年度策定する研修計画に基づき、経験年数等に応じて実施するほか、全職員を対象に権利擁護などのテーマ別にも実施しています。
質問事項
一の8 一時保護所の入所定員の拡充は検討しているか伺う。
回答
都は、一時保護需要等を踏まえて、一時保護所に必要な定員を確保しています。
令和3年度は、児童相談センターの一時保護所の拡張及び新宿区が所有する施設の借上げを行っており、令和4年度は、令和2年度まで使用していた立川児童相談所の一時保護所の改築に向け、設計に着手する予定です。
質問事項
一の9 2020年12月に東京都児童福祉審議会が発表した「新たな児童相談のあり方について」提言には、児童相談所がより重篤な虐待対応や専門的知見を活かした相談援助等に注力できるよう、泣き声通告等で比較的軽度と判断できる案件については、家庭訪問等に民間機関等の活用も検討。また、将来的には在宅指導や家族再統合の業務においても民間機関を活用することも検討すべきであるとの意見が示されているが、都の見解を伺う。
回答
都は、里親支援、児童相談所虐待対応ダイヤル等において民間機関等を活用しており、今後とも、必要に応じて民間機関等を活用していきます。
質問事項
一の10 練馬区では、現在もサテライトオフィスが設置されているが、この拠点の継続ではなく、児童相談所を練馬に設置することとした経緯、練馬区とこの間どのような話し合いを行ってきたのか伺う。
回答
令和3年7月に公布された改正児童福祉法施行令等により、児童相談所の設置基準が新たに設定され、管轄人口が100万人を超える児童相談所は新設等による管轄区域の見直しが求められています。
都は、児童相談センターの管轄人口が200万人を超えており、管轄内で練馬区の人口が約74万人と最も多いことに加え、地理的条件、交通事情などを総合的に勘案して、同区内に児童相談所を設置することとしました。
令和3年7月以降に、設置場所、設置時期等について練馬区と意見交換しています。
質問事項
一の11 練馬区の都立児童相談所は、将来的に区立児童相談所にする話し合いは行われているのか伺う。今後おこなう予定はあるのか伺う。
回答
都はこれまで、都立児童相談所の設置に向けて、練馬区と意見交換してきました。
質問事項
一の12 練馬区におけるサテライトオフィスの成果について伺う。
回答
都は令和2年7月、練馬区の子供家庭支援センター内に児童相談所のサテライトオフィスを設置し、児童相談所職員が虐待相談に対応するほか、区と連携して、合同調査、対応方針の検討会議等を実施しています。
こうした取組により、子供家庭支援センターと児童相談所の間で情報共有や協議の機会が増え、迅速な一時保護及びケースの円滑な引継ぎにつながっています。
質問事項
一の13 練馬区に児童相談所を設置した場合、その地域を所管する一時保護所は設置するのか伺う。しない場合はどのような対応をするのか伺う。
回答
都は、一時保護需要等を踏まえて、一時保護所に必要な定員を確保しています。
練馬区に設置予定の児童相談所は、練馬区の子供家庭支援センターと同一の建物内に設置する予定です。