2023年第1回定例会を終えて
2023年第1回定例会を終えて
2023年3月24日
日本共産党東京都議会議員団
幹事長 和泉なおみ
新年度予算案は、都税収入も予算規模も過去最大です。物価高騰などにより都民のくらしと営業が深刻なもとで、一部の大企業や富裕層は莫大な利益をあげています。
今定例会では、この巨大な都の財政力を、都民のくらしと営業を守り抜き、格差と貧困を是正するために使うかどうかが問われました。
1 「都民に寄り添う都政」へ ― 日本共産党都議団の提案と対応
<「補聴器購入費補助」などの条例を提案> 今定例会で東京都は、高齢者への補聴器支援について「区市町村や専門家などの意見も聞きながら、効果的な施策を検討する」と答弁しました。また、当事者団体の東京都中途失聴・難聴者協会は、「聴覚障害者の社会参加を一層進めるため、東京都の支援をさらに充実させて区市町村の取り組みを後押しすることが急務」だとして、条例案の早急な採択を強く要望する声明を出しました。条例提案は、切実な要望の実現に向け重要な契機になりました。
島しょに住む方々が、島外の医療機関にかかる際の通院交通費や宿泊費を補助する条例や、都民生活がひっ迫しているもとで、昨年12月に引き上げられた都議会議員の期末手当を引き上げ前の額に戻す条例など5つの条例案を提出しました。いずれも自民、公明、都民ファなどの反対で成立しませんでしたが、今後も都民要求実現のための条例提案に、積極的に取り組んでいきます。
<「予算の組み替え案」を具体的対案として提出> わが党は、「予算の組み替え案」も提出しました。予算の3.5%を組み替えるだけで、学校給食無償化、都内全域での18歳までの医療費の完全無料化、補聴器購入費補助など109項目の都民要望が実現できます。英語スピーキングテストの予算を全額削除したほか、不要不急の事業の見直しなどにより財源を生み出しています。否決されましたが、「都民に寄り添う予算」にするための具体的対案であり、実現に向け全力をつくします。
<知事提出の「2023年度予算案」に反対> 一方、知事の新年度予算案には、都民の声と運動、日本共産党都議団の提案と論戦で動かした成果も含まれていますが、予算全体は都民に寄り添うものとなっていません。子ども・子育て支援の拡充は重要ですが、その目的は、「国力」の「先細り」につながる少子化を防ぎ、経済成長を維持するためとされており、子どもの権利、豊かな成長・発達の保障を正面に据えたものではありません。高齢者福祉予算は減額され、都営住宅は24年間連続新規建設ゼロが続き、障害者の福祉手当は27年間1円も上がっていません。
教育施策では経済界が求める「人材育成」「グローバル人材の育成」が重視され、中小企業分野は急成長が見込まれる一部企業への支援に偏重しています。IR・カジノの調査費は10年連続計上され、陥没事故を起こした外環道工事などの大型道路建設予算は1,000億円を超えています。知事に対し、住民福祉の増進を基本的責務とする地方自治体本来のあり方に立ち返ることを求めました。
<新型コロナ対策> 知事が提出したコロナ対策の補正予算案は、政府が5月8日に新型コロナ感染症を5類に引き下げ、行政の責任を大後退させるのに合わせて無料検査、食料配布などを終了し、政府の医療費負担増や病床確保料の削減もそのまま受け入れるものであり反対しました。5類になってもウイルスの感染力や病原性は変わりません。都民のいのちを守る対策を継続、拡充すべきです。
2 都民の運動や世論と連携した提案・論戦で都政を動かした多くの成果
<子ども・子育て支援> わが党は、くらしを支える現金給付の実施・拡充や、子どもにかかわる施策の所得制限撤廃を求めてきました。その点で、ゼロ歳から18歳まで一人あたり月5千円の給付を所得制限なしで行う「018サポート」事業は、貴重な前進です。また18歳までの医療費助成、第2子の保育料無償化、多摩地域の児童相談所の増設、私立中学校授業料の負担軽減、都立大学・都立高専の授業料について世帯年収910万円未満の学生を免除する方針は、わが党が繰り返し求めてきたものであり重要です。都立大学・都立高専、さらに都立看護専門学校の全学生が学費無償となるようさらに求めていきます。
学校給食の無償化が都内でも大きな流れになりつつあります。都は、区市町村の判断で行っている、学校給食費の支援は国の責任と負担によるべきものという答弁を繰り返していますが、質疑を通して、学校給食の無償化など負担軽減に取り組む区市町村に、都が財政支援をすることは法的にも可能であることを認めました。どの自治体でも無償化できるよう都として踏み出すべきです。また学校設置者として、特別支援学校をはじめ都立学校の給食費の無償化を実施すべきです。
<くらし・福祉> 都営住宅の建替え時に、単身者向けの狭い部屋ばかり増やす「型別供給」の廃止・抜本見直しを求めました。都から「社会状況の変化等に対応しており、今後とも必要な見直しをしていく」と前向きな答弁を引き出しました。また、新規建設の再開、若い世代への思い切った提供を提案しました。
認知症になっても感情はしっかり残っていること、できることもたくさんあること、自分で判断することもできることなどを指摘し、認知症への正しい理解を広げる重要性への認識を求めた質問に、知事が「認知症の方は、周囲の理解や気遣いがあれば、穏やかに生活することができるといわれています」と答弁したことは重要です。また、シルバーパスの対象路線拡大と費用負担軽減を提案しました。
都が今年度から開始した都型放課後等デイサービス事業について、実施事業所が6か所にとどまっていることを指摘し、現場の声を聞き実態に合った内容に改善するよう求めました。都が、「引き続き運用の工夫を図りながら事業を実施してまいります」と答弁したことは、今後につながるものです。
<中小企業支援・賃上げ> 商店街や町工場の省エネ対策などへの支援を提案し、商店街のアーケードの照明のLED化への支援を進めていく、中小企業の幅広い省エネ対策への支援を充実していくと答弁がありました。知事が「商店街は、住民の買い物の場であるとともに、地域コミュニティの中心として重要な役割を果たしている」との認識を示したことは重要です。また物価上昇を上回る賃上げへの支援について、賃金の引き上げを行う事業者に支給している奨励金について、都は「充実を図る」と答弁しました。
<防災対策> 木造住宅耐震化助成の対象が、2000年以前に建築された新耐震住宅に拡充されたことは重要です。対象戸数を増やして耐震化を急ぐよう求めました。また、木密地域の住宅への感震ブレーカーの無償配布も実現。良質なものを正しく設置するためのていねいな取り組みを提案しました。
<気候危機> わが党の質疑をうけ、学校のZEB化・省エネビル化について都が「省エネ・再エネ東京仕様」を見直し、国の原則40%省エネ相当の計画を上回る、50%相当の設計事例を試算で示したことは重要です。また、都議会議事堂のLED導入は40%に留まっていることを明らかにし、LED化促進を求めました。都は「議会事務局と緊密な検討を進めながら判断していく」と答えました。
<ジェンダー平等> 「痴漢撲滅プロジェクト」として痴漢被害実態調査や、民間と連携したキャンペーンなどが予算に盛り込まれたことは、わが党が求めてきた内容で重要です。また、性被害やジェンダーによる差別をなくしていくために大事な「アクティブバイスタンダー(積極的に被害を止める第三者)」を増やすための事業が予算に盛り込まれました。
<芸術・文化> アーティストなどの持続的な活動を支援する「東京芸術文化活動サポートセンター」設置や,アーティストの創作環境として都営住宅の空き店舗を活用してアトリエを整備、低廉な賃料で提供する事業が実現しました。また、中小の芸術文化団体の公演を支援するパフォーミングアーツ助成が始まります。
<平和事業> 知事は、恒久平和の実現と戦争の記憶を次の世代に語りつぐことは重要だと答弁しました。また、東京空襲関連の資料と証言ビデオの公開に向けて都が動き出し、その活用について調査を踏まえ広く活用できるよう検討すると答弁があったことは貴重な前進です。これらを十分活用し、東京の平和をつくる拠点として、24年間も凍結されている「平和祈念館(仮称)」の建設に、今こそ動き始めるよう、知事と議会に呼びかけました。
3 都政の重大問題を徹底追及、是正に全力 ― これも都民運動と力をあわせて
<英語スピーキングテスト> 多くの中学生、保護者、専門家、都民などの反対の声を無視して英語スピーキングテストを強行し、入試に不可欠な公平性・公正性を投げ捨て、都立高校入試の合否判定に活用したことは断じて許されません。
試験会場で周りの声が聞こえたなどの子どもたちの証言を無視し、根拠も示さず回答に影響はなかったと言い張り、採点ミスという重大問題が起きたのに教育長は謝罪せず、個人情報取得について違法性の疑いも指摘されています。ところが都教委は中止するどころか、中学1、2年生にまで英語スピーキングテストを拡大する予定です。予算額は今年度5億円が新年度35億円に、7倍にふくれあがっています。
そもそも都教委には、中学校にテストを強制する権限はなく、上からテストを押しつければ、子どもたちの自主性、自発性を大切にした豊かな学びは失われてしまいます。都民の願いに応えるため、本日の最終本会議に、わが党を含む5会派共同で、英語スピーキングテスト予算35億円を全額削除する修正案を提出しました。否決した自民、公明、都民ファなどへの都民の厳しい批判は避けられません。
<五輪の闇> 談合疑惑について、「捜査に関わることであり答えは差し控える」との答弁が繰り返されました。捜査の対象になっていること自体、重大です。しかも、進んで真実を明らかにする姿勢がありません。「外部有識者の下で調査を進めている」というのもごまかしで、実態は元オリパラ準備局長の副知事をトップとする調査です。外部有識者による第三者機関の設置、徹底調査と検証、公表こそ必要です。
<神宮外苑再開発> 五輪に端を発した神宮外苑再開発が着手され、樹木に、ついに手がかけられようとしています。音楽家の坂本龍一氏が、立ち止まるように求める手紙を小池知事に送りましたが、知事は冷たく突き放しました。都民の怒りは高まる一方です。アセス評価書の虚偽の指摘も、銀杏並木への影響調査も未解決です。新宿区の風致地区条例の改悪は事実上、東京都の指示だったことも明らかになりました。小池知事はただちに施行認可を取り消すべきです。
<都立・公社病院の独立行政法人化> コロナ対策を強化する、行政的医療を将来にわたり提供すると言って、知事が都立・公社病院の独立行政法人化を強行して約9カ月が経ちました。ところが多摩総合医療センターでは、独法化されたその日に感染症内科の医師が退職し常勤医師がいなくなったことや、夜間の救急医療体制で重要な役割を果たしているER病棟を閉鎖しようとしていたことが明らかになりました。まさに行政的医療を後退させ、経営効率を優先する独法化の本質が浮き彫りになっています。独法化した病院を直営に戻し、拡充することを求めます。
<若年被害女性等支援事業> 虐待などで家に居場所がなく、夜の繁華街などをさまよう少女たちを性被害などから守る若年被害女性等支援事業について、都は「非常に重要である」と認めました。事業を委託されている団体Colaboが、不正に委託料を受け取った事実はなかったことも、監査結果と福祉保健局の調査で改めて明らかになりました。ところが今、Colaboのアウトリーチの活動に対し、大勢で取り囲む、暴言を吐くなどの悪質な妨害が続いています。東京地裁は、繰り返し来ている妨害者に対し、接近禁止などの仮処分決定を出しました。
こうした中で都が団体に対し、妨害行為を理由にして、22日に予定されていた活動の事実上の中止要請をしたことは、少女たちの危険を高めるものであり、間違いです。東京都が責任を持って、団体が活動できるように対応することを、強く求めるものです。
<PFAS(有機フッ素化合物)による水汚染> 発がん性が指摘され、多摩地域では住民が自主的に血液検査にとりくんでいます。都が独自に血液検査や汚染源の解明を行うよう求めました。また、横田基地周辺のモニタリング用井戸の再調査や学校の土壌調査を求め、都は、国が新年度の早い時期に土壌の測定方法を提示できるよう検討するとしており、注視する旨を答弁しました。
<都営地下鉄の駅業務委託> 交通局は、労働者派遣法違反の疑いで東京都労働局から指導票を受けたことについて、「必要な是正措置を講じる」と答弁しました。駅業務の現場では、都の職員である駅長や助役が委託事業者の労働者である駅員に指示することは避けがたい実態があるだけに、第三者機関を設置し、都の職員と委託労働者の双方から実態や要望をよく聞いて、抜本的な改善を行うことを厳しく求めます。
<統一協会> わが党の調査で、統一協会が、多摩市永山で高校・大学の隣、住宅地近傍の広大な土地を購入したこと、また「家庭教育支援条例」の制定を進める全国地方議員連絡会をつくり、都議や区議・多摩市議が名を連ねていることが判明しました。わが党の追及で、知事はようやく統一協会の違法性に言及しました。今こそ機敏に、活動の根を断つ対策を進めるべきです。
<朝鮮学校への補助金> 都が朝鮮学校への運営費補助を停止して13年が経過し、子どもたちの学ぶ権利がおびやかされています。このことがヘイトを助長する事態を生み出しています。その中で当事者・都民の運動はひろがり、都は議会で「東京都子ども基本条例」では、朝鮮学校の子どもも含む全ての子どもが含まれること、マイノリティの子どもたちの権利についても「誰一人取り残されることなく尊重され」る旨の答弁をしました。そうであるなら、即刻、補助金を復活すべきです。
<知事の歴史認識> 都の公式の歴史記録である『東京百年史』は、関東大震災後に多くの朝鮮人が虐殺されたことを史実と認め、震災による被害と区別される人災であるとし、東京の歴史の汚点だと明記しています。ところが知事が、わが党の質問に対し史実と認めなかったことは、きわめて重大です。
同時に、震災による犠牲者と、「極度の混乱の中で」犠牲になった人を区別する認識を示したことは、ささやかですが重要な変化です。しかし、それで済まされる話ではありません。関東大震災100年の今年の9月1日には、朝鮮人犠牲者に対する心をこめた追悼文を出すことを重ねて強く求めます。
4 19人の都議団 力をあわせて平和を守り希望が持てる日本へ
戦争か平和かの岐路に立つ今、統一地方選挙は、平和を守り、暮らしと経済を立て直す大事な選挙です。日本共産党は全員当選を勝ち取り、誰もが希望を持てる社会にするため全力を尽くします。
以 上