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質問・条例提案

2022.10.07

文書質問 文化芸術分野のハラスメント対策について とや 英津子都議(練馬区選出)

 

2022年第3回定例会で、以下の文書質問を提出しました。

令和4年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

   提出者 とや英津子

質問事項
 一 文化芸術分野のハラスメント対策について

答弁
 一 文化芸術分野のハラスメント対策について


一 文化芸術分野のハラスメント対策について

 文化芸術は人間の心身を豊かにします。コロナ禍でたくさんのストレスを抱えながら日々過ごしている都民にとって、文化芸 術にふれることは必要不可欠です。東京は文化芸術の中心地であり、文化芸術や文化芸術に携わる方々の人権を、守り支えることは、都政の重要な課題のひとつです。
 一般社団法人「日本芸能従事者協会」が6月23日から8月31日にかけて、俳優やモデル、美術・音楽家、映画製作スタッフら文化芸術分野で働く人たちを対象に、インターネットで「文化芸術メディア・芸能従事者ハラスメント実態調査アンケート」(以下「アンケート」)を実施し、結果が公表されました。華やかなイメージのある分野ですが、人権侵害や、業界特有ともいえるハラスメントの実態が浮かび上がりました。調査によると、93.2%の人たちが、パワーハラスメントを、73.5%の人たちが、セクシャルハラスメントを見聞きしたことがあるとのことです。
 「アンケート」には、「演出家からの俳優への高圧的な指導、暴言、態度が日常的に行われている」「原稿料に見合わない書き直しを命じられた」「存在、演技を全否定された」「稽古場で全員のいる前で容姿非難、自分のセクシュアリティをいじられる」「下着姿で舞台にあがることをほぼ拒否権がないまま執行された」などの切実な回答が寄せられています。
 私も関係者にお話を伺いましたが、仕事が終わった打ち上げの席でお酌をさせられるのは当たり前。業界内でいわゆる「枕営業」と呼ばれている性的関係を求められ、「いい役につけてやる」「曲を書いてやる」「売り出してやる」と言われることも日常茶飯事だったとのことです。業界内でもハラスメントを許さない声と運動が高まり、ハラスメントを防止する自主的な取り組みが広がっています。
 そこで、いくつかお尋ねいたします。

1 ハラスメントを根絶し、現場を自由で開かれたものにして、関係者同士が対等に議論できるようにすることは、優れた舞台や作品を作るための条件といえます。東京を映画、舞台芸術の一大拠点とするためにも重要な課題ですが、見解を伺います。

2 いかなる業界であっても、個人の人権と労働環境は守られなければならないと思いますが、都の認識を伺います。

3 都として、文化芸術分野におけるハラスメントの実態調査をすることが必要だと思いますが、いかがですか。

 「アンケート」では、ハラスメント防止対策に希望するものとして「契約書の明示」があがっています。今年2月に発表された日本労働弁護団の「文化芸術分野における労働法規の適切な適用等を求める声明」では、契約書を作成して互いの権利義務関係を明確にすべきとしたうえで、対等な契約関係を実現していく必要があるとしています。
 文化芸能従事者の権利が適切で明確な契約書をかわすことは、報酬や著作権などの保護に加え、ハラスメント防止にも有効です。現状では、芸能従事者は仕事をもらう弱い立場にあること、また、契約書によらず口約束で、仕事内容が明記されないことが、パワハラやセクハラが生じる原因の1つとなっています。例えば、契約書に性的なシーンや肌に触れる演技の有無の記載を必須とするなどの方法も、ハラスメント防止になると考えられます。
 文化庁は契約書のひな型を作るなどの取り組みを始めましたが、都としても積極的な役割を果たすことが望まれます。

4 東京都や歴史文化財団、東京都交響楽団が主催・共催したり補助をしたりする公演や文化事業、イベントでは、事業者と個々の従事者が労働条件や仕事内容を明記した契約書を結ぶことを義務付けることなども有効だと思いますが、いかがですか。

「アンケート」では「誰からのハラスメントでしたか」という問いに対して、59%の方が「監督・演出家・スタッフ」からと答えています。映画・演劇の現場では、優越的立場にある監督や演出家、製作者などと、俳優などとの関係が著しく非対称であることがいまだに散見されます。
 また、表現活動は成果物の評価が一様でなく、例えば同じ演技であっても、Aという監督はOKを出し、Bという監督はNGを出すということは往々にしてあり、どこからが過度な要求なのかがわかりづらいという側面があります。
 そうしたなかで、「ハラスメントをしている人は自覚がない」「芸能界とはそういうものと長年思ってきて、被害を受けた自覚がなかった」との声も寄せられています。

5 (公財)京都市音楽芸術文化振興財団のロームシアター京都では今年3月に「ハラスメント防止ガイドライン」を策定しています。東京でも、文化芸術分野ではどんな行為がハラスメントにあたるのか、具体的でわかりやすいガイドラインをつくることが有効だと考えますが、いかがですか。

6 業界の自主性を励ますためにも、都として文化芸術分野でのハラスメントをなくすための啓発を行っていただきたいと思いますが、いかがですか。

7 ハラスメント講習も重要です。4で述べたような都の関係する事業から始めていただきたいと思いますが、いかがですか。

8 文化芸術分野に合ったハラスメント講習ができる人材の育成や支援にも取り組むことを求めます。

9 8月に発表された「文化庁令和5年度 概算要求」では、新規事業として、文化芸術分野でのハラスメント防止対策への支援が盛り込まれました。作品や公演単位で実施するハラスメント防止対策に必要な経費を上限20万円で支援するという内容で、重要ですが、支援件数が全国で75件では足りません。
 ハラスメント講習や、安心して着替えができる場所を用意するなどのハラスメント防止対策に必要な経費を、都としても支援を行うことを求めます。

10 労働者に対するパワハラやセクハラは事業主に法的な防止義務がありますが、文化芸術関係者に多いフリーランスへのハラスメント防止は、厚労省の指針で「望ましい」とされるにとどまっています。法的に義務付けることも重要ですが、都の認識を伺います。

11 秘密が守られる相談窓口の設置や、相談窓口の周知も要望されています。特に、文化芸術関係の仕事環境に精通した相談員が対応する専門の窓口や、相談者が報復を受けない仕組みづくりが重要だと思いますが、いかがですか。

12 ハラスメントに加え、立場や収入が不安定なことなどから、心身の健康を損なう文化芸能従事者も少なくありません。都として、専門的なカウンセラーによるメンタルケアの相談窓口の設置をすべきですが、いかがですか。

令和4年第三回都議会定例会
とや英津子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 文化芸術分野のハラスメント対策について
1 ハラスメントを根絶し、現場を自由で開かれたものにして、関係者同士が対等に議論できるようにすることは、優れた舞台や作品を作るための条件であり、東京を映画、舞台芸術の一大拠点とするためにも重要な課題であるが、見解を伺う。

回答
 東京都文化振興条例において、都は、都民が文化の担い手であることを認識し、その自主性と創造性を最大限に尊重することを規定しています。

質問事項
一の2 いかなる業界であっても、個人の人権と労働環境は守られなければならないが、都の認識を伺う。

回答
 憲法では基本的人権を保障しており、広く、個人の人権や労働環境が守られることは重要であると認識しています。

質問事項
一の3 都として、文化芸術分野におけるハラスメントの実態調査をすることが必要であるが、見解を伺う。

回答
 都として情報収集に努めるとともに、厚生労働省や一部の芸術文化団体が、ハラスメントの実態調査を行っていることから、これらを注視していきます。

質問事項
一の4 都や都の歴史文化財団、東京都交響楽団が主催・共催したり補助をしたりする公演や文化事業、イベントでは、事業者と個々の従事者が労働条件や仕事内容を明記した契約書を結ぶことを義務付けることなども有効であるが、見解を伺う。

回答
 都や都の政策連携団体である(公財)東京都歴史文化財団や(公財)東京都交響楽団においては、関係法令や文化庁の検討会が取りまとめた「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン」等を遵守して適切に契約を実施しています。

質問事項
一の5 (公財)京都市音楽芸術文化振興財団のロームシアター京都では今年3月に「ハラスメント防止ガイドライン」を策定しており、東京でも、文化芸術分野ではどんな行為がハラスメントにあたるのか、具体的でわかりやすいガイドラインをつくることが有効であるが、見解を伺う。

回答 
 厚生労働省が定めたハラスメントに関する各種指針や文化庁の検討会が取りまとめた「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン」等をもとに、都内の芸術文化団体等において自主的に対策を進めていくべきものと認識しています。

質問事項
一の6 業界の自主性を励ますためにも、都として文化芸術分野でのハラスメントをなくすための啓発を行っていくべきだが、見解を伺う。

回答 
 芸術文化活動が行われる現場において、関係法令等を遵守し、ハラスメント対策を進めていくものと認識しています。なお、都では様々な場面でハラスメントに関する啓発を行っています。

質問事項
一の7 ハラスメント講習も重要であり、4で述べたような都の関係する事業から始めていくべきだが、見解を伺う。
 
回答 
 ハラスメント講習などの対策については、文化事業を主催する団体が自主的に進めていくものと認識しています。

質問事項
一の8 文化芸術分野に合ったハラスメント講習ができる人材の育成や支援にも取り組むべきだが、見解を伺う。
 
回答
 ハラスメント対策に関する人材の育成などについては、文化事業を主催する団体が状況に応じて進めていくものと認識しています。

質問事項
一の9 ハラスメント講習や、安心して着替えができる場所を用意するなどのハラスメント防止対策に必要な経費を、都としても支援を行うべきだが、見解を伺う。
 
回答
 ハラスメント防止対策は、文化事業を主催する団体において、関係法令等を遵守し、自主的に進めていくものと認識しています。

質問事項
一の10 労働者に対するパワハラやセクハラは事業主に法的な防止義務があるが、文化芸術関係者に多いフリーランスヘのハラスメント防止は、厚労省の指針で「望ましい」とされるにとどまっており、法的に義務付けるべきだが、都の認識を伺う。

回答
 誰もが快適に働くことができる環境は重要であり、フリーランスへのハラスメント防止に係る法的な義務付けは、国において適切に対応するものと認識しています。

質問事項
一の11 秘密が守られる相談窓口の設置や、相談窓口の周知も要望されており、特に、文化芸術関係の仕事環境に精通した相談員が対応する専門の窓口や、相談者が報復を受けない仕組みづくりが重要であるが、見解を伺う。

回答
 令和4年策定した「東京文化戦略2030」では、アーティストの活動を支援する相談窓口機能を整備することとしています。
 なお、厚生労働大臣の指針において、事業主は、相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備することなどが定められています。

質問事項
一の12 ハラスメントに加え、立場や収入が不安定なことなどから、心身の健康を損なう文化芸能従事者も少なくなく、都として、専門的なカウンセラーによるメンタルケアの相談窓口の設置をすべきだが、見解を伺う。

回答
 令和4年策定した「東京文化戦略2030」では、アーティストの活動を支援する相談窓口機能を整備することとしています。