「公営住宅の入居承継制度などに関する調査」結果について
(バナー写真向かって左から原純子(江戸川区)、尾崎あや子(北多摩第一)、里吉ゆみ(世田谷区)、斎藤まり子(足立区)、曽根はじめ(北区)の各都議)
日本共産党都議団は3月6日、「公営住宅の入居承継制度などに関する調査」の結果を公表し、記者会見を行いました。
「公営住宅の入居承継制度などに関する調査」結果について
2023年3月6日
日本共産党東京都議会議員団
はじめに-調査の概要について
・議会局を通じて、全都道府県と20の政令市に調査(回答は2023年1月1日時点)
・質問項目について
〇公営住宅の入居承継について
① 入居承継制度の有無
② 入居継承に係る厳格化の対応状況
③ 配偶者以外で入居者の地位の承継を認めている者(直近で継承を認めている者の範囲の見直し時期・内容)
④ 特定の病院の医師による診断書の有無
〇入居者の基準収入額(月額)
〇コロナ対策協力金等を認定所得の算定から除外しているかどうかについて
1、 使用承継(入居承継)について
〇都営住宅の使用承継制度とは
名義人の死亡や離婚による転出などのやむを得ない事情があり、収入が入居収入基準以下であることなど、条例等に定める基準を満たした場合に限り、継承して居住している同居親族等の方に引き続き都営住宅の使用を許可する制度です。(東京都・住宅政策本部HPより)
〇厳格化とは
国土交通省・公営住宅法施行令の一部を改正する政令(2005年12月)により、「同居承認に係る承継の厳格化(ガイドライン)」の通達が出された。
ガイドラインには「事業主体の判断による入居承継の対象範囲の厳格化が推進されるよう、現行の運用基準を見直し、原則として配偶者及び高齢者、障害者等で特に居住の安定を図る必要のある者に限る旨明確化された。」(国土交通省HPより)
【都営住宅の現状について】
〇都営住宅の使用承継は、原則配偶者である
〇配偶者以外で入居者の地位の承継を認めるもの
・東京都パートナーシップ宣誓制度により、証明を受けたパートナーシップ関係の相手方(R4・11月に見直し)
・承継しようとする者が60歳以上であること。ただし、同居者に18歳以上60歳未満の者がある場合は、一定の収入基準を具備する場合に限る
・東京愛の手帳交付者(知的障害の程度が1度から4度)、身体障害者手帳(1級から3級)
・病弱者。承継しようとする者又は同居者に疾病により当該都営住宅に継続しなければ生活の維持が困難であると認められる者があるとき。診断書については都立病院と指定
2、都営住宅の使用承継が厳しい結果、起こっている事について
・あと1週間後に60歳の誕生日を控えていたのに、親が亡くなり都営住宅を出ざるを得なかった。
・親が亡くなり、残されたのは子ども3人でした。長男は非正規雇用で働いていたので民間アパートに移りましたが、下の2人は養護施設に入るしかないと言われました。長男は仕事がなくなり家賃が払えなくなり、自分が生まれ育った都営住宅のそばの公園でホームレスになっていた。
・ひとり親家庭で母親と子どもが都営住宅に入居していましたが、病気で母親が亡くなってしまい、18歳の高校生一人が残されました。JKKの担当者から「施設に入るか、離婚した父親のところに行くしかない」と言われ、退去。亡くなった母親の実家に引き取られた。 など多数
3、調査結果の特徴について
【使用承継について】
①そもそも厳格化に対応していない県や政令市もある
・8道県(北海道、富山県、愛知県、京都府、和歌山県、島根県、香川県、福岡県)
・12市(札幌市、仙台市、千葉市、静岡市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、北九州市、福岡市、熊本市)
②東京都の厳格化は厳しすぎる-他県の使用承継(入居承継)の内容との比較から
*配偶者以外で使用承継を認めているもので東京都の基準にないもの
△身体障害者は「4級」まで認められているのが多数派である。「6級」(千葉県)、「手帳の交付を得る程度の者」(長野県)、「等級の定めなし」(高知県)
△「生活保護受給者」にも使用承継を認めているところ
(厳格化対応の当初から 12県4市)・岩手県 ・秋田県 ・山形県 ・千葉県 ・栃木県 ・三重県 ・徳島県 ・佐賀県 ・大分県 ・宮崎県 ・鹿児島県 ・沖縄県 ・さいたま市 ・川崎市 ・新潟市 ・浜松市
(厳格化を見直したところ 3府県)・大阪府(2007年) ・山口県(2011年) ・滋賀県(2012年)
・「特別低額所得者」(神奈川県)
△ひとり親世帯、多子世帯、多家族世帯、子育て世帯・妊娠中世帯にも
・「20歳未満の子を扶養するひとり親」(千葉県・宮城県、山口県・大分県・宮崎県)
・「母子・父子家庭」(神奈川県・滋賀県・大阪府・佐賀県・鹿児島県・沖縄県・横浜市・相模原市)
・「18歳未満の子を3人以上扶養」(山形県)、「中学生以下」(浜松市・相模原市)、「多子世帯」など(横浜市・相模原市)
△空き住戸の状況によって
・「団地のストック状況等を勘案し、特に居住の安定を図る必要がある者については、承継が可能な範囲以外の者も、承継できることとする」(長野県・2020年4月見直し)
・「入居者が居住していた県営住宅の団地の他の住戸が空き室となっている場合。*入居承継の事由が発生した前月から概ね6か月間継続して空き室となっている場合」(鳥取県)
△「子や孫」も使用承継を認めているところ
・「名義人の死亡、離婚(内縁関係の解消を含む)及び婚姻で、かつ、同居を開始して1年以上」(高知県・2020年7月27日に通知文書)
・高齢化により自治会活動ができないという要望が強く、議会でも提案があり、1年くらい議論し、令和2年に見直しを行い「子・孫」(1回限り)を要件に加えた(大阪府・2020年10月1日)
・「承継者が平成19年3月31日以降から引き続き同居していること」(岡山市・2012年4月1日施行)
・「入居者が県営住宅に入居したとき、又は入居者の子として出生し、若しくは養子縁組したときから同居していた者で、条例第7条第4項に定める優先入居者に限る」(鳥取県・2007年10月1日改正)
・「全ての同居者が未成年の場合(あらかじめ後見人を定めた上、未成年者のうち一人について承認する)」(鳥取県・2007年10月1日改正)
・「20歳未満の同居者を扶養する場合又は病気等の事情を有する子等(ただし最長5年)」(埼玉県・2008年年4月1日施行)
△その他(裁量)
・「特に居住の安定を図る必要があると認められる者」「住宅を退去した場合に住宅に困窮と認める者」など(岩手県・兵庫県・愛媛県・高知県・沖縄県)
③近年、パートナーシップ制度にもとづく見直しが進んでいる
秋田県・栃木県・群馬県・東京都・神奈川県・新潟県・長野県・三重県・兵庫県・鳥取県・徳島県・高知県・佐賀県・大分県・宮崎県・鹿児島県の16都県。さいたま市・横浜市・川崎市・新潟市・浜松市・岡山市の6市
④病弱者などの診断書について東京都だけが都立病院の診断書を必須としている
【コロナ対策協力金等を認定所得の算定から除外することについて】
〇東京都は、事業主体の判断でコロナ対策協力金等については、認定所得の算定に加えている
〇コロナ対策協力金等を認定所得の算定から除外している県・政令市
・北海道・神奈川県・新潟県・福井県・長野県・愛知県・岐阜県・三重県・滋賀県・兵庫県・奈良県・鳥取県・香川県・長崎県・大分県・宮崎県・鹿児島県の17県
・相模原市・新潟市・岡山市・広島市の4市
まとめと提案
1、 そもそも「厳格化対応していない」県・政令市があることが明らかになりました。また、「厳格化対応している」県や政令市のなかでも、厳格化を緩和している県・政令市があることも明らかになりました。
2、 都は他県や政令市と比較しても「厳格化」に厳しい状況があります。少なくとも「生活保護受給者」については、居住の安定を確保する観点から、使用承継の対象とするよう見直すべきだと考えます。また、「子どもを扶養している同居者」「多子世帯」「若年の子どもたちが残された場合」などについても使用承継の対象とすべきと考えます。
3、 名義人が亡くなった場合の「使用承継」要件について、抜本的に解決するには、都営住宅の新規建設を行うことです。東京都は石原都政以降24年間新規建設がありません。
4、 病弱者の診断書については、都立病院の診断書を必須としていますが、かかりつけ医の診断書に改正することを求めます。
5、 コロナ対策協力金等を都営住宅の認定所得の算定から除外するのか、それとも算入するのかは、国土交通省は「事業主体の判断」としています。法的判断はどちらもあり得るが、中小事業者の実態や東京都のコロナ感染対策の協力金の目的から判断するならば、コロナ対策協力金等は、認定所得の算定から除外すべきだと考えます
以上