環境・建設委員会 神宮外苑再開発事業について 原純子都議(江戸川区)の質疑
原純子都議の質疑の様子は下記から動画でご覧いただけます。
神宮外苑再開発 全樹木の活力度「事後調査報告書」ならびに樹木保全策「変更届」の審議について-審議へのイコモスの参加を
*速記録より作成
○原委員 次は、神宮外苑再開発事業に関連しての質問に移ります。
9月7日に、ユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議、イコモスからヘリテージアラートが発出されました。ヘリテージアラートとは、危機的な状況に直面する文化的遺産に対して出される警告のことです。国内では3例目です。
東京が庭園都市として高い価値を有しながら、そのコア部分である神宮外苑において、3千本の樹木を伐採、移植し、超高層ビルを乱立させる再開発事業が多くの市民の反対を押し切って進められようとしている事態は、国際機関イコモスに衝撃をもって受け止められ、再開発事業の中止を要請したのがヘリテージアラートです。
都市公園の敷地を削って、超高層ビルや商業施設を造るというのは、世界の都市では例がないそうです。
イコモスの緊急要請は、事業者に対し、開発事業の撤回を求めるとともに、東京都に対し、都市計画決定の見直しと環境アセスメントの再審を行うべきとしています。事業者と都の責任は重大です。
今、解体中の神宮第2球場跡地に新ラグビー場を建設する計画をめぐって、事業者は、予定地とその周辺、建国記念文庫の森の樹木の保全策の見直し案を提出することを、都と審議会に約束していました。
ヘリテージアラート発出後、9月12日、東京都は事業者に伐採前の見直し案提出を要請、事業者は見直し案を変更届として提出することを表明したことで、樹木伐採は当面は止まっていますが、予断を許さない状況といえます。
この変更届、そして、事後調査報告書について、まずお聞きします。
先日、事後調査報告書の提出について、10月としていたのを延期し、12月以降になると事業者が公表しました。この事後調査報告書の中身は、全樹木についての活力度調査の結果の報告です。既存樹木の保全策についての変更届とは別のものです。
当然、樹木の健康状態が明らかになる事後調査報告書が提出をされた後、この調査結果も受けての見直し案、変更届になると思われますが、そのような解釈で間違いないでしょうか。また、そうすると、変更届の方は少なくとも年明け1月以降の提出になると考えてよいでしょうか、お尋ねします。
○長谷川政策調整担当部長 アセス図書は事業者が作成し、都に提出するものでございます。
都としては、事業者から図書が提出され次第、内容を踏まえて手続を進めることになります。
○原委員 どちらが先というのはないということだったと思います。アセスの図書は事業者が作成し、それぞれ独立した文書として提出されることは、環境アセスの仕組み上、当然のことだと思います。
しかし、新ラグビー場の整備に関わる周辺の樹木の保全については、既に評価書で個別の樹木の取扱計画が出されており、審議会の承認を得ています。同時に、今後も樹木保全の努力で変更届を出す余地が残されている。その場合、樹木の扱いを変更する重要な根拠となるのが、全樹木の活力度の事後調査の結果報告であることは明らかです。
活力度調査結果が不明のうちに、この木は伐採から移植に変更とか、保全エリアに残すとか、決められないのは明らかです。公表が12月以降となった事後調査結果が報告されて以降に、その内容を受けた形で変更届が出され、審議会で審議されるべきです。
さらにいえば、イチョウ並木の活力度がAまたはBの良好状態だとしていた事業者の評価が大幅に変更されなければ、実態と全く合いません。
この事後調査報告書で明らかになる活力度調査の結果は、全樹木対象だということで、イチョウ並木通りのイチョウも含まれています。イチョウ並木の保全が現在の重要課題であることから考えれば、この事後調査報告書も大変重要なものになります。
事後調査報告書についても、審議会における徹底審議が必要です。単なる報告にとどめず、十分に時間を取って審議することを求めますが、いかがですか。
○長谷川政策調整担当部長 先ほどもご答弁したとおり、事業者から図書が提出され次第、内容を踏まえて手続を進めることになります。
○原委員 1回目の事後調査報告書については、審議会議論がされています。当然、2回目に当たる今回の報告も同様の対応をされるべきですので、徹底審議の実施を求めておきます。
変更届について伺います。
私たちが入手した情報では、新ラグビー場の計画敷地を多少南側へずらす案、あるいは形状の変更など検討をされているようです。もしそうだとすると、それ自体、大きな計画変更になります。
事業者から都と審議会に出される変更届については、その重要性に鑑み、当然審議の対象とすべきですが、いかがですか。
○長谷川政策調整担当部長 繰り返しの答弁になりますけれども、事業者から図書が提出され次第、内容を踏まえて手続を進めることになります。
○原委員 審議は必須です。通常、変更届は、工期の遅れにより、工期の延長などの届出が多くを占めると聞いています。設計変更という大きな変更が届出だけで進められてしまってよいのでしょうか。
しかも、例えば、新ラグビー場を少しずらしたところで、建国記念の森を守ることはできません。徹底審議が必要です。
審議に当たっては、この間、評価書に対し多くの指摘や資料提供をしている日本イコモス国内委員会の委員を必ず参加させていただきたいです。または別の場であっても、事業者とイコモスの直接対話の場を設けるべきですが、いかがですか。
○長谷川政策調整担当部長 条例第74条の2では、審議会は、必要があるときは、事業者その他の関係者の出席を求めることができると規定されておりますが、その他関係者とは、環境影響評価図書の作成に関わったコンサルタントを想定したものでございます。
直接対話については、当事者が判断すべきものと考えてございます。
○原委員 その他関係者の説明をいただき、ありがとうございます。
東京都環境影響評価条例の第74条の2には、審議会は、第69条の規定による調査審議を行うため必要があるときは、事業者その他関係者の出席を求め、事業者その他関係者から資料の提出を求めることができると書かれています。
その他関係者とは、評価図書の作成に関わったコンサルタントを想定とのお答えでしたが、特にコンサルタントだけですと正式な文章で確認しているわけではありません。それは、これまでの考え方という意味で、今後もずっとその範囲に制限することを決めているわけではないのです。その他関係者というくくりで、日本イコモスの参加を実現できるようにすればいいわけです。
または、こちらはどうでしょうか。同条例の第93条に、都市計画決定権者は、事業者に対し、環境影響評価の手続を行うために必要な調査等の実施、資料の提供、説明会への出席その他の必要な協力を求めることができるとあります。
神宮外苑再開発の地区計画の決定権者は東京都知事です。したがって、知事は、事業者に対し、手続に必要だと判断すれば、その他の必要な協力の対象として日本イコモスを招請するよう求めることは可能だと思いますが、いかがですか。
○長谷川政策調整担当部長 条例第93条にある都市計画決定権者とは、第92条におきまして、アセス対象事業が都市計画法第4条第7項に規定する市街地開発事業、または同条第5項に規定する都市施設として同法の規定により都市計画に定められる場合において、都市計画を定める者とされており、本事業につきましては、いずれにも該当せず、第93条は適用されません。
○原委員 大規模な市街地再開発事業は、通常、都市計画上の位置づけをもって行われますが、この神宮外苑再開発については、地権者の数を3井不動産、明治神宮など4者に抑えて個人施行とし、市街地再開発事業についての都市計画決定を回避することで、審議を免れたといわれています。
そのことが環境影響評価の過程においても、いざ、今回のような重大な局面を迎えた際に、条例の網の目をかいくぐる役割を果たしているということだと思います。実に計算高いやり方だと思います。
しかし、事業者とイコモスの直接対話は、今や社会的要請だと思います。事業者には、これに正面から応える社会的責任があり、また、東京都にも、これを促す重大な責任があります。日本イコモスの審議会出席と徹底審議を実施するよう求めます。
今後、事業者から出される見直し案が、多少ラグビー場の位置をずらすような内容だったとしても、およそ樹木の保全を保証するものにならないことは容易に想像できます。審議会などでの徹底審議を行うとともに、小池都知事がこの計画の抜本的見直しを求める必要があると思います。
事業者に対し、伐採を中止し計画を抜本的につくり直す要請を知事が出すことを求めますが、いかがですか。
○長谷川政策調整担当部長 本事業をはじめ、当局で実施している環境影響評価手続は、事業者が大規模な開発事業を実施する際に、あらかじめその事業が環境に与える影響を予測、評価し、その内容について専門的立場からの審査を受ける一連の手続でございます。
○原委員 手続とはどんなものですかと聞いているんじゃないんですね。環境局としては、こうしたアセスの範疇のお答えになるのかもしれませんが、開発許可を出した小池知事の責任は免れません。小手先の見直し案で再開発工事が進むことは許されません。知事が改めて計画の変更を要請すべきです。
続いて、ヘリテージアラートに対する事業者の見解が、イコモスをはじめ多方面からの批判を受けている中心点について伺っていきます。
この間、神宮外苑再開発について、かつてない大きな規模で反対世論が巻き起こっています。神宮内苑とともに人々に愛され、スポーツ施設も併せて親しまれてきた神宮外苑、風致地区を再開発で、一部の事業者の勝手な描きで破壊されることへの抵抗であります。
著名な方々が次々と声を上げ始め、都議会では、会派を超えた外苑議連を10月4日に結成したところです。正式名称は、神宮外苑再開発をとめ、自然と歴史・文化を守る東京都議会議員連盟です。参加都議は40名、全体の3分の1に及ぶ勢力です。
先日は、国会議員でつくる外苑議連との懇談や、日本イコモス国内委員会の石川幹子氏よりレクチャーを受けるなど、この再開発を何としても止め、外苑の森を守るんだと、覚悟を持って取り組んでおります。
神宮外苑市街地再開発事業について、2月17日に都が開発許可を出して以降、環境影響評価書の内容に対し、樹木の活力度をはじめ事実認定の間違いなど、58項目の指摘が日本イコモスから出されるなど、活発な議論が続き、都民からは、事業者と日本イコモスの直接議論の場をとの要望が再3出されていますが、事業者は背を向け続けています。
住民説明会もようやく開かれましたが、対象を380メートル以内の居住者と謎のラインを引き、制限したことも大きな批判が寄せられました。
そして、9月7日、国際イコモスから出されたヘリテージアラートに対し、9月29日に事業者から見解を示す文書が出されました。
私がまず驚いたのは、イコモス独自の認識の下で一方的に発信されたと書かれていたことです。ユネスコの諮問を受け、国際遺産の登録に重要な役割を果たすような国際的な専門家集団からの警告に対し、見解の最初からこんなことを書いていること自体、不見識極まりないです。
事業者側として指摘を真摯に受け止め、専門家や市民の声を、意見を聞く姿勢がこの間ほとんど見られず、大問題です。
例えば、森について事業者はこのように述べています。明治神宮の広大な森と異なり、外苑の計画エリアにおいて、一部の方々から森と称される場所は建国記念文庫の敷地のみであり、総面積28.4ヘクタールに対して約5千平方メートル、1.7%、3.0メートル以上の既存樹木は149本です。ヘリテージアラートにおいて、建国記念文庫の敷地内の樹齢100年以上の樹木65本のうち11本のみが保存、約80%が伐採との記載がありますが、事業者において樹齢を確定できる記録はございません。事業者はこのように書いています。
ヘリテージアラートが森を完全に破壊するとした場所を建国記念文庫の敷地に限定した上で、こんな小さな森なんですよと狭さを強調し、そこで歴史を重ねてきた樹木の樹齢は分からないといい切る態度は、到底、森に触れる資格などないという怒りを感じました。
イコモスのヘリテージアラートの100年にわたり育まれてきた森は完膚なきまでに破壊されるという警告が現実のものになり、取り返しのつかないことになる前に、何とかしなければと思います。
イコモスの警告、または日本イコモスの評価書への指摘に対し、事業者の見識が不十分、または答えになっていないと思われるもののうち、とりわけ重大だと思われる5点について質問し、評価書の評価を根本的に問い直したいと思います。
まず1点目は、先ほど触れました、外苑に育つ樹木の樹齢の見識が不十分なことです。事業者は9月29日のヘリテージアラートについての事業者見解についての中で、外苑の森の樹木について、事業者において樹齢を確定できる記録はございませんと述べていますが、石川氏は、樹齢を推定することは可能であり、造園時の記録や樹木の状態など、あらゆる方法で樹齢を推定し、そこにふさわしい樹木の保全方法を出すのが事業者の責任だと指摘をしています。
この事業者責任を果たしていると審議会では評価して承認をしたのでしょうか。お伺いします。
○長谷川政策調整担当部長 事業者は、毎木調査によって樹木一本一本の状態を把握した上で、生態系保全のための予測調査を行っております。
○原委員 樹齢は関係ないということでしょうか。樹木医なら、樹種、高さ、目通りなどから、おおむねの樹齢を推定する能力を通常は持っているそうです。樹齢を一切考慮せずに、伐採や移植の計画を立てているということでしょうか。信じられません。
実際、石川氏は、現地調査、毎木調査のみならず、戦後の米軍撮影の航空写真や植樹などの歴史的書物にも当たられており、その樹木がいつからその地にあったのか、どういう経緯で植えられたのかを調べています。
結局、事業者からは、先人たちが100年、200年先の未来を見据えて計画し、その後、実際にそれだけの歳月を経て遷移し、今日、豊かに実っている外苑の森の成り立ちについて、僅かのリスペクトも持たず、その結果、樹齢を知ろうとする努力の一片すらも見受けられない、極めて残念な事態です。
2点目は、環境影響評価書において、保全の基本となる現存植生図が出されていないことです。
事業者から出されているのは緑地の分布状況図であり、しかも、それは市街地再開発の事業敷地内のみです。環境アセスメントにおいては科学的調査が必須ということは、事業者が示した環境アセスのマニュアルにも書かれていることです。
また、森林生態系を知るためには、再開発区域以外も含む神宮外苑の植生の全体像を把握する必要があります。そのためには、単なる緑地分布図ではなく、現存植生図が必要であり、かつ、外苑全体の森を網羅するものが必要です。
日本イコモスの石川氏は、自ら相関による現存植生図を作成されています。それがこちらです。(画像表示)
事業者の緑地分布図、こちらと比較すると、こちらが日本イコモスの提供の現存植生図、その違いは一目瞭然だと思います。この部分がここの部分ということになります。
事業者は、現存植生図が調査もされていないと石川氏が指摘していることに対し、事業者見解では、まともに反論をしておりません。環境影響評価審議会では、なぜこれを求めずに承認をしたのでしょうか。お答えください。
○長谷川政策調整担当部長 現存植生図について、事業者は、本年4月と5月の審議会において、評価書に掲載されている緑地の分布状況が現存植生図に該当すると説明しています。
同審議会では、評価書に虚偽や誤りはなく、予測評価に影響を与えるものはないと判断されております。
○原委員 緑地の分布状況だけでは植生が分からず、群落の特徴を正確に反映できないことは明らかです。いわば、アセスメントの前提を欠く状態だということだと思います。
また、建国記念文庫の森は、単独に存在するものではなく、外苑全体の中で捉えることが必要です。
同様の理由から、絵画館前の芝生広場について、市街地再開発事業の事業地に組み込まれていないからといって、そもそも生態的情報を欠落させているのは、全く適正ではありません。
日本イコモス国内委員会が解明しているとおり、神宮外苑の意匠は、20世紀初頭の都市美運動のデザイン思潮を踏まえたもので、近代日本を代表する文化的景観であり、近代都市美、風景式庭園が原型となっています。
ちょっと小さいんですが、紹介しておきます。(画像表示)
こちらが青山通りですね、これ、イチョウ並木です。青山通りから4列のイチョウ並木のビスタ、景観を通す軸になりますが、この線を経て、芝生広場では、疎林、まばらな林から次第に混交林、落葉広葉樹や常緑広葉樹林に移行をし、ビスタの焦点にある絵画館の背後では、常緑広葉樹の深い森が全体を受け止める意匠となっています。
この空間構造は、個別に切り離されて成立するものではなく、緊密な関係性の中に都市美の形成が行われたものです。
こうした当時の先人たちの最新鋭の思潮が100年の時を経て、現在どのように受け継がれ、豊かに実っているのか。こうしたことへの真剣な考察を抜きにして、神宮外苑の森の保全に取り組むことは、本来は不可能なのではないでしょうか。
連携した緑のネットワークをこの外苑全体が築いていることは、現地を歩けば、私でも分かります。
結局ここでも、事業者の森といえるのは建国記念文庫のみといったような、本当に狭くて浅い認識が根底にあるから、ちゃんとした現存植生図が出てこないのではないでしょうか。
3点目です。事業者の建国記念文庫の森についての植物群落調査結果について、石川氏は、事業者が単1の群落と扱っているのは間違いで、調べてみると、4つの群落とすべきと指摘していましたが、事実関係はどうなのでしょうか、お伺いします。
○長谷川政策調整担当部長 事業者は、本年5月の審議会におきまして、樹木一本一本の毎木調査結果を踏まえて、生態系保全のための予測調査を行っていると説明しており、審議会では、予測評価に変更は生じないと判断されております。
○原委員 予測評価に変更が生じないということでしたけれども、石川氏のレクチャーをしっかりと聞いてほしいと思います。
石川氏は、この場所の異なる群落を1つの群落としたことを極めて初歩的な誤りと指摘をしています。方形区の取り方が適切ではなく、群落断面図も調査票と一致しないことや、群落名が植栽樹林帯、落葉広葉ではなく、常緑落葉広葉樹混交林の分類が適切だと指摘をされています。
石川氏によると、神宮の森は、創建から100年の時を経て、自然林の状態に遷移をしている。これを理解することが必要だそうです。
それは、林学者の本多静六博士が100年前に描いた林の遷移予想図なんですね。ちょっとお示ししたいと思います。(画像表示)
こちらの絵は、本多博士と共に神宮の森づくりに取り組んだ本多氏の弟子、本郷高徳氏が描いたものです。
1段目は植栽直後の林、これですね。2段目は50年後、その下が100年後、最下段が150年後の予想図です。この小さい三角が松と書いてあります。細長い三角のところがここに書いてありますが、松以外の針葉樹類、ヒノキ、サワラなどと書いてあります。そして丸いの、綿あめみたいなのが常緑広葉樹と書かれておりまして、カシ、シイ、クスなどというふうに書かれております。
これが100年前に描かれた予想図です。広葉樹や針葉樹など多様な植種を交ぜ、高木層、中木層、低木層と樹高、幹の高さを多層構造にします。そのために単一でない複数の群落が必要だったんです。
落ち葉は微生物で分解されて腐葉土となり、その栄養で植物は成長を続けていきます。土の中の水分と木漏れ日の光を受けて、樹林全体として天然更新が進む。こうして時を経て、自然林へ遷移していくそうです。ここに変移と書いてありますが、この頃は遷移という言葉がなくて、今は遷移という言葉を使っているそうです。
昆虫、鳥類、小動物などが暮らし、生命の循環の役割を果たすそうです。これを石川氏は、森のダイナミズムと呼ばれました。
この自然林への過程を、内苑はこの予想図どおり進んでいるそうですが、今、100年目ですから、この辺ですね。そして、この建国記念文庫の森も同じように、50年後、100年後の予想図どおりに、自然林へ遷移しているそうなんです。内苑と同じように遷移しているということなんですね。
100年、200年先を見越した先人たちの先見性と森のダイナミズム、すごいというふうに思いませんか。こうした森の歴史を理解するならば、群落を単一のものと扱い、真二つに切って、南側の樹木をばらばらにしてしまうことが、いかに先人たちに背くものかを認識すべきです。
この森にある3メートル以上の樹木149本のうち、48本が移植され、43本が伐採される計画で、これは全体の60%になります。残る樹木も、新ラグビー場の屋根つきの建物に日が遮られ、日陰では育たない樹木が枯死してしまう可能性が高く、樹木は危機に瀕しています。群落調査の見誤りは、決定的な森の壊滅をもたらすことは明らかです。
4点目に入りますが、事業者見解である開発は生態系に大きな影響を与えないどころか、森は壊滅してしまうという現実が迫っています。
外苑の森で最も消滅の危機にあるのが、ヒトツバタゴ、通称ナンジャモンジャの木だそうです。建国記念文庫の森に34本あるうち、北側の僅かなスペースに16本残る予定ですが、暖かい陽光の中でしか開花できないナンジャモンジャは絶滅すると、石川氏は厳しく批判しています。
事業者は、特定の樹種が全滅すると指摘されているのに、開発は生態系に大きな影響を与えないとなぜいい切れるのでしょうか、お答えください。
○長谷川政策調整担当部長 建国記念文庫の樹林については、北側を保全エリアとして残した上で、文化交流施設棟周辺及び中央広場周りにおいて、建国記念文庫等から樹木を移植し、新たに新植樹木も配置することで、建国記念文庫の樹林及び生態系を復元する計画としております。
○原委員 北側を保全エリアとして残した上でと、もうそこから質問をし直したいです。今の計画では保全エリアなんかにならないといっているんです。移植をし、新しく植樹をするから復元できると簡単にいいますが、100年かけてできた自然林への畏敬の念があれば、それは復元といえるものにならないことは明らかではないでしょうか。
文化交流施設となる建築物を囲むように、または中央広場周りに植える。これでは森の復元は無理です。そうある以上、私たちは今の森を残して、150年、200年先まで守らなければならないと思っています。ここはそういう森なんです。
石川氏は、樹木には物語があるといわれました。外苑を象徴する樹木として、ヒトツバタゴの歴史をお話しいただきました。まだ名前がなくて、人々がナンジャモンジャと呼んでいた木、ヒトツバタゴは、江戸時代からこの青山の地にあったそうです。
青山練兵場にあった初代ヒトツバタゴの木は、大正13年、1924年に天然記念物に指定されました。元帝国大学教授の白井光太郎博士が2世の育成に成功していますが、その二世の一つと推定されるヒトツバタゴの木が、外苑霞ヶ丘門の正面、建国記念文庫の森の一角に立っています。
(画像表示)おととい、外苑ウオークに参加し、写真を撮ってきました。(画像表示)
この真ん中のところ、ここがヒトツバタゴです。これが桜の木です。春になって桜が咲き、その桜が終わる頃に、今度は、この真ん中にあるヒトツバタゴが真っ白な花を咲かせて、道行く人々を魅了いたします。
二世のこの木は、幹回り195センチに育ち、初代の木を超えて成長をしています。この木、再開発事業で伐採対象にされていました。日本イコモスなどから指摘が、また、たくさんの市民から批判があり、移植予定となりましたが、移植でもつかどうか、枯死したら一体誰が責任を取るのでしょうか。移植先もいまだに不明です。
16本のヒトツバタゴは建国記念文庫の森に保存されるといいますが、南側に立つ予定の新ラグビー場は屋根つきで、約50メートルの高さになるそうです。残った僅かな森は、日が当たらなくなります。移植は14本、伐採4本、ヒトツバタゴ二世、三世と大切に受け継がれてきたこの木が、その命をつなげる保証はありません。
再開発の犠牲で消えていく。これでも開発は生態系に大きな影響を与えないといえるんでしょうか。
現在、樹木の成り立ち、群落、土壌の成分を無視して移植しても、育たないと指摘をする複数の樹木医さんからの指摘が出されているところです。
最後に、5点目です。事業者が出した4列のイチョウ並木のイチョウの活力度調査は、124本がA、4本がBで、128本全てが健全というものでした。
日本イコモスの調査では、形、樹勢、先端部の状況が要注意のイチョウが5本、著しく枯損しているのが1本、この6本について、事業者は全てAの評価をつけています。あまりにずさんな調査といえます。
本年4月のイチョウの状況に関して、事業者は、一部のイチョウで葉の色づきが早いものがあるとしていましたが、それは色づきではなく枯れ葉ですと日本イコモスが指摘をしたところです。
樹木の状況については、最初に触れたとおり、事業者から改めての樹木調査結果、事後報告書が出されることになっております。
質問は、新神宮球場と商業施設の建設用地からイチョウの幹までの距離が僅か4メートル、その影響についての評価報告についてです。
イチョウ並木の保全に関する事例の研究について、日本イコモスが新宿御苑トンネル樹林への影響についての昭和59年から令和4年までの40年の軌跡を調査して提起をしていますが、事業者は、東京駅や御堂筋のパンフのみの添付で、自ら調べた形跡がありません。これで十分な審査といえるのでしょうか、お答えください。
○長谷川政策調整担当部長 事業者は、本年5月の審議会において、審議会からのイチョウの保全に際しての事例を収集するようにとの助言を踏まえて、他地区の事例を評価書に掲載したものであると説明しています。
○原委員 確かに、そもそも審議会からの助言も御堂筋を例に挙げて、長期的な保全の目標を示すようにといっているのみで、ほかの事例について調査研究を求めたわけではありません。事業者は御堂筋のイチョウ保育管理計画から言葉を借りてきて、基本計画の中に次の100年云々と書き込んだにすぎません。本当にこれでいいのでしょうか。
ちなみに、大阪市に連絡を取って、このイチョウ保育管理計画を確認したところ、御堂筋のイチョウは幅4メートル程度の植栽帯に植えられていて、両脇は固い路盤、路体で固められているので、そこに根を伸ばすことは不可能で、樹形や樹勢を見ても厳しい環境の中でやっと生きているといった状態とのことでした。そのため、対策をしても回復の可能性が低い場合には、イチョウの植え替えを否定していません。
この事例、外苑のイチョウの保全の参考になりますでしょうか。事実、計画から10年がたち、この御堂筋のイチョウは、台風被害を除いても、実際にイチョウの更新があるそうです。一般的な街路樹の保全計画としては、特に問題にされない計画かもしれません。
しかし、言葉を借りただけとはいえ、さらに100年先を見据えた保全が絶対命題である神宮外苑4列のイチョウ並木の参考として、評価書に掲載するのに適した事例なのでしょうか。
翻って、日本イコモスが調査、提供した新宿御苑トンネルの過去事例を見ますと、トンネルが土壌を掘って建設された前と後のイチョウ並木やそのほかの種類の樹木への影響を40年のスパンで検証をしています。
日本イコモスより提供いただいた資料です。(画像表示)
御苑のトンネルから15メートル以内の距離にあるエリアにおける保存樹木の残存率は33%でした。1984年時点で、歴史的樹木として保全の対象とした94本のうち、2022年現在、17本の常緑広葉樹と落葉広葉樹と大イチョウ14本は無事、枯死した樹木は63本だそうです。
これに対し、15メートルから25メートル離れているエリアの21本のイチョウは、全て順調に生育し、300年の樹齢をさらに伸ばしているそうです。
このことから、イチョウが無事に育つためには、地下を掘る工事区間から少なくとも15メートルは離さなければならないことが分かります。逆に、きちんとした保全策を取れば、イチョウは300年、400年と生きられるということです。重要な参考資料です。
こうした調査資料を真摯に読み深め、事例評価を行う姿勢を事業者が示さなければ、国民の宝であるイチョウが守れないことは明らかです。
以上、石川幹子先生に導かれながら、5点にわたり、評価書の重大な問題点を見てきました。
これまでの環境影響評価審議会において、各ご専門の先生方が、その知見を生かし、審議を深められてきたことに敬意を表します。同時に、それでもなお、私たち都議の目から見ても、それはつまり都民の目から見て、評価書の審議が十分に尽くされたとはいえない状況が残されていることが明らかになったと思います。
それを踏まえ、私は、神宮外苑地区市街地再開発事業の環境アセスの再審査を求めるものです。知事がそれを要請すべきです。
外苑の端から端まで歩き、千本の樹木の状態を一本一本丹念に調べた石川氏の驚異的な努力と正確な調査資料の提供があったことで、こうした事業者の出してきた評価書の問題点が私たちにも分かるようになったことに、敬意を持って応えたいと思います。
まず、何より事業者が、そして開発認可を出した都が、原点に返り、この外苑の価値を学び直すことを呼びかけます。
知事は、これまでの事業者任せで、都民世論に難癖をつける態度を根本的に改め、神宮の森を本気で守る立場で行動し、物をいうべきです。
まとめます。事業者からの見直し案が出された後、伐採を始めさせないよう、知事が強い要請を行うこと、審議会での徹底議論を必ず保証すること、また、イコモスの参加を実現させること、審議会において環境アセスの再審を実施すること、以上を強く要請します。
都議会と東京都知事が100年の森を守り、この先200年、300年までつなぐ、先人たちとの約束を厳守できるよう、進む道を間違えないよう、開発を中止することを求め、このテーマを終わります。