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■ 議会での質問 日本共産党東京都議団 |
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◯七十八番(大山とも子君) 初めに、子どもと教育の問題です。
知事は、施政方針で、個性と競争を重視した教育に転換すると述べられましたが、このことについて、少なくない都民や父母が、これまでだって、受験競争によってあんなに子どもたちが苦しんできているのにと、衝撃を受けていす。
日本の子どもたちは、幼いころから、政府の学習指導要領押しつけの中で、詰め込み教育と学力競争を強いられ、苦しんできました。小学校のある教師は、一年生なのに、もう、僕できないよと投げ出す子がいます、平仮名、片仮名、それに漢字、ほかに時計や時間を読む算数、これが六歳の子どもにふさわしい学習の量でしょうかと、理解できないままに次から次へと課題が通り過ぎていく教育に、疑問を投げかけています。
こうした状況は、ますます子どもを追い詰め、子どものいらいら感は学年が進むにつれて高まり、高校受験を控えた中学三年生で頂点に達していること、また、中学二年生の九割が、勉強がつまらない、わからないと答え、学校での日常生活に疲れたと訴えるなどの状況にあることが、都の調査でも明らかになっています。子どもたちの心に募るいらいらやむかつきの背後に、詰め込みと競争教育があることは明らかです。
我が国では、学校が、よい企業への就職を目指して、より高い学歴を獲得するための競争の場とされてきました。高校の学区の拡大は、より多くの高校の序列化をもたらし、共通一次試験、センター試験が大学のランク化をもたらす中で、学ぶことの楽しさ、おもしろさを知ることよりも、有名大学合格のための受験対策が重視されてきたのです。
競争による教育システムの場となってきた学校は、少なくない子どもたちを苦しめ、圧迫しています。いじめや不登校、学級崩壊などの学校病理現象は、その象徴です。
こうした競争の教育の破綻は、だれもが何とかしなければと憂いている問題の一つですが、問題は、どういう方法で解決の道に踏み出すのかということです。私は、知事がいうように、学区をなくしたり、競争の一層の重視では、子どもたちに伸び伸びとした教育の場を与えることはできないと思うのです。
昨年六月、国連の子どもの権利に関する委員会は、日本の教育制度について、児童が過度に競争的な教育制度のストレスにさらされていること、その結果として、余裕、運動、休息の時間が欠如していることにより発達障害にさらされていることを懸念し、この問題を克服するために適切な措置をとるよう、日本政府に対して勧告しました。同様の見解を、世界子ども白書でも述べています。
知事、過度の競争が子どもを苦しめていると指摘した、国連子どもの権利に関する委員会の勧告をどう受けとめますか。また、今でさえ過度の競争で悲鳴が上がっているとき、これ以上の競争を拡大することは、いじめや不登校などの事態をかえって悪化させるのではないかという都民の不安をどう受けとめますか。答弁を求めます。
教育の問題で今重要なことは、さまざまな意見があることを踏まえて、知事が特定の考え方を推し進めるのではなく、東京でどのような教育改革を進めるのかについて、専門家、都民、子どもの意見を酌み尽くす場を設けていくことではないでしょうか。答弁を求めます。
同様に、都民の間で不安と反対の声が広がっているのが、都立高校の統廃合計画です。
都教委は、この十年間に、都立高校で三百七十三学級、約一万五千人の定員を削減してきましたが、この六月二十九日に発表した第二次統廃合計画は、新たに全日制二十三校、定時制十四校を十三校に統廃合するという大規模な学校削減計画です。発表した翌日には、板橋区議会が、将来に夢を持った多くの若者の学習の場である区内の都立高校の統廃合について、慎重に検討するよう強く要望するとの意見書を採択しました。私の地元第二学区でも、交通の便もよく、教育成果も上げて評判のいい学校が対象に上がり、学校関係者からも、これまで頑張ってきたのに本当にがっかりしたと、失望の声が上がっています。
長引く不況のもとで、都立高校でなければ進学できないという生徒が毎年ふえ続けていますが、今春の高校入試では、全日制の高校を希望しながら進学できなかった生徒は、実に一千六百人にも上りました。高校を削減するのではなく、希望するすべての子どもたちに、全日制高校への進学を保障してほしいという切実な声も上げられています。
また、子どもたちに行き届いた教育を保障するために急がれている三十人学級に踏み出すことになれば、当然、学校を減らす理由もなくなります。
計画の根拠となった都立高校長期構想懇談会答申の座長が、広く学校関係者や都民の声を聞くことを求めたこと自体、都立高校の将来についてさまざまな意見があることを認めているのではないでしょうか。
このように、まだ都民の考えがさまざまに分かれ、また、関係者の合意が形成されていない問題については、教育委員会が関係者や都民の意見に十分に耳を傾けることから始めるべきではありませんか。少なくとも、それまでは一方的に強行するようなことがあってはならないと考えますが、答弁を求めます。
次に、遺伝子組みかえ食品について質問します。
昨年来、遺伝子組みかえ食品の安全性が根本から問われる研究が相次いで発表され、都民の強い関心事となっています。遺伝子組みかえコーンの花粉で、殺虫の対象でないチョウの幼虫が死んでしまったこと、また、殺虫性のジャガイモを食べさせたラットの脳を含む臓器、免疫力に異常が確認されるなどのことが明らかになったこともあり、EU諸国では、すべての遺伝子組みかえ食品の表示を義務化し、イギリスでは、レストラン、カフェのメニューも表示の対象にしました。また、ヨーロッパにある食品の多国籍企業は、遺伝子組みかえ食品を排除し、韓国も昨年十二月、表示義務法が成立しています。
遺伝子組みかえ食品の安全性については、当初から疑問の声がありましたが、表示すらしないまま、政府は、一昨年、一部の組みかえ食品の輸入を許可してしまいました。そのような中で、我が国は、現在、事実上世界最大の遺伝子組みかえ食品輸入国になっているのです。今輸入されているのは、みそ、しょうゆ、豆腐、納豆などの原料となる大豆やジャガイモ、トウモロコシなどですが、いずれも日本人の食卓になくてはならないものばかりです。
しかし、農水省は、表示が義務化されていないからと、国内にどれぐらい入っているのか把握をしようともしていません。こんなにも無秩序に輸入されてしまうことになるのは、政府が貿易の拡大による利潤追求を最優先する大企業と全面自由化を迫り続けるアメリカの要求に忠実にこたえ、農産物市場を開放し続けてきたからです。この結果、国内の食糧自給率は下降し続け、遺伝子組みかえ食品の輸入も野放しになっているのです。東京は日本最大の消費地です。都民の間に強い不安のある遺伝子組みかえ食品が大量に入り込んでいるのです。
知事、都民が本当に安全なのかと強い不安を持っている遺伝子組みかえ食品が野放しになっている状況をどう考えますか、答弁を求めます。
このような中で、せめて自分で選びたいと考えるのは当たり前の願いです。表示義務づけを求める声は大きく広がっています。農水省には全国で千百二十、厚生省には千二百五十九の自治体から意見書が出されています。
さて、都は、組みかえ食品と本来のものを分けることはできないといってきましたが、日本国内でも、分別輸入や遺伝子組みかえ作物を使わない飼料での家畜の飼育が始まっています。ある商社では、遺伝子組みかえではない大豆を栽培している農場と契約し、ことしの秋から輸入することになりました。また、ある生協では、畜産物を供給している全農との契約で、家畜の飼料に遺伝子組みかえ食品を使わないことを条件にしています。組みかえ食品と本来の食品を分けられないという理由は全く成り立ちません。本来、国が率先して表示の義務づけを行うべきですが、現時点ではその方向は示されていません。そういう中で最大の消費地東京の動向が大変重要になっています。
東京都がその気になれば、表示を義務づけることは可能です。東京都消費生活条例で都独自に表示の義務化ができるのです。これまで、都の消費者行政は、国が手をこまねいていることについても、都民の健康や安全を守るという立場でいち早く対応し、国をリードしてきました。
例えば、スーパーなどで販売されている生鮮食料品に、賞味期限とともに独自に製造年月日を義務づけているのはその例です。かつては、安全性が疑問視される添加物を独自に指定したこともあります。今、遺伝子組みかえ食品の問題でこの精神を発揮することが大事ではないでしょうか。
知事、都がこれまで表示の義務づけについて国に要望されてきたことは承知していますが、今大事なことは、国の動向待ちになるのではなく、表示の義務づけや流通業界への働きかけなど、都自身ができることから率先して取り組むことではないでしょうか、答弁を求めます。
遺伝子組みかえ食品かどうかの判別技術が実用化されていることも、最近の注目すべきことです。アメリカに本社を持つ遺伝子組みかえ食品専門の分析会社が日本で営業を開始し、食品メーカーや小売店、スーパー、個人などの要請にこたえています。一カ月に四、五十検体が検査、分析されているとのことですが、都内のメーカーや小売店は、消費者に聞かれるので分析に出すと話しています。近所のお豆腐屋さんも、お客さんによく聞かれると話していました。それだけ都民の関心や不安が大きいということではないでしょうか。
現状を把握することが施策の第一歩となります。遺伝子組みかえ食品かどうかの判別技術が実用化されているのですから、都内に流通している食品について、都として実態把握に乗り出してはいかがですか、答弁を求めます。
都独自の研究体制についても整備が必要です。都立衛生研究所では、都議会が国への意見書を上げたり、知事も要望書を出す中で研究を始めてはいますが、本来業務以外の仕事で細々と行っている状況です。将来的には、食品の安全性を総合的に研究する食品安全研究所をつくり、遺伝子組みかえ食品を初め、食品専門の研究を本格的に進めることが必要と考えますが、当面、都立衛生研究所での研究を本格的な研究事業に位置づけ、専任職員の増配置、検査体制の確立を早急に行うことです。
答弁を求めて、質問を終わります。
〔知事石原慎太郎君登壇〕
◯知事(石原慎太郎君) 大山とも子議員の一般質問にお答えいたします。
まず、子どもの教育における競争の問題でありますけれども、どうも大山議員と私とでは、競争というものの概念がいささか違うような気がいたします。競争は決して戦争ではございませんし、必要な競争も私は当然あると思います。
しかし、国連が子どもの権利に関する委員会云々で、日本の教育の状況について勧告というんでしょうか、分析というんでしょうか──しかし、国連のそういった組織にいかほど権威があるのか、それからまた、それほど正確に日本の現況を把握しているかどうか、私、つまびらかにいたしませんが、いずれにしろ、ご指摘のような画一的な知識の詰め込みということは、私はやっぱり避けるべきだと思います。しかし、教育は、子どもたちの持っている能力、個性というものをそれぞれ伸ばし、それがやがては社会の役に立つような、そのための一つの方法でありまして、私はやはり当然試験というものは必要でしょうし、試験でよき成績を得ようと思って努力することは、決して人生にとってむだなことではないと思います。
でありますから、次の世代を担う人材を育成するために──行き過ぎた平等主義は私は排さなくちゃいけないと思いますし、画一的な詰め込み型の教育も改めなくちゃいけないと思いますが、いずれにしろ、子どもがそれぞれ違った形でもって能力と個性というものを確実に助長していく、そういう教育というものを、現代の教育にいささかひずみがあるならば、東京都が率先して直していく努力をしなくちゃいけないと思います。
また、東京の教育の荒廃というのは、だれもが認める問題でありますけれども、これはやはり共産党の方々、いささかこの現況に責任があるんじゃないんでしょうか。(発言する者あり)私は、都知事選で共産党の候補者の三上さんとお話をいたしましたが、三上さんは、現今の教育の荒廃というものを認めると。しかしそれは東京都の責任であり、都庁ぴかぴか、校舎ぼろぼろということでこういう荒廃が来たといいますが、私はそれはちょっと違うんじゃないか、責任転嫁じゃないかと議論をいたしました。
いずれにしろ、私たちは、このゆがんだ教育というものをまさしく是正しなくちゃいけませんけれども、これは決して従来の教育の徹底ということではないと思いますし、そういう点で、やはり東京都から発信する新しい教育の改革というものを日本に普遍しなくちゃいけないと思っておりますし、また、その意識で取り組んでいきたいと思います。そのためにも、またいろんな方々の意見も摂取しながら努めていきたいと思っております。
それから、競争の拡大がいじめや不登校など事態を悪化させる、そういうご指摘でもありますけれども、私はやっぱり、決してそういう短絡的な原因だけではなくて、戦後非常に培われてきたいろんな要因というものが結局こういう形で今暴発している。そういうことのためにも、教育の根幹といいましょうか、人の道の根幹に据えられるべき正義感や倫理感や、あるいは責任感というものをしっかりと植え込む教育というものを、一種の心の東京革命として積極的に推進していきたいと思っております。
当然、ご指摘のように、いろんな方々の広範な意見をお聞きしたいと思いますが、しかし、いささか議論はし尽くされ尽くした感がありまして、ある意味で、思い切った施策を講じて学校を立て直し、また子どもたちを立て直す必要があるんじゃないかという気がいたします。
それから、遺伝子組みかえ食品についてでありますけれども、これはなかなか厄介な問題で、先般、農水大臣が遺伝子組みかえの食品をみんなの前で食べて見せて、大丈夫だと。しかし、それで済むことでは決してない。次の日病気が出るようなものじゃありませんで、やはり長いタイムスパンで、世代を超えて悪い影響が出てくるかもしれない、出てこないかもしれない。こういう問題は、これからもっと徹底した分析研究が必要だと思いますが、その間は、やはりご指摘のように、まだ長い時間を要する安否の問題につきましては、それが現にあるわけでありますから、そしてまたその食品の価格差もあるようでありますから、これは消費者の選択ということにゆだねなくちゃなりませんが、そのためにも、できる限り正確な表示というものを行うような指導というものを東京も努力していきたいと思っております。
〔教育長中島元彦君登壇〕
◯教育長(中島元彦君) 都立高校改革についてのお尋ねでございますが、都立高校長期構想懇談会の座長談話では、都教育委員会は、この答申の内容に沿って速やかに具体化し、生徒や都民にとって魅力ある都立高校を実現してもらいたいとし、具体化に当たっての留意事項として、保護者、学校関係者、地域の意見などを幅広く聞く機会を持ち、関係者の理解のもとに施策を展開するよう努めることとしております。
都教育委員会は、座長談話を踏まえ、この答申内容を計画化していく中で、幅広く保護者や学校関係者等の意見を聞くように努めまして、都立高校改革への理解を求めているところでございます。
〔生活文化局長今沢時雄君登壇〕
◯生活文化局長(今沢時雄君) 遺伝子組みかえ食品についてのお尋ねにお答えいたします。
これらの食品は、諸外国から輸入され、全国的に流通しているものでございますので、表示につきましては、国において実施することが効果的であると考えまして、速やかな検討を行うよう国に要望してきたところでございます。
現在、国におきましても、遺伝子組みかえ食品の表示のあり方などについて検討はなされておりますが、都といたしましては、こうした状況や都民の意向も踏まえながら、引き続き国等へ働きかけてまいりたいと、このように思っております。
〔衛生局長今村皓一君登壇〕
◯衛生局長(今村皓一君) 都内に流通する遺伝子組みかえ食品の実態把握についてのお尋ねでございます。
現在、国は、遺伝子組みかえ食品の表示のあり方について検討を行っております。また、分析を行うための検査技術についても、民間では一部実用化されたと聞いておりますが、現状では、汎用性の点でなお研究の段階にあると承っております。今後、表示のあり方等の動向を十分見きわめながら、実態把握などに努めてまいります。
次に、遺伝子組みかえ食品の検査体制についてのお尋ねですが、東京都の衛生研究所では、遺伝子組みかえ食品に関して、精度の高い検査技術を確立するため、本年度から大豆を用いて調査研究を開始したところでございます。
今後は、これらの検査技術の開発に努めるとともに、遺伝子組みかえ食品の表示のあり方などについての国の動向を勘案しながら、衛生研究所の検査体制の整備に努めてまいります。