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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

1999年第3回定例本会議 代表質問

植木こうじ(中野区選出)  1999年9月21日

どれだけ財政がたいへんでも、都民の福祉やくらしを後退させず、あらゆる手だてをつくすことにこそ、自治体本来の役割がある

-- 目 次 --

◯百五番(植木こうじ君) 私は、日本共産党都議団を代表して質問いたします。

福祉切り捨てと大型公共事業温存の二つのプラン

 都民は今、かつてない深刻な不況に苦しみ、雇用や社会保障への不安にさらされています。それだけに、どのように財政が苦しくとも、都民の福祉や暮らしを守るための施策を後退させず、充実させるために、あらゆる手だてを尽くす、ここに自治体本来の役割があり、都民はこのことを都政に求めているのではないでしょうか。

かつてない都民犠牲計画ー財政再建推進プランと福祉施策の新たな展開

 しかし、石原知事が今やろうとしていることは、この都民の願いに背くものといわざるを得ません。
 その重大なあらわれが、先般発表された都の財政再建推進プランと「福祉施策の新たな展開」であります。二つのプランは、都の財政難をつくり出した原因である大型開発、大型公共事業は温存したまま、福祉、医療、教育、住宅と、都民生活全般にわたって、廃止を含めた切り下げを行うという、かつてない都民犠牲の計画であります。
 そして知事は、さきの所信表明で、改めてこの都民への犠牲を断行することを言明しただけでなく、既に破綻が明らかになっている臨海開発をさらに拡大再編して進めることまで表明したのであります。
 果たして、この二つのプランと知事の姿勢が都民と都政をどこに導くのか、以下質問するものであります。

都民にとってかけがえのない福祉施策を根こそぎに

 何よりも重大な問題は、都民にとってかけがえのない福祉施策を、かつて経験したことのない規模で根こそぎに破壊しようとしていることであります。財政再建推進プランが重点見直しの対象として列記した百三十八事業のうち、福祉、医療だけで全体の四割を超え、五十九事業に上ります。しかも、それにとどまらず、経常経費の、すべての施策について、事業の存廃を含め根本的な見直しを行うとし、知事は所信表明で、あえて、福祉施策を含む経常経費の見直しと、殊さら福祉の切り下げを強調したのであります。
 また「福祉施策の新たな展開」では、新しい福祉の基本的方向を示すなどとして、都民が築いてきた医療費助成や福祉手当などの、いわゆる経済給付的事業を中心とした先進的福祉の切り下げを打ち出しました。それは、乳幼児医療費助成、児童育成手当、ひとり親家庭医療費助成、重度心身障害者手当、心身障害者福祉手当、心身障害者医療費助成、老人医療費助成、シルバーパスなどの事業であります。いずれも、財政再建推進プランの重点見直し対象百三十八事業にも入っています。これらの事業を利用している人は合わせて百九十万人、都民の実に六人に一人という、都の福祉施策の中でも最も身近な制度であります。そして、いずれも、都民の生活や介護の直接の支えとして、なくてはならないものばかりであります。そのかけがえのない都民の宝を、財源対策先にありきでばっさり削ろうというのが、今回の計画の最大の特徴といわねばなりません。
 社会保障の水準をはかる国際的な尺度である、GDPに対する社会保障給付の比率は、日本は先進諸国の中でまだまだ低い位置にあります。その不十分な国の社会保障を補うために、都は、革新都政以来、医療費助成や福祉手当、シルバーパスを初めとする独自の福祉施策をつくり上げてきました。これがあるから、高齢者や障害者がこの東京で何とか暮らしていけるのであります。物価の高い東京で、年金の額は基本的に全国一律であり、東京の無職の世帯の家計は、ここ数年赤字に転じています。また、医療費の負担や、来年四月からの介護保険の保険料負担などに対する都民の不安は高まっています。
 知事に伺いますが、こうした都民の実態に照らして、都の経済給付的事業を切り下げてよいと考えているのでしょうか。むしろ充実こそ必要ではないですか。答弁を求めます。
 知事は、所信表明で、子育て家庭への支援、高齢者や障害者の自立支援など、緊急性、必要性の高い在宅サービス事業について充実を図る一方、各種の医療費助成や福祉手当の支給など、経済給付的な事業の見直しに着手していくと明言しました。しかし、お尋ねしますが、乳幼児医療費助成は子育て家庭への支援にならないのですか。高齢者や障害者の福祉手当や医療費助成、シルバーパスは自立支援にならないのですか。見解を伺うものであります。
 いわゆる経済給付的事業と在宅サービスを対立させて、経済給付的事業を削って在宅サービスに回すなどという発想は、根本的に間違っています。これまで東京都自身が、例えば都の障害者プランで、障害者の一番の要望が年金、手当の充実であり、これが自立生活の基盤をなすものと明記してきたではありませんか。
 私は、この問題でたくさんの福祉関係者と懇談を重ねてきましたが、多くの方から共通して出されるのが、福祉手当や医療費助成があるからこそ在宅生活が何とか続けられるのに、それを削って、どうやって在宅サービスが充実できるのかという驚き、あるいは強い怒りの声であります。
 しかも一方で、重要な在宅サービスである障害者共同作業所の通所訓練や地域デイサービス事業も、障害者のホームヘルプサービスも、乳児保育も、高齢者の在宅介護支援センターも、重点見直し対象の百三十八事業の中に入っているではありませんか。在宅サービスを充実するというなら、少なくともこれらの事業は切り下げないことを明確に言明すべきではありませんか。お答えください。

経済給付的事業と在宅サービスの両方の充実こそ必要

 知事が、現在の東京の福祉が経済給付的事業に偏っていると考えているのであれば、認識が違います。福祉局と高齢者施策推進室を合わせた今年度予算五千六百億円のうち、七十歳以上の国制度の老人医療費助成や児童扶養手当など法律で義務づけられているものを除く経済給付的事業の予算総額はおよそ千百億円であるのに対し、在宅サービス提供のための予算の総額はおよそ九百三十億円であり、余り違いはありません。在宅サービスも経済給付的事業も都民の切実な要求であり、まだまだ不十分なのですから、その両方を充実させるために全力を尽くすことこそ求められているのです。
 知事は、所信表明で、現行制度のままでの福祉施策を継続させていけば、増大するニーズに十分こたえられないばかりか、社会の活力を損なう要因ともなるなどと述べました。しかし、早期の治療と予防に効果がある医療費助成の切り下げをすれば、長い目で見れば、病気の重症化を促し、医療費の増大をもたらすことになることは明らかです。
 また、知事自身が、六月の政府に対する重点要望で、少子化の進行は社会の活力維持などに大きな影響をもたらす重大問題だとして、経済的負担の軽減策、中でも、児童手当の拡充と乳幼児医療費助成制度の創設を求めたのではありませんか。にもかかわらず、これらを削ることは、少子化対策に逆行することは明白です。
 しかも、同じ対政府要望で、父子家庭を含めたひとり親家庭の置かれている状況は、現下の不況の中では一層苦しい状況にあると述べて、所得保障の充実と、ひとり親家庭への医療費助成制度の創設を求めています。これについても、あなたは切り下げの対象に挙げています。こんなおかしな話はないと、都民の疑問と批判の声が広がるのは当然です。
 知事、あなたのやろうとしていることは、社会を支える一人一人の都民の活力を損ない、東京における社会保障の基盤を根底から掘り崩すものではありませんか。お答えください。
 同時に、知事、あなたは、都知事選挙の際の医療関係団体からのアンケートに、シルバーパスは今のまま存続、老人医療費助成、障害者医療費助成、ひとり親家庭医療費助成及び精神障害者医療費助成についても現行どおり存続と回答しています。知事、あなたはこの公約を守るのか、それとも破るのでしょうか、明確な答弁を求めます。
 知事は、所信表明で、国が取り組んでいる福祉の基礎構造改革と、その第一歩である介護保険制度に連動して、都の福祉もこれまでの仕組みを根本から変える構造改革を実行すると述べました。国の福祉基礎構造改革は、介護保険制度のような市場原理と利用者負担を福祉全体に広げようとするものですが、多くの福祉関係者から、福祉水準の後退につながる、公的責任があいまいになるなどの心配や批判の声が上がっており、この法案は、大綱が示されただけで、まだ国会にも上程されていない、厚生省の方針という段階にすぎません。しかも、その第一歩とされる介護保険で、早くも大変な問題を引き起こしているではありませんか。そうしたものに連動させて、都の福祉の根本的な構造改革を性急にやるようなことを都民は決して許さないでしょう。

都が何よりも行うべきは、介護保険への適切な対応に取り組むこと

 今、東京都が何よりも行うべきは、保険あって介護なしといわれる介護保険への適切な対応に、親身になって取り組むことではありませんか。そして、この制度の根本的欠陥の是正を国に求める先頭に立つことではないでしょうか。
 介護保険制度は、この十月から要介護認定が始まることにより、さまざまな深刻な問題が未解決のまま、事実上のスタートとなります。この大事なときに、知事は所信表明において、介護保険への都としての対応についてなぜ一言も言及しなかったのでしょうか。都は、十月にも介護保険事業支援計画の「中間のまとめ」を発表するとしていますが、この策定委員会は、公開とは名ばかりで、開催日時も都民に知らされていなかったことが明らかになっています。
 また、高齢者施策全体の計画である老人保健福祉計画も今年度中に策定することになりますが、庁内検討で済ませようという方向であります。知事が発表するこれらの計画は、今後の東京の福祉のあり方にかかわる重要なものであります。
 したがって、第一に、策定に当たっては、都民参加と議事録、関連資料の公開を保障されるよう求めるものですが、所見を伺います。
 第二は、介護保険の欠陥を是正するために都として取り組むべきことです。
 都の試算によると、一人当たりの平均保険料が年間三万五千円、これに加えて実際にサービスを受けた場合の利用料の平均が、一人当たり年間十九万五千円であります。国民年金の平均は年額わずか五十九万円ですから、多くの都民が、保険料や利用料が払えないために、サービスが受けられない事態が生まれかねません。都としても、保険料、利用料の軽減策について検討すべきと考えますが、見解を伺います。
 介護保険の対象外となり、現行のサービスが受けられなくなる人への対応も緊急課題であり、生活支援ヘルパーやミニデイサービスなどを実施する区市町村への支援を行う必要がありますが、答弁を求めます。

老人福祉手当、特擁ホーム運営費補助の維持を

 第三に、都の現行サービス水準を維持することであります。
 厚生委員会の集中審議で、高齢者施策推進室は、現行のサービス水準は維持するようあらゆる努力をすべきだと答弁しました。改めて知事の認識を伺うものであります。
 とりわけ、焦点となっている老人福祉手当と特別養護老人ホーム運営費への補助を維持することが重要です。保険料、利用料の負担がこれだけ大問題になっているだけに、老人福祉手当の役割は一層大きなものとなっており、厚生省が介護保険のもとでも都の独自の判断で継続できると判断を示したのですから、これを維持し拡充することこそが求められていると考えますが、見解を伺います。
 八月に介護報酬が発表され、特別養護老人ホームの運営費についても、各施設で試算が進んでいます。都加算事業と公私格差是正事業を廃止された場合は、数千万円から一億円もの減収となる施設が少なくありません。これからの特別養護老人ホームは、個室化の促進や外出の自由の保障など、一層のサービスの質の向上が求められるのであり、少なくとも現行のサービス水準を維持する措置が必要不可欠であります。所見を伺います。
 第四は、介護予防、寝たきり予防を抜本的に強め、そのためにもリハビリテーションを緊急に充実することであります。
 今、都内の救急告示病院で、すぐその場から早期のリハビリに対応できるのは四割にすぎません。民間の専門病床の整備は、二年連続実績ゼロであります。厚生省が示した老人保健福祉計画策定の基本指針では、介護予防の推進のための施策を位置づけ、具体的には地域リハビリテーション支援センターや推進協議会の設置などに取り組むことが重要であるとされています。
 また、昨年改定した都の保健医療計画でも、総合的システムの構築が課題とされ、実態調査の実施などが示されています。地域リハビリテーションの充実に早急に取り組むべきと考えますが、所見を伺います。
 なお、福祉の問題に関連して伺いますが、知事は、九月十七日の記者会見で、重い障害を持つ人たちの医療施設である府中療育センターを視察した感想として、ああいう人たちに人格はあるのかと発言されました。どんな重い障害を持つ人も、懸命の働きかけのもとで、人間としてのコミュニケーションを持ちながら生きているのであります。知事はこのことをご存じなのでしょうか。知事の発言は、障害を持つ方々とその関係者の人格を深く傷つけるものであり、行政の長として重大な発言です。発言を撤回し陳謝すべきと考えますが、答弁を求めます。

過去最高の公共料金値上げ、負担増を押しつける財政再建推進プラン

 財政再建推進プランは、深刻な不況のもとでも都民の苦しみにお構いなしに、さまざまな負担を負わせるものとなっていることを指摘しないわけにはいきません。
 公共料金だけで青島前都政の財政健全化計画を上回る百億円を見込み、減免制度の見直しによる五十億円を加えると、実に百五十億円と、過去最高の値上げを都民に押しつけようとしているのであります。昨年値上げされたばかりの文化、スポーツ施設使用料などをまたまた値上げするばかりか、都の減免制度を、財政負担を減らすことを目的に見直そうとしていることですが、このようなやり方は、都政史上かつてなかったことです。
 プランの百三十八の見直し事業の中に、わざわざただ一つ、都営住宅の減免を挙げているように、最大のねらいは都営住宅家賃の減免の見直しです。そもそも減免制度は、所得の低い人など生活に困っている人たちを対象に行われているものです。それを取り上げることがいかに残酷な仕打ちになるか、知事はおわかりにならないのでしょうか。
 さらにプランは、都立高校授業料値上げだけでなく、都立学校の管理運営費の見直しまで挙げ、私学助成についても見直しの対象に挙げています。既に私学助成は、五年間で約五十億円という切り下げが進められています。これに加えて、削減されたら、即、授業料にはね返るのではという心配の声が上がるのは当然です。この間、私学経営は、生徒減少の影響をもろに受け、さらに不況によるリストラや倒産が相次ぐ中で、経済的理由による授業料滞納者や中途退学者がふえ、経営は苦しい状況です。だからこそ私学助成審議会では、倒産、リストラなどで家計が急変したとき、現在の授業料減免制度を活用できるように改正し、国も同様な理由で、授業料補助の二分の一を補助することを決めたばかりではありませんか。
 知事、私学助成は、切り下げるのではなく拡充こそ必要だと思いますが、どうですか。答弁を求めます。
 また、都は、公営企業各局に同一歩調で臨むことを求めており、上下水道料金や交通料金など生活費に大きなウエートを占める公共料金が値上げされることになれば、その影響ははかり知れないものがあります。
 知事、この不況の最中に、一斉に大幅な値上げを行うことがどれほど都民の生活に影響を及ぼすことになるのか、思いを寄せられたことがありますか。都の財政難に何の責任もない都民に痛みを押しつけることが当然だとお考えですか。答弁を求めます。
 加えて重大なのは、区市町村の財政を圧迫し、都民生活に打撃を与えることにつながる国保補助金の大幅削減です。二十三区の場合、現行制度では、財源不足の四分の一を都が交付しています。都区制度改革に伴い調整条例が廃止されることを理由に、一方的に削減を打ち出したのです。今年度の交付金は二百五十四億円ですが、来年度から百二十億円に減らそうという計画であります。市町村への国保事業への補助も、これに連動して、今年度の六十七億円を四十三億円に減らすことが検討されています。これらが実施されれば、区民一人当たり平均四千五百十七円、市町村民一人当たり平均二千二十五円もの値上げにつながりかねないものです。
 国保委員会の委員である立川市長は、都の負担のみを軽減しようとする補助方式の変更には賛同しかねると、厳しく批判をしています。しかも、来年度から介護保険料も加わることになるのですから、保険料が払えなくなる人が一層ふえることは明らかではありませんか。
 また、建設などの組合国保についても補助の削減が検討されていますが、その多くが中小零細業者の組合であり、影響は深刻であります。これらの国保事業への補助の削減はすべきではないと考えますが、答弁を求めます。
 この問題の最後に、内部努力の名による都職員への乱暴な犠牲の押しつけが行われようとしていることについてであります。
 財政再建推進プランでは、給与関係費の削減と、四年間で五千人の定数削減により、五百億円の財源対策を図るとしております。そして、既に職員に対しては、給料四%、一時金一〇・五%、一人当たり四、五十万円の賃金削減の提案がなされています。

自治体本来の任務である福祉、教育の人件費割合が高いのは当然のこと

 しかし、都財政の危機をつくり出したのは、福祉や教育の支出が多いからでないのと同様に、職員の人件費が多いからでも決してありません。東京都の人件費は、年々、歳出に占める割合を低下させています。八〇年に三九%を占めていた人件費は、九七年度決算では二八・三%、構成比では一〇%も低下しているのです。これを他団体との比較で見ると、神奈川県は歳出に占める人件費割合が四七・四%、大阪府四一・一%、福岡県三七%であり、京都、千葉、愛知、広島、兵庫、宮城など、政令指定都市を抱える県はいずれも人件費比率は三〇%を超えており、東京は二八・三%と、最低クラスなのであります。
 もちろん不断に組織の効率化を追求することは重要です。しかし、自治体本来の任務が住民の福祉、健康、安全を守ることにある以上、そのために必要な人件費が一定の割合を占めるのは当然のことです。にもかかわらず、今、なぜ人件費を問題にするのか、それは福祉を削る口実であるだけでなく、青島前都政が進めた財政健全化計画で行われた定数削減のうち、六三%が福祉、医療、教育関係の職員であったことでも明白なように、職員を減らすことを通じて福祉や教育を切り縮めるというねらいがあるからにほかなりません。
 知事、人件費を問題にするならば、まずただされなければならない課題は、ほかにあります。例えば警視庁の場合、首都の警察として他の道府県にない役割が負わされており、政令で定められている定数も飛び抜けて多くなっている問題です。警察職員一人当たりの人口は、東京が二百九十人であるのに対し、埼玉八百一人、千葉七百八十七人、神奈川六百四十七人です。これは警視庁職員の少なくない部分が、皇居や国会、外国大使館の警備などで、首都であるがために配備されているからです。ところが、財源といえば、国が出しているのは国の職員である警視総監などの給与と一部の警備費など、警視庁予算のわずか二%にすぎません。九八%は都の財源です。
 かつて鈴木都政時代も、首都警備、首都警察に対応する経費を国庫負担とすべきと要求したのです。少なくとも国が三分の一程度は負担してしかるべきではありませんか。知事は、国に対して実態に合わせて財政負担を要求すべきですが、答弁を求めます。
 さらに、警視庁は、これまで事実上、行政改革の対象外として聖域扱いをされてきました。警視庁職員数は、今や知事部局全体の職員数にほぼ匹敵するに至っています。
 知事、警視庁を聖域とせずメスを入れるべきではありませんか。見解を求めます。
 また、開発部門や、既に役割を終えた同和部門の見直しも重要です。
 例えば、破綻している臨海開発を支える組織は、港湾局だけでなく各局にまたがっています。三セクの担当部門や同和部門も同様に各局にまたがっており、これらのセクションの見直しも大胆に行われるべきなのであります。見解をただすものであります。

メスを入れるべきはバブル以前の倍近い投資的経費

 さて、なぜ東京都がこのような都民いじめの大計画を進めようとしているのか。その理由について、都は、未曾有の財政危機に陥っており、このままでは財政再建団体に転落する、そうなると、国の指導監督のもとで強制的に福祉などの施策を削減しなくてはならなくなる、それだったら自主的にやる方がよいからだと説明しています。
 しかし、財政危機というのであれば、何がその原因なのかを明らかにし、その原因を取り除くことこそが打ち出されるべきではないでしょうか。
 我が党が繰り返し指摘してきたように、今日の財政難の原因は、国に追随して大型公共事業に湯水のように税金を投入してきたからではありませんか。実際、この十四年間にふえた都の歳出の累計額は三十兆円ですが、そのうち三七・九%、十一兆三千八百億円が土木費に使われ、福祉など民生費はわずか八・九%の二兆六千六百億円にすぎないのであります。この大型公共事業優先を改めずに、財政再建団体に転落して国の監督指導を受け入れるのか、それとも再建プランを受け入れるのかなどと都民に迫ることは、全く道理が通りません。
 第一に、財政再建推進プランに盛られている年六千二百億円から七千数百億円という財源不足は、引き続き、投資的経費はバブル以前の八四年の倍近い水準の九千百億円投入を前提にしており、経常経費についても、そのほぼ約一割、四千億円に上る首都高速道路公団への無利子貸付、再開発事業への補助金などの投資型経費を計上することを前提としてつくられた数字です。これらの投資関連経費だけで毎年一兆三千億円もつぎ込もうというのです。知事、なぜこれにメスを入れないのですか。
 プランで施策見直しが必要として掲げた百三十八事業の中で、投資的経費にかかわる事業費は全体のわずか四%、四百九十三億円にすぎませんが、それは、都営住宅建設や道路の補修など都民生活に密着した事業が中心です。しかし、これらの事業は、むしろ充実することこそが必要な分野ではありませんか。
 それに対して大型公共事業は、起債、すなわち借金で賄われていることを理由に、大部分は見直しの対象外とされています。いうまでもなく起債借金は、数年後からは利払いが発生し、いずれ償還費を含めて税金で返さなければなりません。今、この大型公共事業の借金返し、すなわち公債費の増大が都財政を圧迫しているのが現実ではありませんか。大型公共事業を中心とする投資にメスを入れれば、プランでいうような財源不足は生じません。知事の明快な答弁を求めます。
 第二に指摘しなければならないのは、公債費を過大に見積もっていることによって、財源不足を殊さら大きく見せかけている問題です。財政再建推進プランでは、来年度の公債費は六千五百億円とし、四年間で三兆円近い財源が要るとしていますが、そのうちの利息の利払いに充てられている分だけで一兆三千億円が必要だとされています。
 問題は、この利払い利息が四%で計算されていることであります。これは九七年度までの金利水準を機械的に当てはめたもので、実際には昨年度から二・四%で都債は発行されているわけですから、この水準に合わせれば、支払い利息は大幅に低くなるではありませんか。既に九八年度決算で、利子払いは五百億円も差額が生まれており、今年度も同じくらいの差額が出ると予定されています。今後も単純に比較すると、財政再建計画期間中も、ほぼ毎年五百億円以上、四年間で三千億円近くも想定よりも支払い額は低くて済むのであります。
 また、公債費に含まれる減債基金も、毎年三千億円を超える積み立てをしていることも過大です。都債を低利なものに借りかえすることなどで積み立てを半分に減らしても、十分起債償還のピークに対応できることは、都自身も認めているところです。実際、昨年度は、減債基金を当初予算の約半分に抑えているのであります。
 このように、大型公共事業を中心として投資的経費や経常経費の中の投資関連経費にメスを入れ、減債基金の適正化や都債の借りかえを行うこと、さらには同和事業など浪費やむだの見直しを進めれば、当面の財源不足は十分解消できるのであります。知事の所見を伺います。

都財政立て直しの上で避けて通れないのが臨海副都心開発の見直し

 都財政を立て直していく上で避けて通れないのが、臨海副都心開発の見直しであります。
 そもそも臨海開発は、進出企業の権利金、地代で賄うから、都民には一円も負担させないとして進められてきたものです。ところが、バブルがはじけて地価が下がった上、企業の進出が進まないために、五兆五千億円もの大赤字を抱えるに至ったのです。このため、都民への約束は破られ、都財政の投入が次々に行われ、都財政が圧迫されました。こうした中で、四年前、都民の批判の高まりの中で、臨海開発抜本見直しを公約した青島知事が誕生したのです。
 ところが、青島氏が行った見直しは、開発の基本には手をつけず、専ら大赤字を都財政の投入で埋めるというものでした。この結果、これまでに三兆円もの都財政が投入されてきました。今、計画どおりに進んでいるのは、関連道路への一般財源の投入や臨海関連三セクへの二百七十億円の投入、他の埋立会計からの借り入れ、さらに都が無償で現物出資した有明の丘を二千二百億円もかけて買い戻すなどの都財政の投入ばかりではありませんか。今後の都財政投入は二兆円以上に膨れ上がると見込まれています。
 企業の進出については、今日の時点でも第一次の公募については新たな進出はなく、二次公募分についても、ことし三月に契約する計画だったものが、いまだに新たな契約は結ばれていません。イベントなどのにぎわいとは裏腹に、進出企業の権利金、地代で賄うとされた臨海開発の資金を確保する見通しは全く立っていないのです。今度こそ臨海開発を抜本的に見直して、都財政を際限なく投入していく蛇口を締めなければ、都財政の立て直しはあり得ないし、取り返しのつかない破綻に追い込まれることは明らかです。
 知事、ここまで財政を投入してきたから手を引けないとか、やがて景気が回復するからなどといって投資を続ければ続けるほど、被害は拡大していきます。改めて臨海開発への果てしない財政投入の蛇口を締めるよう求めますが、所見を伺います。

大破綻している開発型三セクへの財政的支援の野放しは許されない

 もう一つ避けて通れないのは、これも大破綻している開発型第三セクターの見直しです。これまでも港湾局所管の臨海第三セクターの破綻が明らかにされてきましたが、ことしに入って、それ以外の東京ファッションタウン、タイム二十四、国際貿易センター、東京臨海高速鉄道、地下鉄建設株式会社、多摩ニュータウン開発センターなどの第三セクターの破綻がマスコミでも相次いで報道されています。これらの第三セクターのうち、主要十三社の経営内容は、一社を除き十二社すべてが累積赤字を抱え、その総額は、九八年度決算で一千二百三十四億円に及び、昨年一年で二百十億円、九七年度に比べて二割も赤字をふやしているのであります。このうち百億円以上赤字を抱えているのは、臨海ビル三セク、臨海副都心建設に加え、臨海高速鉄道、東京ファッションタウンなど五社に及んでいるのであります。まさに泥沼状態ではありませんか。
 東京都は、これらのビル三セクの破綻を救済するために、至れり尽くせりの支援を行ってきました。しかし、それでも事態は全く好転していません。それは、ビル事業でありながら、通常貸しビルであれば九割は確保する賃貸の床の有効面積を、六割とか七割しか予定していないとか、豪華で過剰な設備投資にするとか、借入金を総事業費の六割程度に抑えなければ採算がとれないといわれているのに、臨海三セクの場合は、事業費の九割を銀行から借り入れ、利息を払い続けるなど、最初から採算など考えていないビルを建設しているからであります。このことは、これらのビルが、賃貸面積がほぼテナントが埋まっているにもかかわらず赤字が解消しないことにはっきりとあらわれています。賃料を倍に引き上げなくては採算がとれないようなビルの経営を続ければ、都財政の投入が際限もなく膨らむことは明らかではありませんか。
 知事、第三セクターの財政的支援をこれからも野放しにするつもりですか。見解を伺います。

リストラを規制し、雇用を守り拡大するために、知事として行動を

 知事は所信表明で、日本の国際競争力の強化や経済の活性化のために、交通インフラなどに集中的な投資を行うことや、都心部の機能更新とあわせて、東京臨海地域の再整備を積極的に進め、これを首都東京をよみがえらせる起爆剤にすることを強調しました。
 しかし、今、東京の経済や都民生活、さらには日本経済と国民生活にとって緊急に求められていることは、一体何でありましょうか。深刻な問題となっている失業の増大を食いとめ、雇用の安定を図ること、そして不況を一刻も早く打開することではないでしょうか。
 雇用の問題についていえば、東京を含む南関東の七月の完全失業率は、五・六%と最悪の事態が続き、失業者数は四月から六月までで百三万人に上り、わけても東京では、リストラなどによる離職者は十年度十一万五千人、ことし四月から七月までの四カ月で五万人にも達しています。それも、一家の大黒柱となってきた五十代後半の男性が多く、ローンなどを抱えた労働者の失業は殊さら深刻です。失業と雇用不安の増大が不況を長引かせている重大な要因になっているだけに、大企業などによる大量のリストラ、人減らしを規制し、雇用の安定を図ることが急がれています。
 ところが、こうしたときに、政府は、さきの通常国会で産業再生法を成立させました。この法律は、過剰設備の廃棄や合併、分社化の企業組織再編、雇用の流動化対策が大きな柱となっており、まさにリストラ推進法ともいうべきものです。政府は、企業の競争力をつけるために、失業しても仕方がない、まだ失業がふえるといい放っているのであります。
 この法律を提言した産業競争力会議のメンバーの多くは、東京に本社を置く大企業ですが、これらの大企業はこの六年間、大規模なリストラを強行しました。大手町の新日鉄一万五千人、神田駿河台の日立製作所一万四千人、丸の内の富士通一万人などなど、人員の大量削減はすさまじいものです。これからの成長産業といわれ、小渕首相も雇用効果を期待しているのが情報通信分野ですが、その代表的企業であるNTTは、年間六兆円を超える売り上げと三千六百億円もの利益を上げる一方で、九〇年から九九年まで、約十二万人の人員削減を強行しているのであります。このため、NTT一社で、この一年間十七人もの自殺者を出しています。
 政府が幾ら雇用対策といっても、こうした大量のリストラ、人減らしの蛇口を締めなければ、実効あるものとはなりません。日経連会長である奥田トヨタ自動車会長が、現在の我が国では従業員の首を切ることがもてはやされているおかしな風潮があるが、簡単に解雇に踏み切る企業は、働く人の信頼をなくしてすぐれた人材を確保できず競争力を失うと発言するなど、行き過ぎたリストラを自戒する声が経済界からも上がっています。また、EUでは、企業の合併や分割などに伴う労働条件の切り下げを防止する基準をつくるなどリストラを規制し、また、労働時間の短縮によって雇用の拡大を図るなどの取り組みをしているではありませんか。
 今最大の雇用対策は、リストラを規制し、雇用を守ることです。都民の暮らしと権利を守るべき都知事として、東京に本社を持つ大企業に対し、リストラ、人減らしを抑え、雇用を守り、拡大するよう、知事が行動を起こすべきではありませんか。所見を伺います。
 また、国の緊急雇用対策特別交付金事業は、多くの都民から期待されていますが、実施期間は二年半で、就労期間は六カ月、対象者一人当たりにすると七十万円にすぎません。都として、雇用で冷遇されている中高年者や障害者などの雇用創出など、都独自の事業の上乗せや予算を拡充して、本当に役立つものにする必要があります。また、今回の事業が、公園清掃など公的就労にも踏み出したことは重要です。都として、事業が終了しても、公的就労を継続するよう求めますが、所見を伺います。

中小企業の立場に立ち、制度融資、税制面での改善を

 知事は所信表明で、総理の督励を受けた通産大臣と面談し、新しい中小企業振興策を協力しながら推進していくと述べられました。しかし、今、政府が中小企業基本法の改正で進めようとしていることの中心は、大企業と中小企業の格差はなくなったとし、中小企業保護政策を転換する新たな施策は、ベンチャー企業支援を優先し、圧倒的な数を占める経営基盤の弱い既存の中小企業は切り捨てるというものではないでしょうか。
 これまでも都内の企業の九九%を占める東京の経済活動を担っている多くの中小企業は、幾たびの経済の荒波をくぐり、今最悪の不況にも耐え抜いて、新製品、新技術などの技術革新、それに見合う経営革新などをしながら現在に至っているのであります。ベンチャー企業の多くも、これらの中小企業で蓄積されてきた技術や情報、人脈などに支えられて成功するのです。知事がよく紹介される城南地域も、東京都の工業集積地域活性化事業を活用し、既存の中小企業が頑張っているところです。これらの企業を大事にしなくて、何で産業再生といえるのでしょうか。知事の見解を伺います。
 不況が長期化する中で、中小企業への資金援助は一層重要になっています。知事は、債券による中小企業への資金調達を進めようとしていますが、債券市場での企業の証券発行に対し、投資が対象の債券に保証をつけることは、投資家に税金で保証するものではないのかなどと、さまざまな問題が指摘されています。金融機関や公的信用保証をつけるのは、制度融資と変わらないのではないかとの声もあります。知事自身、銀行の貸し渋りがなくなれば、銀行融資の方が企業のコストが少なく、融資を活用したらいいと述べたではありませんか。実際にグループによる債券発行といっても、本当に資金調達に困っている中小零細企業にはその条件はありません。
 むしろ財政再建推進プランが、一般財源充当事業の一つとして制度融資の見直しを掲げていることは重大です。今、都が行うべきは、中小企業の命綱になってきた制度融資を守り、拡充することであり、物的担保重視から技術力などを重視した貸付枠の拡大や不況で返済に困っている中小企業に返済猶予など、業者の立場に立った支援を行うべきではないでしょうか。所見を伺います。
 税制の面でも改善が必要です。
 今、中小企業には消費税の負担が大きくのしかかっていますが、この中で、都の財政再建推進プランに示す法人税の外形標準課税や固定資産税の償却資産税の徴税強化などは、中小企業の負担を一層重くするものであり、逆行しています。政府は、中小企業の事業継承に相続税の減税を検討していると報道されていますが、今、都として政府に対し、大企業と比べても減税措置が少ない中小企業のために、相続税だけでなく、固定資産税など実効性のある減税を実現するための具体的行動を起こされることを求めるものであります。また、都としても、都市計画税の二分の一減税を来年度も継続すべきだと思いますが、所見を伺います。

ゼネコンや大銀行にばかり活力を与える方向に未来はない

 さて、知事あなたは、なぜ殊さら破綻した臨海開発の規模を一層大きく広げることを初め、大型開発、大型公共事業を推進しているのか。私は、知事の発言が、財界や国が進めようとする首都圏改造の方向と軌を一にしていることを指摘せざるを得ません。日本の鉄鋼、ゼネコンなどのインフラにかかわる大企業で組織されている日本プロジェクト産業協議会、いわゆるJAPICが、ことし、首都圏の社会資本整備のためにと題したシンポジウムを開催していますが、そこでの主催者のあいさつで、国際力の強化、首都圏の機能集積のメリットを十分に発揮させるような政策が強調されました。
 また、国では、第五次首都圏整備計画が策定されるとともに、建設省を中心に、農林水産省、運輸省、郵政省などを横断的に組織した関東地方社会資本懇談会がことし設置され、財界との間で、首都圏の社会資本整備に関する懇談会も持たれました。そこでは、知事がいわれた首都圏でのインフラ整備、とりわけ環状道路の推進などが打ち出されています。知事も、都知事選のときに、毎年一兆円もの交通インフラ投資が必要と発言し、青山副知事も、最近新聞で発表された論文で、首都圏の道路、鉄道だけで毎年一兆円もの投資が必要と述べています。これらの財界や政府官庁の言動と石原知事の発言に共通するものが多いと思うのは、私一人ではないはずです。
 この方向は、同時多発的に大型開発、大型道路を進めることであり、新たな東京への一極集中を進めるとともに、都財政の借金の山を雪だるま式に膨らませることになることは明らかです。臨海開発の財政投入も、二兆円から三兆円、四兆円と膨れ上がることになるでしょう。このような都民と都財政に耐えがたい負担を押しつける財界本位の東京づくり、ゼネコンや大銀行にばかり活力を与える方向に未来はありません。
 私は、東京都が住民の安全、健康、福祉を守るべき地方自治体本来の立場に立ち返り、不況や雇用不安の解消、福祉や教育の充実を第一に取り組み、都民にこそ活力を与える都政を実現するために全力を尽くすことを表明して、質問を終わります。


  〔知事石原慎太郎君登壇〕
◯知事(石原慎太郎君) 植木こうじ議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、「福祉施策の新たな展開」における経済給付的事業の見直しについてでありますが、今日、少子高齢化の急速な進展など社会福祉を取り巻く状況が大きく変化をしております。
 福祉サービスの利用者が増加するのに比べ、社会全体の負担力は伸びないために、現行の福祉施策のままでは、増大するニーズにこたえられません。まさにこのままでは、ないそでは振れなくなります。
 そのため、都の福祉も根本的な構造改革が必要であり、先月、「福祉施策の新たな展開」を発表いたしました。
 今後、その基本的方向に沿って、具体化を図っていくつもりでございます。
 また、福祉の見直しの考え方についてでありますが、本格的な少子高齢化社会を迎え、都民が身近な地域で、必要とするサービスをみずからの選択で利用し、自立した生活をしていくためには、量的にも質的にも十分なサービスが必要であります。
 そのため、経済給付的事業から在宅サービスの整備へと、限りある資源の配分を図ることが緊急の課題であると考えております。
 また、事業の見直しと都民の活力についてでありますが、福祉は都民生活の安心を支え、東京の活力や発展を支える基盤ともなることから、その充実を図ることは都政の重要な課題と認識しております。
 現行制度のまま福祉施策を継続していけば、増大するニーズに十分こたえられないばかりか、社会の活力を損なう原因にもなりかねません。
 これ以上改革を先延ばしすることは、将来に大きな禍根を残すことになります。
 今後、将来世代にわたって真に安心できる社会を目指し、その実現に向け、積極的に取り組んでいくつもりでございます。
 福祉施策に関する公約についてでありますが、ご質問のアンケートは、極めて限られた選択肢の中で回答を求められたものであり、福祉に対する自分の考え方を十分に反映できたとは考えておりません。
 福祉施策に関しては、選挙期間中から、民間の活力と競争原理の導入や、現金給付的事業からサービス給付への転換の必要性を再三申し上げてまいりました。
 時代に合った福祉施策への転換のためには、シルバーパスや医療費助成制度などの内容も見直すことは、避けて通れないものと認識しております。
 介護保険制度のもとでの介護サービスについてでありますが、介護保険制度の実施により、介護サービスのあり方が根本から変わることとなります。
 都の高齢施策は、昭和四十年代にその骨格を固め、基本的構造を変えずに、事業をずっと実施してまいりました。また、高齢化の急速な進展に伴い、増大する高齢者福祉需要を支える現役世代の負担が増加することなどから、現行の福祉制度をこのまま継続することは困難であります。
 現行施策を見直す一方、さまざまな工夫を凝らし、高齢者が地域で安心して暮らせるよう、新たな時代に適合した施策を総合的に展開していくつもりでございます。
 次に、府中療育センターの視察の感想を述べた私の発言についてでありますが、私の発言の真意は、行政の長というよりも一人の人間として、みずからも思い悩むことを感じさせられ、そのことを自分自身にも、及び記者の皆さんにも問いかけたものであります。
 ある新聞が、現場にも同行せずに、この発言を意識的に曲解し、あたかも私が障害を持つ方々の人格を傷つけた──多くの読者に印象づけたことは、報道の正確性にもとり、許せぬ行為でもあります。これは卑劣なセンセーショナリズムであり、アジテーションであり、社会的には非常に危険なことだと思います。
 府中療育センターで、重度の障害を持つ入所者と触れ合い、懸命に介護する医師や看護婦と意見を交換して感じたことは、人間の生きることの意義と奥深さであり、また、これに携わる仕事の崇高さであります。
 私は、この視察で感じたことを知事としてしっかり胸に受けとめ、福祉の問題に取り組んでまいりたいと思っております。
 私学助成についてでありますが、私立学校は、長い歴史と伝統に培われた独自の校風、教育理念を通じて、特色ある教育活動を実践し、都民の多様な要望にこたえております。
 都は、これまでも、公教育に果たしている私立学校の重要性にかんがみ、経常費助成を初め保護者の経済的負担の軽減など、私学助成に努めてまいりました。
 都の財政状況は極めて厳しい状況にありますが、私立学校の担っている役割を踏まえ、私学助成について、今後幅広い観点から十分に検討してまいります。
 公共料金の改定についてでありますが、使用料、手数料の見直しは、単に財源確保のためだけではなく、受益者負担の適正化を図る観点から、必要あれば検討すべきものと考えております。
 今後とも、こうした観点から、適時適切な使用料、手数料の見直しを進めてまいりたいと思っております。
 また、警察費に対する国庫負担についてでありますが、都道府県警察に要する経費については、警察法の規定に基づき、警視正以上の階級にある警察官の俸給等のほか、首都における警務の任務の遂行に関する特殊事情を参酌して、超過勤務手当の一部などが国の負担とされております。
 今後とも、国と地方自治体間の役割分担に基づき、適切な経費負担が確保されるよう努めてまいりたいと思います。
 投資的経費の見直しについてでありますが、投資的経費については、近年の見直しにより、ピーク時の半分以下の水準まで減少しております。今後、なお二十一世紀に向けた社会資本整備の重要性を踏まえ、都の財政力で対応可能な範囲に抑制しつつ、限られた財源を重点的、効率的に配分していきたいと思っております。
 財政再建推進プランが目指す財政構造改革を進めるに当たっては、経常経費、投資的経費を問わず、都の行うすべての施策について、聖域のない見直しを行っていかなければならないと思っております。
 財源不足の解消についてでございますが、財政再建の目的は、都財政みずからの構造改革を徹底的に進め、新しい時代に適合する強固で弾力的な財政体質をつくり上げていくことにあります。
 その目的をなし遂げるためには、減債基金の積み立ての一部の見送り等、いわばつなぎとしての臨時的な方策に頼ることなく、経常経費、投資的経費を問わず、すべての施策について、時代変化への適合や財政が関与すべき範囲の明確化などの観点から、聖域なく見直しを行い、恒久的な財政再建策を着実かつ速やかに実施していかなくてはならないと思います。
 臨海開発への財政投入についてでありますが、臨海副都心開発は、一般財源の投入を極力抑制するため、開発利益に応じて整備費を負担する開発利益の還元方式を採用しております。
 このことにより、全体事業費二兆四千三百億円のうち、一般財源の投入は約三千九百億円と、全体の約一六%にまで縮減しております。
 臨海副都心開発は、二十一世紀の東京の活力と創造力を生み出し、都民生活を支える新しいまちを創造していく重要な事業であり、これまでの投資を最大限に生かしながら、着実に開発を進めていくつもりでございます。
 臨海関連の第三セクターへの財政支援についてでありますが、財政再建推進プランにおいては、施策の見直しの一環として、第三セクターを含む監理団体全般について、団体活用の原点に立ち返り、費用対効果の検証を厳密に始め、経営的支援に立った総点検を行うこととしております。
 今後、このプランに基づき、第三セクターへの財政支出についても適切、厳格に見直してまいりたいと思います。
 大企業のリストラを規制し、雇用を守るように行動すべきではないかということでありますが、企業において大量の離職が出る場合、雇用対策法により事前届け出が義務づけられております。整理解雇については、その必要性など、いわゆる整理解雇の四要件を満たさなければならないとの判例が確立されてもおります。
 法律に定められた権利が守られるよう、今後とも普及啓発を行うことが肝要と思います。幹部職員による求人開拓や成長産業における雇用創出などにより、雇用の確保に努めてまいりたいと思います。
 中小企業の振興による産業再生についてでありますが、現行中小企業基本法制定後三十六年が経過し、中小企業を取り巻く社会経済環境は大きく変化してまいりました。
 このため国は、中小企業を弱者として画一的にとらえるのではなく、むしろ機動性、柔軟性、創造性を発揮し得る中小企業の強みを我が国経済のダイナミズムの源泉としてとらえ、積極的な役割を期待していくこととしたものであります。これはまことに妥当な、要するに歴史的認識だと思います。
 都としても、都の産業の大宗を占める中小企業への施策の充実を図るとともに、意欲的に技術革新や経営改革に取り組む中小企業を積極的に支援して、産業構造の転換と雇用の創出を図っていくつもりであります。
 税制についてでありますが、都はかねてより国に対し、中小企業の事業承継に伴う相続税の負担軽減及び固定資産税負担の均衡化、適正化を要望してまいりました。
 また、都で実施している都市計画税の軽減措置については、既に課税標準を三分の一とする特例が法定化されていること等から、見直しが必要な状況にあります。平成十二年度については、固定資産税の評価替え及び税制改正の動向等を踏まえ、そのあり方について考えたいと思います。
 なお、他の質問については、関係局長から答弁いたします。

  〔福祉局長荻野澄子君登壇〕
◯福祉局長(荻野澄子君) 二点のご質問についてお答えいたします。
 まず第一に、財政再建推進プランにおいて示されております在宅サービス事業についてでございますが、先月発表いたしました「福祉施策の新たな展開」の基本的な方向に沿って、今後、経済給付的事業を見直すとともに、緊急性、必要性の高い在宅サービス事業の充実を図るなど、新たな展開の具体化を進めてまいります。
 次に、国民健康保険事業への補助についてでありますが、平成十二年度の都区制度改革により、現行の特別区国民健康保険事業調整条例に基づく交付金制度が廃止されることに伴い、特別区及び特別区に準じて補助しております市町村、国保組合に対する助成のあり方を見直すことが必要であります。
 このため、平成十年五月、東京都国民健康保険委員会に、十二年度以降の東京都における国民健康保険事業のあり方について諮問し、現在ご審議いただいているところでございます。この答申を踏まえまして、十二年度以降、適切に対処してまいります。

  〔高齢者施策推進室長神藤信之君登壇〕
◯高齢者施策推進室長(神藤信之君) 五点のご質問にお答えします。
 最初に、老人保健福祉計画などについてのお尋ねでございます。
 老人保健福祉計画は、介護保険事業支援計画を包含するものでございます。これらの計画の策定に当たりましては、学識経験者や被保険者で構成する団体の代表などから成る計画作成のための委員会での検討、また公募都民を含む懇談会からの提言、有識者ヒアリング及び都政モニターなど、幅広い都民からの意見を反映し、策定していくこととしております。
 また、議事録等につきましては、原則として公開しているところでございます。
 次に、介護保険に関してのご質問でございます。
 最初に、保険料、利用料の軽減策についてのお尋ねですが、都は、低所得者対策としての保険料の減免や高額介護サービス費本人負担限度額の引き下げについて、その範囲や額を明らかにするとともに、減免等に要する費用につきましては国庫負担とするよう、国に対し要望してきたところでございます。
 なお、国におきましては、介護保険制度の円滑な実施のための対策に要する経費については、予算編成過程において検討するとされており、都としては、引き続き国に対し強く要望してまいります。
 次に、介護保険対象外の施策を行う区市町村への支援についてのお尋ねです。
 介護保険の給付の対象から外れた高齢者への支援については、重要なことから、都から国に対して強く要望してきたところでございます。このたび、国においては平成十二年度概算要求をしているところです。
 今後、ご指摘の生活支援ヘルパー等については、実施主体である区市町村と協議し、支援に積極的に取り組んでまいります。
 次に、老人福祉手当についてのお尋ねです。
 老人福祉手当についての国の見解は、手当が必ずしも介護費用の補てんに用いられるという仕組みでないため、介護保険法第二十条による給付調整の対象とはならないが、地方自治体の判断において、そのあり方を見直すことを否定するものではないというものでございます。
 都としては、両制度の政策目的が重複することから、老人福祉手当の見直しを行うものでございます。
 なお、保険料や利用料負担の問題は介護保険制度の中で対応すべき問題であり、現在、引き続き国に対し要望しているところでございます。
 最後に、特別養護老人ホームについてのお尋ねでございます。
 介護保険制度の実施に伴い、介護サービスは従来の措置から契約による提供へと変わり、措置制度を前提として実施してきた特別養護老人ホームに対する公私格差是正を含む現行の都加算については、平成十二年度から廃止するものでございます。
 特別養護老人ホームの運営につきましては、今後、関係団体と十分に協議を行い、適切に対応してまいります。

  〔衛生局長今村皓一君登壇〕
◯衛生局長(今村皓一君) 地域リハビリテーションの充実についてお尋ねがございました。
 リハビリテーションの整備に当たりましては、患者の症状に応じて、早期、専門、地域という三つの役割に区分され、かつ一貫した連携体制として整備することが必要でございます。
 中でも、住民に身近な地域で、主として在宅者を対象として訪問や通所により実施される地域リハビリテーションは、高齢化の進展に伴い、身体機能の維持、寝たきり防止等の観点から、ますます重要になっていると認識しております。
 今後、介護保険制度の導入などを踏まえ、本格的な高齢社会にふさわしい地域リハビリテーションの整備のあり方について、関係機関等との協議を行ってまいりたいと考えております。

  〔総務局長横山洋吉君登壇〕
◯総務局長(横山洋吉君) 行政改革に関します二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、行政改革の組織対象についてでございますが、行政改革は、社会経済状況の変化に対応するため、都政の抜本的な構造改革を行い、強固で弾力的な行財政システムの確立を目指すものでございます。したがって、知事部局のみならず、公営企業や警視庁、消防庁などを含め、東京都の全組織を挙げて今後とも取り組んでまいります。
 次に、開発部門等の組織の見直しについてでございますが、組織につきましては、社会経済状況の変化に対応して、効果的、効率的な行政運営を行うという視点から、適時適切に見直しを行ってきたところでございます。
 今後、平成十二年秋に策定される都市構想の内容を踏まえ、中長期的な視点に立って、組織のあり方について抜本的に検討してまいります。

  〔労働経済局長大関東支夫君登壇〕
◯労働経済局長(大関東支夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、緊急地域雇用特別交付金事業が終了しても公的就労を継続すべきではないか、このようなお尋ねでございますが、今回の交付金事業は、現下の厳しい雇用失業情勢を速やかに解決するために、臨時応急の措置といたしまして、六カ月未満の雇用期間であること、そして、平成十三年度までの限定された事業であること等を条件に実施されるものでございます。
 都といたしましては、本事業を国から配付される予算の範囲内で実施するほか、既存の雇用対策と相まって、平成十三年度までの間に雇用の安定的な改善が図られるよう、全力を挙げて取り組んでまいります。
 次に、中小企業制度融資についてのお尋ねでございますが、まず、融資審査につきましては、都といたしましては物的担保が不足しがちな中小企業の資金調達を支援するため、中小企業の技術力、事業の将来性等を積極的に評価した保証を行うよう、信用保証協会を指導し、金融機関に対しましても融資の促進を求めているところでございます。
 また、返済猶予につきましても、中小企業の実情に応じて、保証協会、金融機関及び中小企業の間で協議を行い、きめ細かく対応しているところでございます。
 今後とも、中小企業の資金調達の円滑化を図るため、制度融資のあり方につきまして検討してまいります。