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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

1999年第3回定例本会議 一般質問

小松恭子(北多摩第一選出)  1999年9月22日

障害者の就労や生活の場の確保への支援強化を緊急に
遅れている多摩地域の歩道整備や交差点改良にこそ予算を

-- 目 次 --

◯五十七番(小松恭子君) 初めに、障害を持つ方々への支援について伺います。
 知事は、昨日の我が党の福祉施策に関する代表質問に対し、何らまともに答えることなく、ただ所信表明の内容を繰り返すだけでした。そして、重度障害者手当や障害者医療費助成制度を初めとする経済給付的事業の切り捨てをあくまで推進する姿勢を表明されました。
 しかし、障害者基本法は、第二十条で、国及び地方自治体は、障害者の生活の安定に資するため、年金、手当などの制度に関し必要な施策を講じなければならない、と定めています。また、第二十三条では、国及び地方自治体は、障害者及び障害者を扶養する者の経済的負担の軽減を図るため必要な施策を講じなければならない、と定めています。
 知事は、障害者基本法のこれらの規定をどう認識しているのですか、お答えください。
 また、障害者団体は、かねてより知事との対話集会を強く希望しています。ひざを交えて、直接障害者自身の口から切実な声を聞いてほしいというこの要望にこたえるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

重度身体障害者グループホーム事業を立ち上げ、作業所への支援強化を

 さて、重い障害を持つ人も、身近な地域の中で生活できるように住まいの確保などを進めることは、重大な課題です。知的障害者の場合は、重度生活寮がモデル事業としてスタートし既に三年になりますが、今、重度身体障害者の方々から、同様の少人数の共同の生活の場であるグループホームや福祉ホームを求める声が高まっています。そこに共通しているのは、生活介助を担っている親亡き後も、地域の中で自立して生活したいという強い願いです。
 ある重度肢体障害者の三十五歳の女性は、両親が入院したため、全国の緊急一時保護施設を転々とし、最終的には重度心身障害者の医療施設に入所しました。父親は、面会のたびに、いつ帰れるのとせがまれるのがつらい、重度障害者にもグループホームがあれば娘も地域で暮らしていけたのに、と訴えています。
 こうしたことから、小平の肢体不自由児親の会は、食事や移動など介助なしでは暮らしていけない重度障害者にとって、介助者も一緒に数人規模で生活できるグループホームの制度化を求めて大きな運動を始めています。新宿では、福祉ホームの枠を重度身体障害者にも広げてほしいとの要望が出されています。
 国の身体障害者福祉審議会のことしの一月の答申は、身体障害者のグループホーム事業を創設すべきとの意見を紹介し、検討する必要があるとしています。重度身体障害者のグループホームや福祉ホーム事業の一日も早い立ち上げを求めますが、いかがでしょうか。
 重度知的障害者の生活寮についても、モデル事業から早急に本格実施すべきです。そして、一般の生活寮での重度知的障害者の受け入れも促進することが重要ですが、見解を伺います。
 これら重度の方々を含めたあらゆる障害者の就労や昼間の地域の生活の場として、小規模作業所は、なくてはならないものです。しかし、その運営は大変厳しく、財源の多くを都の補助金に依拠しています。都はこの間、補助金を微々たる引き上げしかしてきませんでしたが、今年度はそれすらストップし、制度創設以来、初めて据え置きしました。ここに今の都政の冷たさを感ぜずにはいられません。
 都は、無認可の小規模作業所の役割をどう認識し、どう支援していくのか、基本的な考え方を伺います。
 まして、長引く不況のもとで、作業所もその影響をまともに受けています。全国障害者共同作業所連絡会東京支部の実態調査によると、不況の影響があると回答した作業所が八六%を超えています。具体的な影響では、仕事量が減った、工賃の単価切り下げなどのほか、民間企業で働いていた人などがリストラで解雇され、作業所にUターンして戻ってきたというものが少なくありません。ある作業所では一年間に七人も企業から戻ってきた例もあります。
 作業所への不況対策として、一般企業から解雇された多くの障害者を受け入れている小規模作業所に、定員を超えた受け入れに対しての支援を求めるものです。お答えください。
 福祉についての最後は、公共施設などのバリアフリー化についてです。
 障害者用トイレなど、福祉のまちづくり条例に基づいて整備されたのに、電動車いすでは利用できないなど、実態に合わない場合が少なくありません。業者は都のマニュアルどおりにつくっているといいます。障害者も参加しての施設整備マニュアルの改善、今日的見直しを求めます。

道路構造に起因する事故の増加解決へ、緊急の整備計画を

 次に、多摩地域の道路交通問題です。
 戦前から都市開発が進められてきた区部地域に比べ、この三十年ほどの間に急激に都市化が進んだ多摩地域の道路交通網の整備は大きく立ちおくれており、道路の構造に起因すると見られる交通事故もふえ続けています。
 私は、地元多摩北部地域の道路の現状を改めて調査を行い、歩道整備の立ちおくれ、とりわけ都道のひどさに驚かされました。それは、所沢街道、旧青梅街道、新青梅街道以北の芋窪街道など、幹線道路である都道が、軒並み歩道が設置されておらず、道路幅がないため、ガードレールもないものや、ガードレールがあっても電柱が途中にあって自転車は車道を走らなければならないなど、車優先、危険と隣り合わせの道路になっていることであります。
 例えば、東村山市青葉町一丁目の所沢街道では、通学路に当たっていますが、子どもたちは、歩道もガードレールもないところを、毎日交通事故の危険におびえながら通学しています。小学生の子を毎朝、車が少ないところまで送っているお母さんの話を伺いましたが、一日も早く歩道をつくってほしいと訴えられました。
 また、立川から埼玉方向に抜ける芋窪街道は、南北道路として交通量が多く、歩行者にとっては危険な道路ですが、空堀川と交差する東大和市の中砂橋は、大型トラックが頻繁に走っているにもかかわらず、歩道がなく、週に一度の割で接触事故が起きているといわれるほど交通事故も多いところです。二年前には死亡事故も発生しましたが、いまだに歩道設置の対策は講じられていません。
 また、東村山の新青梅街道が西武国分寺線に交差する地点では、高架下の歩道は人と人がすれ違うこともできないような狭さで、実際にはかってみると七十四センチしかありません。この道路は通勤通学路に当たっており、自転車がやむなく、猛スピードで車が走る車道を走らざるを得なかったり、朝の通学時間には、人が多くて前に進まないことから、中には中学生が土手を乗り越え線路を横断してしまうなど、これも、いつ大事故が起こっても不思議でない状況です。
 このような状況を放置してよいと思われますか。今、紹介した通学路の歩道を初め、要望の強い芋窪街道中砂橋の歩行者専用の人道橋や、新青梅街道の高架下の歩行者用トンネルなどは、都が真っ先に改善に当たることが求められていると思いますが、答弁を求めます。
 また、歩道上に設置されている電柱も、歩行者や自転車の障害になっています。電線地中化の計画的促進、そして、とりあえずは道路外への移設などを行うだけで、安心して利用できるようになりますが、どうですか。所見を伺います。
 今紹介した道路はほんの一部にすぎません。多摩地域にはまだまだ整備のおくれた都道が多く残されているのです。それは、都が大型幹線道路予算を優先し、これらの生活密着道路や歩道の整備を後回しにしてきたからにほかなりません。実際に歩道整備の予算は、都内全域でも昨年度で四十億円、整備延長で四キロにすぎません。しかも、この予算は年々減らされてきており、九二年の七十五億円から約半分近くに減らされているのです。このため、整備は遅々として進まず、九五年から三年間に八キロ、延長率で〇・三%延びたにすぎません。毎年、大型道路の建設に一千億円近くもの予算がつぎ込まれているのとは対照的です。現在、多摩の歩道整備率が六五%ですから、このペースで進めた場合、多摩地域の都道の歩道をすべて整備するのに、何と二百六十年以上もかかる計算になるではありませんか。
 知事、緊急に、おくれている多摩地域の歩道整備を促進するために、路線別の整備計画を立て、こうしたところにこそ必要な財源を振り向けるべきと考えますが、所見を伺います。

渋滞解消に安い費用で効果を上げているすいすいプラン

 多摩地域で解決が急がれているもう一つの問題が、幹線道路の渋滞です。この渋滞は、南北方向の道路だけでなく東西方向でも起きており、深刻です。これらの渋滞は約八割が交差点部分で発生しているといわれ、一カ所の交差点での渋滞時間は、区部が三時間四十四分、多摩は倍の七時間三十一分にもなるとされています。その原因については、都は建設局が発行したパンフレットの中で、交差点における右折車線が設置されていないための構造問題だと分析、とりわけ多摩は、右折車線整備が区部の半分であることにその原因を求めています。
 この交差点の渋滞解消に安い費用で大きな効果を上げているのが、交差点に右折車線を設ける交差点すいすいプランです。実際に設置されたところでは、交差点通過の時間が三分八秒から一気に十六秒に短縮され、ドライバーからも周辺の住民からも大変喜ばれています。すいすいプランは百カ所を指定して改善が進められていますが、最近は財政難を理由に事業実施を抑えられ、新たな指定は認められていません。この交差点改良は、一カ所、安いところでは二億円、平均でも十億円程度ででき、一キロ百六十億円もかかる調布保谷線などと比べて、安上がりに、しかも大きな効果を上げられるものです。
 知事、予算は縮小するのでなく、新たな指定も含め、こうした安くて効果のある事業にこそ重点的に予算を計上することをお勧めしますが、いかがでしょうか。答弁を求めます。
 もう一つ、バス停留所付近の渋滞をなくすためのバスベイの設置も、効果が上がる方法です。道路全体の拡幅が困難なところでは、せめてバス停部分だけでも、民有地を買収するなどスポット的に広げてバスベイを確保するなども有効な方法と考えますが、答弁を求めます。
 最後に、公共交通の拡充です。
 多摩地域の自動車交通がふえている背景には、圧倒的に公共機関が不足していることが挙げられます。とりわけ武蔵村山を初めとする多摩北部地域は、立ちおくれている交通不便地域であります。かねてからモノレールなど公共交通の整備が切望されてきたのでありますが、最近、この地域の住民が利用している東大和病院を通るバス路線が廃止されるなど、高齢者や障害者などにとってますます不便な地域になろうとしております。ですから、住民は自家用車に頼らざるを得ず、それがまた交通渋滞を招くという悪循環を招いています。
 多摩の各市では、住民の足を確保するために市内循環バスやミニバスなど、少ない予算をやりくりして走らせています。また、交通不便地域で朝晩にJRや私鉄などの鉄道駅にミニバスを走らせるだけでも交通渋滞を減少し、住民に喜ばれることは間違いありません。都として、このような、とりわけ公共交通の恩恵を受けることの少ない地域の取り組み、これを支援することを求めまして、私の質問を終わります。


  〔知事石原慎太郎君登壇〕
◯知事(石原慎太郎君) 小松恭子議員の一般質問にお答えいたします。
 障害者基本法の認識についてのご質問ですが、障害者基本法に基づき、障害者の自立と、社会経済、文化、その他あらゆる分野への活動の参加を促進するため、都は障害者施策の総合的、計画的な推進を図ってまいりました。
 今日、少子高齢化の急速な進展など、社会福祉を取り巻く状況が大きく変化しております。福祉サービスの利用者が増加するのに比べ、社会全体の負担力は伸びないために、現行の福祉施策のままでは、増大するニーズに到底こたえられません。そのため、都の福祉も基本的な構造改革が必要であります。今後、将来世代にわたって真に安心できる社会の実現を目指し、積極的に取り組んでまいりたいと思います。
 次いで、障害者からの要望を直接聞いてほしいということでありますが、都はこれまで、都内の主な二十の障害者団体で構成する東京都障害者団体連絡協議会の場で定期的にご意見、ご要望をお伺いするほか、東京都障害者施策推進協議会の委員に障害者を任用するなど、幅広く障害者の皆様のご意見を十分伺いながら施策の推進に努めてまいりました。今後とも、これらの機会を通じ、障害者の方々のご意見を伺っていくつもりでございます。
 なお、その他の質問については、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。

  〔東京都技監成戸寿彦君登壇〕
◯東京都技監(成戸寿彦君) 多摩の各市におきます市内循環バスやミニバスに対する都の支援についてでございますが、一般的に、バス交通は地域に密着した交通手段でございまして、バス事業への支援は、区市町村の実情に応じ、原則として地元自治体が対応すべきと考えております。

  〔福祉局長荻野澄子君登壇〕
◯福祉局長(荻野澄子君) 五点の質問にお答えいたします。
 まず第一に、重度身体障害者のための福祉ホーム等についてのお尋ねでございますが、都は、どんなに重い障害を持つ方も、必要とするサービスを利用しながら、地域社会の中で自立して生活を送れるよう支援することが必要と考えております。
 そのため、先月発表いたしました「福祉施策の新たな展開」に基づきまして、重度の身体障害を持つ方の、少人数の共同生活の場など多様な住まい方の研究、検討を進めていくこととしたところでございます。
 次に、重度知的障害者の生活寮についてのお尋ねですが、都は、重い知的障害の方々が地域の中で安心して生活できるよう、平成九年度から、都内二カ所で重度生活寮モデル事業を開始したところでございます。本格実施につきましては、今後、実施主体である区市町村と連携いたしまして、モデル事業の結果を十分検証していく必要があると考えております。
 また、一般の生活寮での重度知的障害者の受け入れにつきましては、今後の検討課題としてまいりたいと思います。
 また、小規模作業所に対する基本的考え方についてのお尋ねでございますが、いわゆる小規模作業所は、障害を持つ方々の日中活動を支える場として重要な役割を担っていることから、都はこれまで、実施主体である区市町村への運営費等の助成や、法内施設への整備促進に努めてきたところでございます。
 さらに、離職した障害者の小規模作業所での受け入れに関するお尋ねでございますが、いわゆる小規模作業所は、これまでも一般就労の困難な障害者の方々の地域生活を支えてきたところでございます。今後とも、事業の実施主体である区市町村におきまして、地域や施設の実態を踏まえた柔軟な運用が図られるものと考えております。
 最後に、福祉のまちづくり条例に基づく施設整備マニュアルの改善についてのお尋ねですが、このマニュアルは、高齢者、障害者等が円滑に利用できる施設の整備を行うため、平成八年に作成したところでございます。
 その後、社会環境の変化等もあり、本年三月には、関係団体の代表や都民からの公募委員も参画した福祉のまちづくり推進協議会から、改定すべきとのご意見をいただき、改定作業に着手したところでございます。作業に当たりましては、ご指摘のような点も配慮していきたいというふうに考えております。

  〔建設局長古川公毅君登壇〕
◯建設局長(古川公毅君) 多摩地域の道路整備についてお答えいたします。
 まず、歩道整備についてですが、所沢街道の歩道設置については、現在、地元住民から請願及び陳情が都議会に提出されており、都としても事業化の可能性について検討しております。
 次に、芋窪街道と空堀川の交差部にかかる中砂橋の人道橋の設置については、かねてより東大和市から要請を受けているところです。現在、空堀川改修計画や都市計画下砂公園整備計画との整合を図りながら、実施に向けた検討を進めております。
 次に、西武国分寺線下の歩行者用トンネルについては、地元から提出された二件の請願が、平成十年第四回定例会で採択されています。現在、鉄道事業者と協議を進めており、早期に基本協定を締結し、概略設計を実施する予定です。
 電線類の地中化促進についてですが、地中化に当たっては、変圧器等の設置のために一定規模以上の歩道幅員が必要です。また、電力、通信需要が低い場合は、電線管理者との合意形成が大きな課題となっています。
 このため、駅前など優先度が高く、電線管理者との合意が調った箇所から地中化を進めています。また、狭い歩道内の電柱の移設については、道路外に設置可能な場所があり、沿道地権者と電線管理者の協力が得られるところから実施しております。
 歩道の計画的整備についてですが、既設道路の歩道整備は、多摩地域を中心として重点的に取り組んでいます。実施に当たっては、交通量や学校、病院等の配置状況を踏まえ、できるだけ早期に整備すべき区間として、百四十九カ所、約六十キロを選定し、現在、百二十七カ所において事業を進めています。今後とも、緊急性が高く、整備効果の大きい路線から順次計画的な事業化に努めてまいります。
 すいすいプランについてですが、本事業は、交差点での渋滞解消や事故防止など、道路交通の円滑化を図るための重点事業であり、多摩地域を中心に百カ所の交差点を選定し、用地を取得し、右折レーンの設置等を進めているところです。平成十年度末までに十九カ所が完成し、現在八十一カ所を鋭意事業中です。今後とも、調布保谷線など南北方向の幹線道路の重点的整備とあわせて、地元市や関係住民の理解と協力を得て、すいすいプラン一〇〇事業の促進を図ってまいります。
 バスベイの設置についてですが、バスベイは交通流の円滑化や利用者の安全性の向上に寄与するものです。その実施に当たっては、新たに用地の取得が必要となることから、地元の理解と協力が得られる箇所について設置することとしております。