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■ 議会での質問 日本共産党東京都議団 |
-- 目 次 --
〇五十八番(前沢延浩君) 初めに、多摩地域の振興について伺います。
二十一世紀を迎え、多摩地域の発展をどのように展望していくのかが重要な課題となっています。それは、多摩地域がこの半世紀の間に、高度成長と歩調を合わせて急成長し、人口で四倍に膨れ上がるという変化を経験しながら、いよいよ本格的な少子高齢社会に突入しようとしているからであります。また、二十世紀にやり残した課題をどのように解決して、少子高齢化社会に対応し、環境と共生できる多摩をつくり出すのかが問われているからです。
こうした折、東京都が十五年後の多摩地域のあるべき姿を明らかにするとして発表した多摩の将来像素案は、率直にいって、多摩都民と各自治体が願い、求めているものとは、大きくかけ離れたものといわざるを得ません。
既に都は、東京構想二〇〇〇で、東京圏メガロポリス構想などといって、首都圏規模の大規模開発を推し進めるとともに、福祉などの都民にとって欠かせない施策については、まず民間にゆだね、残る課題についても、NPOや市町村に押しつける方向を打ち出しています。
素案は、こうした方向を踏襲するとともに、多摩格差についても、おおむね解消されたなどとして、多摩の支援から手を引こうとしています。問題は、このような将来の多摩のあり方にかかわる重要な提案であるにもかかわらず、東京都が一方的に、しかも地元の意向などお構いなしに決め、発表してしまったことです。
都は発表後、市町村からアンケートをとり、それをもとにブロックごとの意見交換会を開いていますが、各自治体の素案に対する評判は極めて悪く、決して歓迎されているなどというものではありません。
その一つが、市町村の頭越しに策定されたことへの怒りであります。私どもが訪問したある市長は、地方分権の流れのある中で、都が机の上で多摩の将来像を出すのはどうかと疑問を投げかけるとともに、市町村は東京都の下請機関ではありませんとまでいわれたのであります。全く同感であります。
もう一つは、素案の内容についてです。都への回答の中で、ある市は、発展の概念が人口増加や都市基盤整備、産業集中といった外的要因に偏り過ぎているといい、別の市は、都区内と比較すると、格差八課題にあらわれないおくれた部分があるとして、多摩格差への都の財政支援を求めています。手続的にも内容的にも、素案が多摩地域の自治体の思いと乖離したものであることは明らかです。
知事、多摩の将来像の策定に当たっては、素案にこだわらず、改めて市町村や専門家などを交えた検討委員会を設置して、多摩市町村と協同、協業で検討を行うべきものであると考えますが、見解を求めます。
同時に発表された市町村合併に関する検討指針も、多摩住民にとって重要なかかわりを持つものです。指針は、現在ある三十市町村を六つにまとめる案などを提案していますが、自治体をどのように編成するかは、まさに百年の計であり、徹底した民主的手続を通して行われるべきものであります。
ところが、これも素案同様に市町村を無視しており、合併そのものには必ずしも反対でない市長でも、東京都が勝手に決めないでもらいたい、こういう厳しい批判の声を上げているのであります。
市町村の合併は、都が上から押しつけるのではなく、あくまでも自治体の自主的、主体的な考えによるものであると考えます。知事の答弁を求めます。
知事、今、必要なことは、市町村が望んでいない提案を無理やり行うことではなく、多摩の振興に都が全力を挙げることであります。確かに、学校など基本的に格差が解消したものもありますが、格差是正が課題とされてから四半世紀を過ぎて、まだ格差が是正されていないとしたら、そのことが大問題なのであります。むしろ、少子高齢化のもとで新たな行政需要が生まれていることなどに注目すべきなのであります。
そういう意味で、今日、多摩格差の最大のものは、行政格差の原因となる区と市町村との間の財政格差であります。
都は、財政再建推進プランの百三十八事業の中に、市町村調整交付金、振興交付金が、廃止を含めた見直しの対象事業として挙げられていますが、将来とも、これらの補助制度を堅持し、むしろ増額して、多摩市町村の要望にこたえることこそが求められていると思いますが、所見を伺います。
また、個別の課題でも、都が積極的に役割を果たすことは、極めて今日的課題なのであります。都は、来年度から乳幼児医療費を就学前まで拡充しますが、この制度こそ、すべての区では就学前までとなっているのに、多摩地域では財政が厳しいため、年齢制限が都制度の基準しか満たせず、格差の今日的課題になっていたのです。これを都が引き上げることで初めて、格差をなくすことができるようになったのであります。
そうした立場で分野別に見ると、立ちおくれの明らかな分野は医療分野になっています。ご承知のように、区部には八カ所もある都立病院は、多摩地域には、小児病院を合わせても三カ所しかありません。救急医療機関は、区部には二百九十一カ所、多摩には九十六カ所です。区部にはある都立リハビリテーション病院も、多摩にはありません。保健所も統廃合されています。
二十一世紀を迎え、本格的な少子高齢化を迎えるに当たって、需要が増大すると予想される医療、介護、障害者支援、子育てなどの事業について、区部との格差が生じないようにすることは、広域行政としての都の責務と考えますが、見解を伺います。
同じように、市長会が今日的格差としている文化施設、交通体系、都市基盤整備の課題も急がれます。この点でも、大型幹線道路や業務核都市など開発行政に偏ることなく、おくれている文化施設や生活道路、歩道設置、公共交通などの生活密着型の公共事業に重点的に予算を配分すべきですが、知事の答弁を求めます。
次に、急がれている在宅の高齢者の生活をサポートする仕組みづくりについて質問します。
清瀬市には、今、都営住宅が三千五百余りありますが、中でも中里団地は、高齢者のみの世帯率が三割に及び、平日の昼間訪ねても、若い人の姿はほとんど見られません。訪問しました方は、買い物以外にはほとんど家に閉じこもり、話し相手もなく、気軽に相談する相手もいないため、今でも介護保険のサービスを受けていないと話していました。このようなひとり住まいの高齢者や、夫婦のどちらかが障害や痴呆がある方などに対して、見守りや相談の仕組みづくりが急がれていると改めて痛感しました。
今、都の制度としては、今年度から導入された生活援助員派遣制度、すなわちLSAと、単独事業であるシルバーピアのワーデン、また、これも試験的に導入された巡回管理制度の三つの仕組みがありますが、問題は、こうした制度を拡充して、一日も早く、都営住宅に住むすべての高齢者が何らかの生活のサポートが受けられるようにすることです。
このうち、生活援助員派遣制度については、三鷹市の新川団地で事業が始まります。この制度は、兵庫県で二年以上前から震災被災者住宅を中心に導入され、成果を上げています。住民の話し相手になったり、集会室でお茶会を開いて親睦を深めるなどに取り組んでいます。また、身体のぐあいが悪いときに買い物や食事の支度を手伝うなど、感謝されています。
生活援助員は、特養ホームや在宅支援センターなど福祉法人から教育を受けた専門職が交代で派遣され、安否確認や相談、一時的家事援助、生活支援の役割を引き受け、介護保険や訪問看護と連携して、高齢者のサポート体制をしいているのであります。中には、複数の生活援助員でチームをつくり、二十四時間の常駐体制をとっているところもあります。都としても、こうした先進例に学んで、生活援助員派遣制度を促進するための目標と計画を立て、積極的な普及に努めることが急がれます。
問題は、補助金が二百十九万円が限度とされ、極めて低いことです。促進を図るためには、財政が困難な区市町村への補助の増額を国に求めるべきであります。また、生活援助員の養成を推進することも重要ですから、都として研修を行うべきと考えますが、それぞれお答えをいただきたい。
同時に、都として補助制度もつくって、すべて都営住宅を対象にこの事業を展開する方向を打ち出すべきと考えますが、見解を伺います。
あわせて、既設の都営住宅での普及には施設改善が必要となりますが、これも都の役割が重要であります。
また、都営住宅併設のシルバーピアで、安否確認や緊急時の対応を住み込んで担当しているワーデンへの支援も重要です。ワーデンの仕事は本来、日中ですが、実際には夜間も相談を受けることが少なくありません。ワーデンの方はなかなか外出できない、相談相手もいない、こういう悩みを訴えています。しかも、これだけ大変な仕事なのに、家賃は半分自分持ち、給与は月十万円しか支給されません。ワーデンが意欲を持って仕事ができ、すべての高齢居住者に行き届いた対応ができるよう、都として補助の上乗せを行うべきです。
さらに、シルバーピアなどがない、高齢者率が高い住宅への支援も必要であります。八王子、足立でモデル実施されましたが、担当者は二人一組で二十団地、五千世帯を担当しており、改善が迫られていると思います。専門性を高め、研修が必要と考えますが、あわせて所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
〇知事(石原慎太郎君) 前沢延浩議員の一般質問にお答えいたします。
まず、多摩の将来像の策定について、市町村等の意見を反映すべきであるということでありますが、これはあくまで素案であります。しかし、その限りにおいても、市町村の意見を無視したなどということはございません。これは意見の違いはあったでしょうけれども、ならば、一体どの市町村が、どのように無視されたかという具体的な事例をぜひお示しいただきたい。
そしてまた、今後、この素案に基づきまして、さらなる具体策を立て、その実施の方法においても、やはり市町村あるいは都民の意見、提案などを十分取り入れながら、都議会の議論をも踏まえつつ、最終的な取りまとめを行っていくつもりでございます。
次に、市町村合併についてでありますが、どうも眺めるところ、共産党は基本的に市町村合併に反対のようでありますが、日本が時間的、空間的にこれだけ狭小になって、各地方自治体の行政区分というものが、長いものは百年近く、古いものも五十年たっている今、これを見直すということは、何といっても、タックスペイヤーであります国民の利益につながることであると基本的に認識しております。
地方分権が今後進展する中、市町村が行財政運営の効率化を図りつつ、広域的な行政需要に対応していく上でも、合併は大きな効果があると思います。合併を進めていくには、何よりも住民の意思を尊重しながら、市町村みずからが自主的、主体的に考え、取り組んでいくことが必要であると思います。
東京都は、今回、市町村合併に関する検討指針を策定しましたが、これはあくまで指針でありますけれども、今後、この指針を活用して、市町村や都民の中で、合併に関する検討が、みずからの利益というものを踏まえて活発に行われるよう望んでおります。
他の質問については、関係局長から答弁いたします。
〔総務局長大関東支夫君登壇〕
〇総務局長(大関東支夫君) 市町村振興交付金、調整交付金についてお答えいたします。
地域間の財政力格差は、基本的には国の地方交付税制度で措置されているわけでございますけれども、東京都はこれに加えて、市町村の行政水準の向上や均衡ある発展を図るため、これまで、その時々の都や市町村の財政状況などを十分に踏まえながら、市町村振興交付金や調整交付金を通じて財政支援に努めてまいったところでございます。
今後とも、この両交付金につきましては、市町村の行財政運営を十分に考慮しながら、厳しい都財政の状況を踏まえつつ、適切に対処してまいります。
〔福祉局長高齢者施策推進室長兼務前川燿男君登壇〕
〇福祉局長高齢者施策推進室長兼務(前川燿男君) 四点のご質問にお答えいたします。
まず、福祉分野における広域行政としての都の役割についてでございますが、少子高齢化の進展などに伴う福祉ニーズの多様化、高度化にどのように対応するかは、区部、多摩に共通する東京全体の課題でございます。
対応に当たりましては、住民に身近な区市町村が、地域の特性を生かし、創意工夫を凝らして主体的に施策展開を図っていくことが基本となります。都としては、福祉改革推進プランに基づきまして、広域的な立場から、こうした区市町村の取り組みを支援してまいります。
続いて、生活援助員、LSAにつきまして、まずその導入についてでございますが、都では、高齢者用の集合住宅を対象として、日常の生活相談や関係機関との調整を行う専門職員である生活援助員の配置を進めております。今後とも、実施主体である区市町村からの協議に基づき、事業を推進してまいります。
また、お尋ねの国の補助につきましては、現在の補助基準額は、生活援助員の業務に対応したものであると考えております。
研修につきましては、都は既に、介護保険制度などを内容とする研修の受講経費の補助を実施しており、引き続き本研修への参加を促進してまいります。
次に、すべての都営住宅を対象とした生活援助員の配置についてでございますが、この事業の対象となる集合住宅は、事業の目的からして、高齢者の安全や利便に配慮した設備、設計を備えていることが必要になります。したがいまして、すべての都営住宅を対象とすることは考えておりません。
最後に、ワーデンへの支援についてでございますが、ワーデンの配置は都の独自事業であり、都は従来から区市町村を対象として、安否の確認や緊急時の対応など、業務に見合った経費を助成いたしております。
〔財務局長木内征司君登壇〕
〇財務局長(木内征司君) 多摩地域の公共事業についてのご質問でございます。
東京都は、広域自治体として、多摩南北方向の道路や多摩都市モノレールの整備などを進め、交通渋滞の緩和や住民の交通利便性の向上を図ってまいりました。
今後とも、厳しい財政状況を踏まえつつ、事業の重点化を図り、こうした都市基盤整備を着実に進めていくことが、多摩地域の振興に役立つものと考えております。
〔住宅局長戸井昌蔵君登壇〕
〇住宅局長(戸井昌蔵君) 都営住宅の巡回管理制度についてのお答えでございます。
巡回管理制度は、平成十一年三月の住宅政策審議会の答申に基づきまして、都営住宅居住者の高齢化に対応するものとして、昨年七月からモデル事業を実施しているところでございます。
現在、足立区と八王子市内の団地を対象といたしまして、住宅の点検や修繕の受け付け、提出書類に関する相談などを行っておりまして、モデル事業の実施結果を踏まえながら、この制度のあり方については既に検討を進めているところでございます。