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■ 議会での質問 日本共産党東京都議団 |
-- 目 次 --
東京ひいては日本の経済の基盤をなしている製造業の支援についてです。
ながびく不況と、大企業などの生産拠点の海外移転、さらには、単価の四割カットなどの下請けいじめによって、都内製造業は、ピーク時の六割におちこみ、東京の活力の衰退の一因となっています。
しかも、かつて経験したことのないデフレスパイラルが、東京の経済を直撃しています。
そこで、まず、知事が、現在のきびしい社会経済情勢下において、ものづくりをはじめこれからの都内の産業をどのように育成していこうとしているのか、所見を伺います。
私は、当選後、初の本会議質問以来、質問のたびにものづくり支援をテーマにとりあげ、石原知事とも議論をおこなってきました。石原知事からは、機械・金属、印刷・製本、アパレルなどを三大地場産業として位置づけること、工場制限法の緩和をはたらきかけることなどの表明もおこなわれるなど、変化も感じられるときもありました。
こうしたもとで、昨年十月から、中小企業対策審議会において、ものづくり支援の検討がおこなわれていますが、私も可能な限り、小委員会にも出席させていただいています。
一月二十五日の小委員会では、「東京のものづくりがめざす方向」「ものづくりのネック」について、議論がかわされており、私も飛び入りで討論に参加させていただきました。
小委員会のみなさんは、本当に熱心で、東京のものづくりの衰退を憂い、何とかしたい、という思いがひしひしとつたわってきす。あらためて、この熱意を、生かさなければならないと思いをつよくしました。
そこで、知事も、諮問をして、答申を受けとるだけでなく、ぜひ機会をつくって、こうした議論の場に参加されることを要望しておきます。
そこで、中小企業対策審議会に参加し、中小企業団体と懇談をおこない、地元城南地区や葛飾などの経営者をたずねたなかで、お聞きしたこと、また、日本共産党として検討したことなど、提案したいと思います。
現在、中小企業対策審議会では、この六月をめどに答申をまとめることとして、議論をおこなっていますが、現下のきびしい状況を反映して、議論はどうしても、当面の支援に重きを置かざるを得ません。しかし、委員の方のなかには、十年後を展望した戦略的検討の必要を訴えられている方もいます。
実際に、ものづくりを再興させようとするならば、あらたな技術や分野の開拓、人材の育成、経営環境など一定の期間が必要であり、時間をかけた議論と準備、そして、公的支援がどうしても必要となります。
いま、国際競争力が激化するもとで、どう人材を育成するかは、喫緊の課題です。
そこで、十年後、二十年後の東京のものづくりを戦略的にいちづけ、そのための技術開発、人材育成や基盤整備などを、いまから計画的にすすめることが、どうしても必要と考えますが、どうか。
そのために、中小企業対策審議会でも、中期的課題については、もっと時間をかけて充分検討することを提案するものですが、合わせて、知事の答弁を求めます。
人材育成では、北海道の函館市などが一部組合をつくって、「公立はこだて未来大学」を設立して、とりくみをはじめています。この大学では、従来の科学技術だけでは、これからの時代に追いついていけないとして、情報学科や複雑系学科などを組み合わせた授業をおこなっています。こうしたあたらしいとりくみに、北海道だけでなく、全国から学生があつまってきているとのことです。
そこで、東京都として、将来の戦略的課題として、技術、情報、経営など総合的な、ものづくりの継承者や人材を育てるための教育機関を設立することを、提案するものです。知事の所見を伺います。
将来、開拓すべき分野を見定めることも重要です。
東京都は、成長産業のひとつとしてバイオ産業をあげていますが、ある中小企業の経営者は、バイオ産業は重要だが、大企業がとってしまうだろうといっていました。また、すでに大阪など全国の自治体の産業政策に位置づけられ、競合もはじまっています。
また、この方は、むしろ中小企業にとっては、超微細技術であるナノテクノロジーの方が、むいているといっていました。ナノとは、単位のことで、十億分の一の世界、原子一個から数百個の単位でものをつくるものです。
この技術によって、これまでになかった性質の物質をつくる可能性がきりひらかれ、新材料を開発したり、新材料をつかった超高密度の半導体集積回路や副作用がなく、治療効果の高い医薬品を実現させることなど期待されています。
ナノテクは、ライフサイエンスや環境、IT、エネルギーなどはばひろい分野の基幹技術となるために、この技術をにぎることが、将来のものづくりの世界で決定的な影響力を持つことになります。現在、この分野は、日本がアメリカを一歩リードしているといわれています。
しかし、これだけ重要な分野でありながら、残念ながら日本では国家戦略に位置づけられていません。
東京のものづくりの戦略的課題として、ナノテク産業の育成を提案するものですが、答弁を求めます。
中長期の課題とあわせて、当面の製造業の危機をのりきるための施策も重要です。
その一つは、東京都の独自の仕組みとして実施されている工業集積地域活性化支援事業を、どう発展させるのかです。この事業はすでに大田区や品川、墨田、足立などは事業が終了していますが、これらの地域では、区が予算の上乗せするなど積極的にこの事業を活用し、実際に新製品が開発され、業者を大きく励ましまています。
しかも、大田区や葛飾区をはじめ、指定をうけた区市からは、この事業の延長もしくは第二期事業としての実施がつよく要望されています。これだけ、要望がある事業をなぜ、やめる必要があるのか、どうにも説明がつきません。
知事、このように待望されている事業をなぜ、拒みつづけるのか。所見を伺いたい。
中小企業の現場が必要としている支援に応えるスピードも必要です。
その一つは、販路拡大のためのホームページの外国語版の作成援助です。
実際に、ある業者のホームページを見た海外の業者から発注があり、おどろいたといっていました。同時に、小さな業者では、役だつとわかっていても、外国語のホームページをつくる余裕はありません。
海外販路のため、中小企業が苦手とするホームページの外国語対応の支援を、都としておこなってはどうか。
また、私の地元に城南中小企業振興センターがあり、業者に対して、研究や開発試験、研修を実施してます。しかし、専門の職員が限られているため、希望するときに、対応できない場合があります。
研究、研修などをいつでも受けられるようにするための、中小企業振興センターの体制を強化することなどは、すぐにも実行できると思うがどうか。あわせて、答弁を求めます。
大田・品川は国の工業集積地域活性化事業の指定をうけており、大田区は、最近、この制度を活用し、国の補助をうけてて、住宅併存の工場ビルを建設しました。その際、工場の建設費の半分が区負担となるため、東京都の支援を切望しています。都として積極的にこの声にこたえるよう要望しておきます。
東京都中小企業団体中央会をたずねた際に、同会が窓口になっている「企業組合制度」をぜひ、東京都でも位置づけて欲しいとの要望を受けました。この制度は、会社を設立する際に、法人登記料なしで、仲間で仕事をはじめたり、失業者がグループで企業を起こしたりすることができるものです。
この制度の普及と、「企業組合制度」の支援は雇用対策としても役立つものであり、対策を求めるものです。
不況をのりきるうえで、欠かせないのが、資金調達です。
おおくの業者がなんらかのかたちで、融資をうけており、しかも、複数化していることも特徴です。このため、返済金利がかさむなど、経営をますます苦しくするものとなっています。そこであらたな融資のしくみが必要となっているのです。
京都府が、最近、実施した「中小企業経営改善借換制度融資」、京都府や京都市の制度融資からの借入金を、一本化し、借り換えられるようにするもので、返済口数を減らして、毎月の返済金額の軽減をはかるものです。これに対して、都が実施した借換融資は、一本化できるものの、都の制度融資に限られています。
区市や国の特別保証制度などの融資も含めて借り換えできる融資をたちあげることは、大きな支援になると思いますが、見解を伺います。
いま、中小企業をたずねると、どこでももちきりとなるのは、ダイエーなど大企業の破たんに対して、一社で五千二百億円もの金融支援しようとしていることです。結局、これは、公的資金の注入ということで、国民の税金がつぎ込まれることになります。
中小企業の経営者はだれもが、大企業に無駄金をつぎ込む金があるのだったら、「中小企業安定化特別保証制度を延長すべきだ」といっています。当然の声です。
この声に応えるよう国につよく働きかけるよう求めるものですが、答弁を求めます。
最後に、アトピー、アレルギー対策について伺います。
都が設置した「アレルギー性疾患対策検討委員会」は、二〇〇〇年三月の中間まとめで、アレルギー専門相談員の育成を提言しました。さらに昨年六月の最終報告では、これをさらに発展させて、地域のアレルギー性疾患対策を推進する保健活動のリーダーの役割をになう人材として、アレルギー事業推進員の育成を提言しています。
保健所や病院、診療所、さらに保育園や幼稚園、学校などが連携して地域でのアレルギー対策をつよめ、情報の提供や相談体制の強化をはかるうえで、貴重な役割をはたしえるものと関係者の期待がたかまっています。
都がおこなった調査結果でも、三歳児の実に四割以上が、アトピーなど何らかのアレルギー性疾患にかかっていることが明らかになっています。またアレルギー疾患は、たくさんの原因が複雑にからみあって起こり、都市にアレルギー患者が多いことから、都市化にともなう様々な生活環境の変化がアレルギー疾患患者の増加の原因とも指摘されています。対策の強化は都民的課題であり、急務であります。
アトピー、アレルギーの相談や情報提供などにとりくむアレルギー事業推進員の育成について、ただちに具体化することが必要であります。答弁をもとめ、質問をおわります。
〇知事(石原慎太郎君) 丸茂勇夫議員の一般質問にお答えいたします。
都内産業の育成、なかんずく中小企業の育成についてでありますが、東京の産業が活力を取り戻し、日本の経済を牽引していくためには、物づくり産業だけではなくて、新たな成長分野においても、それを扱う企業を育成することは急務であると思っております。
そのために、既に墨田区に=cd=b854ベンチャー・SUMIDA=cd=ba25という一種のインキュベーターを施設として設けて、無償で提供しておりますが、あと二カ所そういった施設をつくって、意欲のあるベンチャー技術を開発している方々に機会を与えたいと思っています。
中には、もう既に賞も取ったり、製品化にこぎつけたものもございますが、そういった試みも複合的に進めることで、東京発の新しい企業の育成、それからまた、今日まで、日本を見えないところで支えてきた中小企業の地名的な意味合いのある技術というものも温存しながら、そういう企業を育てていきたいとも思っております。
さらに、都としては、観光産業、IT産業、アニメあるいはバイオなども戦略的な産業として位置づけて、その振興を図ることにしておりますし、ご指摘のナノテクも、私も幾つかそういうものを扱うすぐれた会社を知っておりますが、こういう方々が、技術を持ち、すばらしい製品をつくりながら、企業として存続をするための融資で非常に足踏みして、つらい状況にあるということもよく存じております。そのために、CLOを含めて、都独自の融資体制もつくっておりましたが、なお、改良すべきものは改良し、実は地名的な意味合いを持つ中小企業、東京における中小企業というものを守っていきたいと思っております。
今後、これらの産業が国際的な競争力を持ち、さらに強い産業に育つように、都としても多様な振興策を講じていきたいと思っております。
なお、ご指摘の大田区にあります中小企業振興センターは、時間の問題などで使いにくかったものですから、私、視察しまして、その場で、ユーザーの便宜にこたえるような体制を整えましたが、なお、足りない部分があれば、意見を聞いて、これを補充し、充足させていきたいと思っております。
他の質問については、関係局長から答弁します。
〇産業労働局長(浪越勝海君) 中小企業に関する九点のご質問にお答え申し上げます。
まず、物づくりに対する中長期的課題についてでございますが、東京の物づくりは危機的な状況にあり、その対策を早急に講ずるため、昨年十月に、中小企業振興対策審議会に都の物づくり振興のあり方について諮問をしたところでございます。
現在、同審議会において、幅広い観点から審議をいただいており、計画的に進めるべき人材の育成や基盤整備など、中長期的な課題についても検討されております。六月に予定されています答申を受けまして、そうした課題の解決に取り組んでまいりたいと思います。
次に、物づくりの継承者を育てる教育機関の設立についてでありますが、現在、都内には、工業高校、工業高等専門学校、大学など、物づくりに関連する教育機関が数多くあります。また、都立技術専門校や専修・各種学校などにおいても、基礎から高度実践的な知識、技能の習得のため、さまざまな科目を設置するなど、時代に即応した産業振興を担う人材の育成を行っているところでございます。したがって、都としては、ご指摘のような新たな教育機関を設置する考えはございません。
次に、ナノテクノロジー産業の育成についてでありますが、ナノテクノロジーは、物づくりだけではなく、IT産業やバイオ産業など、広範な産業分野にわたる融合的かつ総合的な科学技術として期待をされておりますが、現在、いかに産業に結びつけるかについて検討がなされている段階と認識をしております。
次に、工業集積地域活性化支援事業についてでございますが、本事業については、平成八年度から毎年四地域、合計二十地域を指定し、平成十二年度をもって地域指定を終了したところでございます。
これは、サンセット事業として、指定後、五年間で事業を実施するものでございまして、事業がすべて終了する平成十六年度にその成果を総括した上で、地域の工業振興施策のあり方について検討をする予定であります。したがって、新たな地域の指定については、現時点では考えておりません。
次に、外国語ホームページへの支援についてでございますが、外国語版ホームページの作成などにより、海外販路の開拓を図ることは重要なことと考えております。
社団法人東京産業貿易協会や財団法人東京都中小企業振興公社において、ホームページを立ち上げ、外国語による企業情報や商品情報をインターネットによって世界に発信をしております。また、中小企業の海外への事業展開についても、セミナーや専門家による相談などを実施しております。
次に、中小企業振興センターの体制強化についてでありますが、本センターは、機器の開放や試験、経営・技術の相談、各種セミナーの開催などを通じて、地域の中小企業の経営安定と技術力の向上に努めているところでございます。
平成十一年十一月からは、開発支援室と開放機器の夜間利用を実施しております。また、平成十四年度からは、管理運営を財団法人東京都中小企業振興公社にゆだね、機動的、弾力的な事業運営を確保することとしたところでございます。
次に、企業組合制度への支援についてでありますが、企業組合は、組合員になろうとする個人が、お互いに資本と労働を持ち寄り、共同事業を行う組織で、中小企業等協同組合法に定められた組合制度の一つでございます。
このメリットとしては、少額の資本で簡易な法人組織での創業が可能であり、税制上の優遇措置もございます。
東京都中小企業団体中央会では、企業組合の設立や運営について相談に応じるなどの支援をしており、都としても、中央会とともに、企業組合制度の普及に努めております。
次に、借りかえ融資についてでありますが、都では、昨年十二月の緊急金融支援対策において、複数借入金の一本化を推進することとしたところです。これにより、既存の信用保証つき融資の借り入れが複数ある場合、制度融資の新たな借り入れに際して、これらの借入金を一本化することで、毎月の返済額の負担を軽減して、中小企業の経営安定を図っているところです。
なお、国の安定化特別保証については、この借りかえの対象にする考え方はございません。
最後に、国の安定化特別保証制度についてでありますが、国は、安定化特別保証制度の復活については、追加的な財政負担が発生するため、デフレ対策には入れないと聞いております。
なお、都は、中小企業を取り巻く厳しい金融環境に即応して、昨年の秋以降、制度融資の金利の引き下げ、景気対策緊急融資の創設など、数次にわたる緊急経済対策を実施しているところでございます。
〇衛生局長(今村皓一君) アレルギー事業推進員の育成についてでございますが、アレルギー性疾患対策の推進に当たっては、都民に身近な地域保健の現場で、事業推進の中心的役割を担う人材の育成が重要であります。
そのため、都は、平成十四年度に、都及び区市町村の保健婦等を対象に、アレルギー事業推進員育成のための実務研修を計画しております。